この記事はここがポイント
- 純金積立10年間のシミュレーションで、評価約367万円、運用益約247万円、終盤4ヶ月で約100万円の利益減少。
- ドルコスト平均法は取得単価を平準化するが、リスクそのものを低減する効果はないこと。
- 金は「安全資産」評価されるも、2026年7月時点で価格変動率年率25%超と個別株に近い高リスク資産。
金(ゴールド)が値下がりしています。NY金先物は2026年3月初旬に5200~5300ドルで取引されていましたが、6月には4000ドル近傍まで下落し、7月29日現在も同水準で取引されています。
もっとも、金は長らく上昇相場が続いていました。もし、純金積立をしていたら資産はどれくらい増えたのか、過去10年間の推移をもとにシミュレーションしてみましょう。
筆者は「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA=Independent Financial Advisorの略)」として特定の金融機関に属さず、中立的な立場でアドバイスを行っています。
日頃、資産形成の相談を受けていますが、その際、顧客が「金」に関心を示されることがよくあります。株式などと異なり、「金」の高騰は一般的なニュースでもカジュアルに報道されており、身近に感じているのかもしれません。
一方で、金の値動きは大きめであり、「安全資産」という宣伝には注意が必要です。高リスクのコモディティに「ドルコスト平均法」がどこまで通用するか、その効果を検証してみましょう。
【純金積立シミュレーション】毎月1万円×10年間(2016年〜2026年)
金価格の推移
シミュレーションは次の条件で行います。金に毎月1万円を積み立てるイメージです。
シミュレーション条件
- 積立期間: 10年間(2016年8月~2026年7月)
- 積立方法: 毎月最初の営業日の小売価格で1万円分を購入(ドルコスト平均法)
- 積立回数: 120回
- 買付手数料: 1.65%(税込)を差し引いた9835円分を毎月購入に充当
- 評価価格:小売価格×0.985
※評価価格は2026年7月29日の実績より小売価格から-1.5%のスプレッドを想定
資産は370万円弱へ成長 利益は終盤に100万円減
純金積立の運用シミュレーション(2016年8月~2026年7月)
シミュレーションの結果は次のとおりです。評価額は約367万円に達し、投資元本120万円を約247万円増やすことができました。
- 購入できた金の総量: 約160.75g(平均購入単価:約7645円/g)
- 評価総額: 160.75g × 2万2855円/g = 約367万3840円
- 運用益(評価益): 367万3840円 - 120万円 = 約247万3840円
なお、運用益は終盤に大きく減少しています。2026年3月時点では、352万を超える利益を得ていました。最後の4ヵ月で利益が約100万円減少した計算です。
ドルコスト平均法は「リスクを下げる」と説明されることがありますが、リスク(=値動きの大きさ)そのものを小さくする効果はないことに注意しましょう。
ドルコスト平均法の効果:「高値掴み」の防止 取得単価は平均より21%安い
ドルコスト平均法の効果は「取得単価の平準化」が正確です。積立額を固定することで、価格が高い時には少なく、安い時には多く買うという仕組みが、高値掴みを防ぐ効果につながります。
先のシミュレーションでも、ドルコスト平均法の効果は確認できます。シミュレーション期間における金小売価格の平均は約9443円ですが、取得単価は約7465円と、平均より約21%安く買えています。取得単価が平準化され、結果的に利益の押し上げに貢献しました。
「純金積立」のデメリットと注意点
純金積立にはデメリットや注意点もあります。以下の点を押さえておきましょう。
- 手数料と保管料: ネット証券などを選べば抑えられますが、年会費や買付手数料がかかる場合があります。
- 売買の価格差:純金積立は、業者が取引の相手方となる相対取引であり、通常、小売価格と買取価格には差(スプレッド)があります。購入後は、スプレッド以上に値上がりしないと利益にならないことに注意が必要です。
- 利息・配当はない: あくまで「売却時の差益」を狙う投資です。
- NISAは対象外: 純金積立そのものはNISAを使えません(金に投資する投資信託は対象の場合あり)。
- 5年以上の長期保有が「節税」のカギ: 金の売却益には譲渡所得税がかかりますが、5年を超えて保有すると課税対象になる利益が「半分」になるという大きな優遇があります。
「純金積立」は、短期間で利益を出すギャンブルではなく、5年、10年というスパンで「守りの資産」を育てる手法なのです。
純金積立は、利息を生まないうえに各種手数料やスプレッドといったコスト面でのデメリットがある点には注意が必要です。
しかし、有事やインフレに強い「実物資産」を少額からコツコツと買い持ちできる点は、他の金融商品にはない独自のメリットとなります。
株式などの伝統的な資産とは異なる値動きをするため、資産全体の1割程度を目安に長期目線で組み込むことで、ポートフォリオ全体のリスク分散に大きく貢献するでしょう。
まとめにかえて
金は、株式や債券といった有価証券とは異なる資産クラスです。また、各国の中央銀行が外貨準備の一部に充てるなど、コモディティでもユニークな存在といえます。筆者も、米国によるロシア資産の凍結を機に資金を振り向け、現在もポートフォリオの一部に組み入れています。
一方、注意したいのはリスクです。金の値動きは大きく、特にこの1年は荒い相場でした。小売価格の1年間の標準偏差(年率)は、おおむね10%~15%で推移していたところ、2026年7月時点では25%を超えています。
金のリスクは、平時でも株価指数に相当し、足元では個別株に近い状況です。「安全資産」と評価されることが多い金ですが、ポートフォリオに組み込む場合、株式に相当する高リスク資産であるという認識を持ちましょう。
なお、「ドルコスト平均法」は、リスクそのものを減らす効果は期待できませんが、取得単価は平準化されます。タイミング投資と比べ損益を抑える効果に期待できるため、高リスク資産へ投資する際の選択肢となるでしょう。
ドルコスト平均法は、積立期間が長くなるほど効果的です。純金積立は、長期の積立を前提に取り組むようおすすめします。
参考資料
証券会社を経てIFAとして10年以上活動。個人へ投資提案を行う傍ら、金融ライターとしてNISA等の資産運用から社会保障まで幅広く執筆。現在は大型株を中心に年100本ペースで連載。AFP等保有。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。

本記事のシミュレーションが示す通り、金投資におけるドルコスト平均法は取得単価の平準化には有効ですが、元本割れリスクを完全に排除するものではありません。
特に足元の金相場はボラティリティ(価格変動率)が個別株並みに高まっており、「安全資産」というイメージだけで過大な資金を投じるのは危険です。
投資を検討する際は、ご自身の資産状況やリスク許容度と照らし合わせ、無理のない範囲で長期的な視点を持って継続することが重要です。