【退職金とiDeCo】2026年の「10年ルール」で税負担増?運用のプロが解説する出口戦略と対策
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【退職金とiDeCo】2026年の「10年ルール」で税負担増?運用のプロが解説する出口戦略と対策

iDeCoの年金は「在職老齢年金」の対象外 働いてもカットされない

執筆者若山 卓也IFA/証券外務員資格(証券外務員一種)/資産形成コンサルタント/ファイナンシャルプランナー
17:30
【退職金とiDeCo】2026年の「10年ルール」で税負担増?運用のプロが解説する出口戦略と対策
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この記事はここがポイント

  • 2026年1月よりiDeCoと退職金「10年ルール」適用、退職所得控除縮小の可能性
  • 控除フル活用には、受取を10年以上空けるか、iDeCoまたは退職金を年金で受給する対策
  • iDeCo年金は在職老齢年金対象外、働きながらでも年金減額されない利点

iDeCoと退職金の受け取りルールは2026年に新しくなりました。従来は非課税だったものが、新しいルールでは課税されるケースが生じるため、「改悪された」と評価されることが少なくありません。

筆者はIFA(金融商品仲介業)として顧客の資産形成を10年以上支援してきました。iDeCoに関する相談も多数受けてきたほか、自身でもiDeCoに加入しています。

iDeCoと退職金に設けられた新しいルールとは、どのような内容なのでしょうか。概要を解説します。

【退職金とiDeCoの受け取り方】まるで違う「一時金」と「年金」課税ルール

退職金とiDeCoの受け取りには、いずれも「一時金(一括)」と「年金(分割)」の2通りがあり、両者を組み合わせる方式もあります。課税の仕組みが異なるため、手取り額にも差が生まれます。

一時金で受け取ると「退職所得控除」と「2分の1課税」のダブル優遇

一時金で受け取る場合は「退職所得」として扱われます。退職所得は、収入(額面)から退職所得控除額を引き、その残額の2分の1(※)にだけ課税される仕組みです。

※短期退職手当等および特定役員退職手当等等に該当する場合、2分の1は行われない

退職所得控除額の計算式は、勤続年数によって次のように決まります。なお、iDeCoの場合は掛け金の払込期間(加入者期間)を勤続年数に読み替えて判定します。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円※)
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※計算結果が80万円に満たない場合は一律80万円

退職所得控除額の計算式

退職所得控除額の計算式
退職所得控除額の計算式

勤続30年なら退職所得控除は800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円です。退職金が2000万円なら、課税対象額は(2000万円-1500万円)×1/2=250万円まで圧縮され、税負担は大きく抑えられます。

年金で受け取ると「公的年金等控除」が適用

一方、年金として分割で受け取る場合は「雑所得」として課税されます。ただし、単なる雑所得とは区別され、「公的年金等にかかる雑所得」という扱いです。退職金とiDeCoの年金収入は、いずれも老齢基礎年金(国民年金)や老齢厚生年金などの公的年金と合算され、「公的年金等控除」が差し引かれた残額が課税対象となります。

速算表

速算表
速算表

公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得が1000万円以下なら、公的年金等控除の最低額は65歳未満が60万円、65歳以上が110万円です。60歳~64歳は年60万円まで税金が発生せず、65歳以降は年110万円まで非課税となる仕組みです。

【iDeCoと退職金】2026年1月スタート「10年ルール」で何が変わった?

ここからが本記事の重要なポイントです。2025年度(令和7年度)税制改正により、iDeCoと会社の退職金を別々の年に受け取る場合のルールが見直されました。施行は2026年1月1日からで、受け取るタイミングによっては退職所得控除が縮小してしまう可能性があります。

「5年の空白でOK」が「10年」へ。控除フル活用するための注意点

退職一時金やiDeCo一時金など、退職所得収入を2つ以上受け取る場合、原則として退職所得控除は勤続年数(加入者期間)を合算して判定されます。ただし、退職所得収入の受取時期に一定の空白期間がある場合、それぞれの退職所得控除を独立して計算できる「勤続期間等の重複排除の特例」があります。

iDeCoを先に受け取る場合、従来は5年以上の空白を設ければ、退職所得控除はそれぞれの勤続年数(加入者期間)で計算できました。しかし、2026年以降は「5年以上」が「10年以上」に拡大されています。

