この記事はここがポイント
- 厚生年金の平均は月15万289円、国民年金は月5万9310円。年金だけでは生活費が不足するケースも多い
- プラチナNISAは毎月分配型投信を非課税で受け取れる仕組みとして検討されたが、現時点で制度化は見送り中
- 毎月分配型は「増やす」より「使う」フェーズの人向け。資産形成を目的とするならインデックスファンドの方が効率的
銀行で資産運用の相談を受けていた頃、毎月分配型の投資信託を保有しているシニアのお客様から「毎月これが楽しみ」「今日は分配金でちょっといいランチに行ってくる」などのお声をよく聞きました。
年金に加えて毎月一定のお金が入ってくる安心感は、数字以上のものがあるのだと感じていました。
「プラチナNISA」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
65歳以上のシニアを対象に、毎月分配型の投資信託を非課税で運用できる仕組みとして金融庁が検討を進めていた制度です。
現時点では具体的な法案化には至っておらず、開始時期は未定の状態が続いています。
では、なぜこの制度が注目されたのか。
その背景にある「公的年金の現実」と、毎月分配型投資信託の特徴、向いている人・向いていない人をあわせて整理します。
年金の現実:平均月額と受給額の分布
まず、公的年金の受給実態を確認しておきましょう。
2026年度の年金額の例
2026年度の年金額は前年度から引き上げられましたが、「夫婦2人で月23万円台」という数字を見て、「思ったより少ない」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この23万円は「平均的な収入で40年間勤めた夫+妻の基礎年金満額」という、比較的恵まれたケースの試算です。実際には、もっと少ない方のほうが多いのが現実です。
2026年度の年金額例は以下のとおりです(前年度比)。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):月額7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):月額23万7279円(+4495円)
実際の受給分布を見ると、厚生年金の全体平均は月15万289円(男性16万9967円・女性11万1413円)、国民年金の全体平均は月5万9310円です。
厚生年金 年金月額階級別受給権者数
国民年金のボリュームゾーンは「6万円以上〜7万円未満」で、多くの方が満額に近い水準を受け取っていますが、それでも月6万円台というのが実態です。
国民年金 年金月額階級別受給権者数
「プラチナNISA」とは何だったのか
こうした年金の現実を背景に、注目を集めたのがプラチナNISAです。
現行のNISAは「資産を増やす」ことを主目的とした制度設計のため、毎月分配型の投資信託は対象外とされてきました。
プラチナNISAはこの制限を緩和し、65歳以上のシニアが毎月分配型投信を非課税で受け取れるようにする構想として検討が進められていました。
しかし、現時点では制度化は見送られており、開始時期は未定です。
「NISAは資産形成のための制度」という本来の目的と、毎月現金を受け取る仕組みとの整合性が課題として指摘されました。
毎月分配型投資信託:向いている人・向いていない人
毎月分配型投資信託は、運用状況によって中身が大きく異なります。
運用が好調なとき
運用で得た利益の範囲内から分配金が支払われます。
この場合、元本を減らさずに定期的な収入を得られる状態です。
もしプラチナNISAが実現すれば、この利益分にかかる20.315%の税金も非課税になります。
運用が振るわないとき
利益が足りない場合は、元本を取り崩して分配金を支払います。
口座への入金は「分配金」という名目であっても、実態は自分のお金を少しずつ返してもらっているだけです。
気づかないうちに資産が目減りするリスクがあります。
どんな人に向いているか
- 資産を「増やす」フェーズは終えて、「使う」フェーズに入った方
- 毎月口座にお金が入ってくる安心感・生活リズムを重視する方
- 複利効果より「定期収入の実感」を大切にしたい方
どんな人には向いていないか
- まだ資産を増やしたい・複利効果を最大化したい方
- コスト(信託報酬)を抑えて効率よく運用したいという方(毎月分配型は一般的にコストが高め)
- 元本をできるだけ守ることを優先したい方
低コストのインデックスファンドを毎月一定額で自動売却するサービスもある
「毎月お金が入ってくる安心感がほしい」という気持ちは、とても自然なことだと思います。
年金に加えて定期的な収入があれば、老後の生活設計は確実に楽になります。
プラチナNISAの動向は今後も注目していきたいところですが、制度がいつ始まるかはまだわかりません。
一方で、現行のNISA(成長投資枠)を活用しながら、ネット証券などが提供する「投資信託定期売却サービス」を利用する方法もあります。
低コストのインデックスファンドを毎月一定額で自動売却し、現金を受け取る仕組みで、毎月分配型に近い使い方を自分で設計できます。
ライフスタイルはさまざま。資産運用に対する考え方も人それぞれです。
まずは現在のNISA口座や資産状況を整理し、どのような形にもっていきたいかを明確にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
