この記事はここがポイント
- NISAは65歳前後からでも遅くなく、非課税保有期間に期限がないため無理なく始められる点
- 株式や投資信託だけでなくドル建て債券など、リスクの異なる資産を組み合わせた分散投資の有効性
- まとまった資金は一括でなく時間を分けて積み立て、平均取得単価を平準化する投資手法
【65歳からのNISA】「もう遅い?」という不安
具体的な相談内容
退職金や不動産売却でまとまった資金を得たとき、多くの方がまず直面するのが「これからどう増やすか」という悩みです。特に投資経験がない場合、何から手をつければよいのか分からず、資金だけが手元に置かれてしまうケースも少なくありません。
退職金と不動産の売却によってまとまった資金を得て、再就職を控えていた60代の方からのご相談です。
以前から投資には関心があったものの、NISAで投資信託や株式に投資した経験はまったくなく、「この年齢から始めても遅いのではないか」という不安が先に立っていたといいます。投資信託や株式の仕組みそのものもよく分からず、「現金のまま普通預金に置いておくのはもったいない気がするけれど、何をすればいいのか分からない」という状態が続いていました。
株式に投資すれば資産が増えるという漠然としたイメージはあっても、実際にどの程度のリスクがあるのか、いつ利益が確定するのかも判然とせず、まとまった資金を一度に投じるべきか、少しずつ様子を見ながら始めるべきかも分からないまま、資金だけが手元に置かれていたそうです。
証券口座やアプリの操作にも不慣れで、そもそも何から始めればよいのかという入り口の部分でも足踏みしている状態でした。
IFAとして幅広い年代のお客様の資産運用や保障のご相談を受けていますが、退職金や不動産の売却でまとまった資金を得たシニアの方から「この年齢から始めても遅いのでは」というお声は本当によく聞きます。
年齢そのものよりも、NISAの非課税期間には期限がないことや、投資信託の利益は売却するまで確定しないという仕組みを理解しているかどうかのほうが、実は重要な分かれ目になります。
また、株式や投資信託だけに偏らず、値動きの異なる資産を組み合わせてリスクを抑えるという視点も欠かせません。
証券口座やアプリの操作に不慣れな場合も、担当者と一緒に一つずつ手続きを進めれば、投資経験がゼロの状態からでも十分に始められます。
まずは焦らず、ご自身が安心して持ち続けられる形を一緒に整理していくことをお伝えしました。
【定年後の資産形成】NISAを無理なく始めるための3つのポイント
FAからの具体的なソリューション
このご相談に対して提案したのは、次の3つの視点です。
まず、NISAで非課税のまま保有できる期間には期限がないため、早く枠を埋めようと焦る必要はないという点です。65歳前後から始める場合も、積立期間を長く設定し、株式と債券を組み合わせた分散投資でリスクを抑えることを優先しました。あわせて、投資信託の利益は売却しない限り確定しないという仕組みを説明し、値動きに一喜一憂せず腰を据えて向き合えるよう、証券口座やアプリの操作も一つずつサポートしながら進める方針としました。
次に、株式や投資信託だけに偏らないことです。S&P500やオルカンのようなインデックスファンドも必ずしもローリスクローリターンの商品ではないため、値動きの大きい資産と、元本や利息が見通しやすいドル建て債券などを組み合わせ、退職後で収入が限られる時期でも安心して持ち続けられるリスクの範囲を意識しました。
さらに、まとまった資金の投じ方も一括にこだわらず、時間を分けて積み立てる方法を取り入れました。毎日少額ずつ積み立てることで平均取得単価を平準化でき、始めるタイミングそのものへの不安を和らげることができます。資金の一部はNISAでの積立に、残りは債券や元本を意識した商品に振り分けるなど、資金全体の配分も含めて整理していきました。こうして、投資信託・株式・債券のバランスと、積立と一括のバランスの両方を無理のない範囲で組み立てることで、ご本人も納得したうえで一歩を踏み出すことができました。
「もう遅い」より「今からできること」に目を向けたNISA活用を
退職金や不動産売却などでまとまった資金を得たシニアの方にとって、「今から投資を始めても遅いのではないか」という不安は珍しくありません。しかし、NISAの非課税保有期間には期限がなく、年齢だけを理由に運用をあきらめる必要はないのです。
大切なのは、投資信託の利益が確定する仕組みを理解したうえで、株式や投資信託だけでなく債券などリスクの異なる資産を組み合わせ、まとまった資金を一括ではなく時間を分けて投じることです。投資経験がなくても、信頼できる専門家のサポートを受けながら一つずつ整理していけば、退職後からでも無理のない資産形成を始めることができます。「もう遅い」と決めつける前に、まずはご自身の状況を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。

元メガバンク行員の視点:年齢より「仕組みの理解」が資産形成の分かれ目に
窓口で数多くのお客様と接してきた経験から言えるのは、退職金や不動産売却などまとまった資金を目の前にすると、「早く増やさなければ」という焦りから、十分に理解しないまま一括で高リスクな商品に投資してしまうケースが後を絶たないということです。
特にシニア世代では、一時的な値下がり局面で不安から売却してしまい、かえって損失を確定させてしまう相談も少なくありません。
今回のケースのように、非課税期間に期限がないことを踏まえて時間をかけて向き合う姿勢や、ご自身の資産状況をご家族とも共有しておくことが、こうした失敗を防ぐうえでも大切なポイントになります。