つまり、iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に会社の退職一時金を受け取る人は、これまで「5年空ければ両方の控除をフル活用できた」ものが、改正後は「10年空けないと控除が削られる」設計に変わったということです。

具体例:60歳でiDeCo→65歳で退職金のケースで控除がどれだけ減るか

30歳から会社に勤続し、40歳からiDeCoに加入している人が、60歳でiDeCo一時金1000万円(加入者期間20年)、65歳で退職一時金2500万円(勤続年数35年)を受け取るケースで比べてみます。

この場合、先に受け取るiDeCo一時金は、加入者期間20年で退職所得控除が計算されます。論点となるのは、後から受け取る退職一時金です。

旧ルール(〜2025年)なら、双方の受け取りに5年の期間が空くため、両方とも控除をフル活用できました。退職一時金の退職所得控除は勤続35年で1850万円(800万円+70万円×(35年-20年))。退職一時金の額面2500万円との差額は650万円、その2分の1の325万円が課税対象です。

一方、新ルール(2026年〜)では「10年ルール」に抵触するため、iDeCo加入期間と会社勤続期間が重なる20年分の控除(800万円)が退職一時金側から差し引かれます。

退職一時金の退職所得控除は1850万円-800万円=1050万円に縮小。額面2500万円との差額は1450万円、課税対象は725万円になります。

このケースでは、新ルールは旧ルールと比べ課税対象が400万円増加しました。所得税と住民税の税率をそれぞれ20%、10%としたとき、合計120万円ほど税負担が重くなる計算です。

逆順は変更ナシも、ハードルはもっと高い「20年以上」

順番を入れ替えて「会社の退職金を先、iDeCoの一時金を後」で受け取る場合は、従来から「19年ルール」と呼ばれる重複排除の規定が適用されており、受け取りタイミングを20年以上空けると、退職所得控除をそれぞれ満額受けられます。こちらは令和7年度改正でも変更されていません。

ただし、iDeCoは遅くとも75歳には受け取りを開始する必要があります。これを踏まえると、双方の一時金で退職所得控除を満額適用するには、退職一時金は55歳までに受け取らなければならない計算です。iDeCoを先に受け取る場合と比べ、ハードルが高いのが実情です。

【iDeCoと退職金】新ルール対応!税金を減らす受け取り方

新しい「10年ルール」を踏まえた場合、退職金とiDeCoはどのように受け取ればよいのでしょうか。受取時の税金を減らす視点で、2つの方法を押さえましょう。

対策①iDeCoを60歳で受け取り、退職金を70歳で受け取る

iDeCoと退職金をいずれも一時金として受け取るとき、双方で退職所得控除を満額で適用するには、「iDeCoを先に受け取り、10年後以降に退職金を受け取る」か「退職金を先に受け取り、20年後以降にiDeCoを受け取る」ことが条件となります。先述の通り、後者は条件が厳しいと考えられるため、ここでは前者を考えましょう。

iDeCoは最短60歳で受け取れるため、退職金は70歳以降に受け取れば、この条件を満たすことになります。先述した「60歳でiDeCo一時金、65歳で退職一時金」のケースで考えると、退職一時金の受け取りを5年遅らせるイメージです。

ただし、iDeCoを60歳で受け取るには、10年以上の加入者期間が必要です。また、退職金を70歳で受け取れるかは、勤務先の制度次第という事情もあります。

退職金を先に受け取るケースよりハードルは低いとはいえ、この方法を実践できる人は、やはり限定的といえるでしょう。

対策②iDeCoと退職金のいずれかを年金受取

多くの人が実践できる方法が、iDeCoと退職金のいずれかを年金で受け取ることです。所得区分が「退職所得」と「公的年金等にかかる雑所得」に分かれるため、退職所得控除と公的年金等控除をそれぞれ適用できます。

