この記事はここがポイント
- NISAは運用益が非課税で少額から始められ、長期運用で複利効果を期待できる老後資金形成の手段。
- 新NISAで毎月5万円を15年積立の場合、元本900万円が利回り5%で1324万円になる試算。
- 二人以上世帯の貯蓄割合は手取り収入の16-18%程度で、年代問わず安定した傾向。
二人以上世帯の金融資産は、年代が上がるにつれて増える傾向にありますが、平均値と中央値を比べると、世帯ごとの資産状況には大きな差があることも見えてきます。
筆者は証券会社での勤務経験やFPとしての視点から、老後資金づくりでは「いくら貯めるか」だけでなく、「いつから・どのような方法で準備するか」が重要だと感じています。
本記事では、J-FLECの調査をもとに二人以上世帯の金融資産保有額や貯蓄割合を確認し、NISAのメリットと毎月5万円を15年間積み立てた場合のシミュレーション結果を見ていきます。
【二人以上世帯の金融資産保有額】平均値と中央値をチェック
まずは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から、二人以上世帯の金融資産保有額を見ていきましょう。
※この調査における金融資産とは、預貯金に加えて株式や投資信託、生命保険などを指します。ただし、日常的に決済で利用する普通預金口座の残高は対象外です。
※金融資産を保有していない世帯を含みます。
二人以上世帯の金融資産保有額
【平均値】
- 20歳代:525万円
- 30歳代:1096万円
- 40歳代:1486万円
- 50歳代:1908万円
- 60歳代:2683万円
- 70歳代:2416万円
【中央値】
- 20歳代:125万円
- 30歳代:311万円
- 40歳代:500万円
- 50歳代:700万円
- 60歳代:1400万円
- 70歳代:1178万円
20歳代から60歳代にかけて、金融資産の平均値は525万円から2683万円、中央値は125万円から1400万円へと順調に増加しています。これは現役期に資産を積み上げ、子どもの独立や退職金などを経て、60歳代で資産額が最も厚くなる傾向を示しています。
一方で70歳代になると、老後の生活費や医療・介護費に備えて資産を取り崩す世帯が増えるため、平均値・中央値ともに低下します。資産を「形成する時期」から「活用する時期」へとシフトしていく様子が、これらの数字からも読み取れます。
証券会社でお客様の資産づくりを見てきた経験からお伝えしたいのは、「まずは安心できるだけの預貯金を確保し、その上で無理なく投資を取り入れる」というバランスの大切さです。いきなり大きな金額を投資に回す必要はないので、家計のベースが整ったら、少しずつNISAを活用してお金を育てるステップへ進んでみてくださいね。
手取り収入からどのくらい貯蓄しているのか
金融資産を保有している世帯に限った数字ではありますが、年代によってお金の置き場所に違いが見られます。
預貯金を厚めに持つのか、それとも投資にも振り向けるのか。その傾向を確認すると、各世代の家計管理の特徴が見えてきます。
【二人以上世帯】手取り収入からの貯蓄割合の平均は?
J-FLECの調査によると、二人以上世帯が年間の手取り収入から預貯金に回している割合の平均は以下のとおりです。
- 20歳代:17%
- 30歳代:18%
- 40歳代:18%
- 50歳代:17%
- 60歳代:17%
- 70歳代:16%
一方、債券・投資信託・株式などに振り向けている割合は以下のとおりです。
- 20歳代:16%
- 30歳代:16%
- 40歳代:15%
- 50歳代:13%
- 60歳代:10%
- 70歳代:14%
金融資産へ資金を振り分けた二人以上世帯の傾向をみると、20歳代から70歳代まで預貯金に回す割合は大きく変わらず、一定のペースで貯蓄を続けています。家計のバランスを見ながら安定的に資産を積み上げる一方、投資商品への振り分け割合は60歳代まで低下するものの、70歳代で14%に持ち直しています。
このことから、年齢を重ねても一律に運用をやめるわけではなく、状況に合わせて投資を続ける世帯も一定数存在することがわかります。二人以上世帯は生活費の分担がしやすいため、単身世帯に比べて資産の置き方に多様な選択肢を持てるのが特徴です。
元証券会社員FPが解説|NISAを活用した積立投資が老後資金づくりに向く理由
老後資金を準備する方法は、預貯金だけではありません。
将来に向けて時間をかけて資産を育てたい場合、NISAを活用した積立投資も選択肢のひとつです。
毎月一定額を積み立てる方法であれば、まとまった資金がなくても始めやすく、長期で続けるほど効果を実感しやすくなります。
ここでは、NISAで積立投資をする主なメリットを確認していきましょう。
運用益が非課税になる
NISAの大きな特徴は、投資で得た利益が非課税になる点です。
通常、投資信託の売却益や分配金には税金がかかります。しかし、NISA口座で運用した場合、一定の範囲内で利益に税金がかかりません。
長く運用するほど、税金がかからないメリットは大きくなりやすいです。
利益をそのまま再投資に回しやすくなるため、効率的に資産形成を進めたい人にとって、NISAは使いやすい制度といえるでしょう。