退職金を年金で受け取れるかどうかは、こちらも勤務先の制度にかかっています。厚生労働省によると、退職金の支給形態は一時金が主流で、年金で受け取れる企業は少数派です。

【退職給付制度の形態別企業割合(退職給付制度がある企業)】

  • 退職一時金制度のみ:69.0%
  • 退職年金制度のみ:9.6%
  • 両制度併用:21.4%

出所:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」

退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合

退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合
退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合

勤務先に退職年金制度がなくても、iDeCoを年金で受け取ることが可能です。iDeCoは原則として5年以上20年以下の年金形式でも受け取れます。

この方法なら、退職一時金は勤続年数に応じた退職所得控除が満額適用され、iDeCo年金は他の公的年金等にかかる雑所得と合算して公的年金等控除が適用されます。双方が互いに干渉することなく、独立した所得としてみなされるため、受け取り時の税負担を抑制する効果が期待されます。

もっとも、退職金やiDeCoの金額が一定以下の場合など、双方を同時に一時金として受け取っても税金が発生しないケースも考えられます。

どの方法が有利となるか、受け取りの際は事前にシミュレーションしておきたいところです。

【iDeCoと退職金】iDeCoの年金は「在職老齢年金」の対象外 働いてもカットされない

厚生労働省が2025年12月に公表した「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』」によると、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%にのぼります。また、3社に1社が70歳までの雇用機会を提供するなど、定年を引き上げる機運が高まっています。

主なポイント

主なポイント
主なポイント

定年が後ろ倒しになると、気になるのが「在職老齢年金制度」です。年金を受け取りながら働く高齢者の年金を調整する制度で、賞与を含む賃金と年金の合計が一定水準を超えるとき、年金支給の一部が停止されます。

なお、在職老齢年金制度で停止されるのは、公的年金のうち老齢厚生年金の部分で、老齢基礎年金(国民年金)のほか、iDeCoなどの私的年金は対象外です。働きながらiDeCoを年金形式で受給していても、年金が減らされることはありません。

iDeCoと退職金の受け取りルールが変更されたことにより、今後は年金形式を指定する人が増えそうです。税制や在職老齢年金制度も踏まえ、損しない出口戦略を考えておきましょう。

最後に、IFAとしてiDeCoの相談も受けてきた筆者からのアドバイスをお伝えします。

「とりあえず一時金」で決めず、必ずシミュレーションを

iDeCoは一時金での受け取りを希望する人が多いと思いますが、勤務先に退職金制度がある場合、税負担が重くなる場合があります。特に新しい「10年ルール」が施工された2026年以降、その懸念は高まっています。

後悔しないよう、受け取り方は事前に試算してから判断しましょう。

50代のうちに退職金制度を把握する

事前の試算には、勤務先の退職金制度の把握が不可欠です。定年が見えてきたら、退職金の受け取り方や時期、金額の把握に努めましょう。

iDeCoは「一時金」と「年金」の併用も検討したい

iDeCoは退職所得控除に収まる部分は一時金、超える部分は年金で受け取れば、双方の非課税枠を無駄なく使い切れます。

ただし、退職一時金も受け取る場合は重複期間の考慮が必要です。また、iDeCo一時金を先に受け取る場合、受け取るべきiDeCo一時金の額は、後から支給される退職一時金の退職所得控除額を前もって計算し判断する必要があります。
 

元マネースクール監修者からのコメント

2026年からの「10年ルール」施行により、iDeCoと退職金の受け取り戦略は、これまで以上に個人の状況に合わせた事前のシミュレーションが不可欠な時代になりました。

記事にある通り、50代のうちから勤務先の退職金制度を正確に把握し、「一時金」と「年金」の併用を含めた柔軟な出口戦略を立てておくことが、老後の手取り額を最大化して資産寿命を守る最大の鍵となります。

参考資料

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若山 卓也IFA/証券外務員資格(証券外務員一種)/資産形成コンサルタント/ファイナンシャルプランナー

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