少額から始めやすい
積立投資は、毎月決まった金額をコツコツ投資する方法です。最初から大きな金額を用意する必要はなく、家計に無理のない範囲で始められます。
例えば、毎月5000円や1万円など、続けやすい金額からスタートし、収入や支出の状況に合わせて積立額を見直すことも可能です。
老後資金づくりでは、一度に大きな金額を投資するより、長く続けることが重要になります。少額でも継続しやすい点は、NISAを使った積立投資のメリットです。
購入タイミングに悩みにくい
投資を始めるときに迷いやすいのが、「いつ買うべきか」というタイミングです。
積立投資では、毎月一定額を自動的に購入するため、相場の上がり下がりを細かく判断する必要がありません。
価格が高いときは少ない口数を、価格が低いときは多い口数を購入する仕組みになります。
結果として、購入単価をならしやすくなる点が特徴です。
相場を読むのが難しいと感じる人でも、積立設定をしておけば、感情に左右されにくく投資を続けやすくなります。
長期運用で複利効果を期待できる
積立投資は、短期間で大きな利益を狙う方法ではありません。時間をかけて資産を育てていく考え方が基本です。
運用で得た利益を再び運用に回すと、利益が次の利益を生む「複利効果」が期待できます。この効果は、運用期間が長くなるほど働きやすくなります。
そのため、老後資金づくりでは、できるだけ早い段階から積立を始めることが大切です。
20年、30年と時間を味方につけられれば、毎月の積立額が大きくなくても、将来の資産形成につながりやすくなります。
長期・分散投資に向いた商品を選びやすい
NISAのつみたて投資枠では、長期の積立投資に適した投資信託などが対象となっています。
対象商品は、手数料や運用方法など一定の基準をもとに選ばれており、長期で資産形成をしたい人が商品を選びやすい仕組みです。
投資初心者にとって、数多くの商品から自分で選ぶのは簡単ではありません。
その点、つみたて投資枠を活用すれば、長期・積立・分散投資を前提とした商品から検討できます。
もちろん、NISAを使っても元本保証はありません。相場の下落により、評価額が元本を下回る可能性もあります。
ただし、老後まで時間がある人にとっては、無理のない金額で積立を続け、長期的に資産形成を進める有力な方法となるでしょう。
50歳からでも遅くない?新NISA「毎月5万円」積立投資シミュレーション
ここでは、50歳から65歳までの15年間、毎月5万円を積み立てた場合の資産額を、想定利回り別に確認します。
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません。
【運用利回り1~5%】積立投資シミュレーション
【新しいNISA】想定利回り5%の場合「毎月5万円×15年間の積立投資シミュレーション結果」
- 利回り1%の場合:970万円
- 利回り2%の場合:1047万円
- 利回り3%の場合:1131万円
- 利回り4%の場合:1223万円
- 利回り5%の場合:1324万円
※うち投資元本900万円
毎月5万円を15年間積み立てると、元本は900万円です。
利回り1%では970万円、利回り5%では1324万円となり、運用成果には大きな差が出ています。
積立額が同じでも、期間が長くなるほど、利回りの差が資産額に表れやすくなります。
ただし、利回りが高い商品ほど、価格変動のリスクも大きくなる点には注意が必要です。想定どおりに資産が増えるとは限らず、運用状況によっては元本を下回る可能性もあります。
そのため、積立投資を始める際は、生活費や緊急時の資金を確保したうえで、無理のない金額から検討することが大切です。
平均貯蓄額は参考にしつつ、自分に合う準備を考えよう
今回は、二人以上世帯の金融資産保有額や年代別の貯蓄割合から、各家庭の資産状況のリアルな実態について解説しました。あわせて、預貯金だけでなくNISAを活用した積立投資のメリットや、毎月5万円でのシミュレーション結果も確認しました。
他のご家庭の貯蓄額を見ると焦ってしまうこともあるかもしれませんが、大切なのは「ご自身のペース」で将来に向けた準備を進めることです。まずは現状の家計を振り返り、今日からできる少額の積み立てから、明るい老後に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
【監修者コメント】
老後資金の準備において、必要なときにすぐ引き出せる「預貯金」と、長期的な資産形成を担う「NISA」を組み合わせることは、非常に理にかなったアプローチです。シミュレーション結果からもわかるように、50代からでも「時間」と「複利」を味方につけることは十分に可能なので、焦らずコツコツと継続していきましょう。
参考資料
証券会社出身。約8年間にわたり株式や投資信託、生命保険の販売に従事。現在はフリーライター兼個人投資家として活動中。FP2級や一種外務員の知識と自身の投資実務を活かし、マーケット動向を注視した金融記事を精力的に執筆している。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
