この記事はここがポイント
- 70歳代二人以上世帯の平均貯蓄額2416万円、中央値1178万円と大きな格差。
- 65歳以上の無職夫婦世帯は月4万2434円の赤字、年間約51万円の貯蓄取り崩し。
- 高齢者世帯の52.1%が生活を「苦しい」と認識、ゆとりがあるのは6.2%の状況。
総務省が2026年7月7日に公表した「家計調査報告(二人以上の世帯)2026年(令和8年)5月分」によると、消費支出は1世帯当たり32万345円となり、前年同月比で名目1.3%の増加となった一方で、実質では0.4%の減少となりました。
日々の生活費の負担が増す中で、老後の生活について不安を感じている方もいるでしょう。
この記事では、70歳代の二人以上世帯に焦点を当て、負債現在高や、貯蓄の平均額・中央値、毎月の生活費といったお金にまつわる実態を、公的な調査データをもとに詳しく解説します。
これからの暮らしをより豊かに、そして後悔なく過ごすためのヒントを探していただければ幸いです。
私はかつて証券会社でファイナンシャルアドバイザーとして、主に富裕層の個人顧客や法人に向けたライフプランに寄り添った資産運用をご提案してまいりました。
セカンドライフに向けた準備を進めていく際に、老後の生活についてイメージしにくい場合は「今のシニア世帯の平均的な負債額や貯蓄事情、家計収支など」を参考にするとよいでしょう。
【世帯主が70歳以上】平均負債額はいくら?
世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高、負債保有世帯の割合
総務省統計局が公表した「家計調査報告 貯蓄・負債編 2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」によると、世帯主が70歳以上の世帯の場合、負債現在高は81万円となっています。
負債保有世帯の割合は10.4%で、他の年代と比べもっとも低くなっています。
70歳代以上になると、子どもの教育費や住宅ローンなどの支払いを終えている世帯の割合が多くなり、現役世代よりも負債額が少なくなっていることが考えられます。
しかし、生活意識に目を向けてみると「生活が苦しいと感じている割合」が多いようです。
次は、厚生労働省の調査結果をもとに高齢者世帯の生活意識を見ていきましょう。
高齢者世帯の生活意識「生活が苦しい」と感じている割合は何%?
厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」をもとに、高齢者世帯(※)が生活をどのように感じているか、その実態を解説します。
※高齢者世帯とは、65歳以上の人のみで構成されるか、65歳以上の人と18歳未満の人で構成される世帯を指します。
高齢者世帯が実感する生活のゆとり
- 大変苦しい:21.0%
- やや苦しい:31.1%
- 普通:41.7%
- ややゆとりがある:5.4%
- 大変ゆとりがある:0.8%
この調査結果を見ると、シニア世帯の生活感は、経済的な状況によって大きく3つのグループに分かれていることがわかります。
まず、全体の半数を超える52.1%が「大変苦しい」または「やや苦しい」と回答しており、日々の暮らしに経済的な厳しさを感じていることがうかがえます。
その一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と答えた世帯は、合計でわずか6.2%にとどまります。
経済的な余裕を感じているシニア世帯は、ごく少数派であるようです。
そして、これらの中間に位置するのが「普通」と回答した層で、全体の41.7%を占めています。
この割合は「苦しい」と感じる層よりは少ないものの、「ゆとりがある」層を大幅に上回っています。
経済的にゆとりがあるわけではないものの、堅実な生活を送っているシニア世帯が、厚い中間層を形成している様子がうかがえます。
70歳代夫婦の貯蓄はいくら?平均と中央値から実態を解説
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとに、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産非保有世帯を含む)をグラフで見ていきましょう。
※ここでいう金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険なども含んだ金額です。ただし、日常的に出し入れする普通預金口座の残高は含まれていません。
70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
70歳代の二人以上世帯における平均貯蓄額は2416万円です。
しかし、この数値は一部の資産が多い層によって平均値が引き上げられているため、実態とは異なっている可能性があります。
より実情を反映しているといわれる中央値は1178万円で、多くの世帯の貯蓄額はこの金額に近い水準にあると推測できます。
世帯ごとの貯蓄額の詳しい分布は以下の通りです。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
70歳代の二人以上世帯のうち、金融資産を全く保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ」の世帯は10.9%を占めています。
その一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯も25.2%にのぼり、資産状況の格差が大きいことが見て取れます。
分布を詳しく見ると、100万円未満が4.5%、100万円から200万円未満が5.1%、200万円から300万円未満が3.7%と、貯蓄額が比較的少ない世帯も一定数いることがわかります。
対照的に、1000万円から1500万円未満が11.1%、2000万円から3000万円未満が12.3%など、十分な資産を築いている世帯も存在します。
貯蓄額は、退職金の有無、現役時代の収入、相続、健康状態といった様々な要因で大きく変わります。
公的年金の受給額も、加入履歴によって個人差が生じます。
そのため、貯蓄が少ない世帯では、年金収入のみで生活を成り立たせるのが困難な場合も考えられます。
安定した老後を送るためには、各世帯の状況に合わせた生活設計が重要です。
例えば、健康であればパートタイムで働く、あるいは不動産や投資から副収入を得るなど、早めに準備を始めることが将来の安心につながるでしょう。
65歳以上の無職夫婦世帯の生活費は月いくら?
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯」の平均的な家計収支を確認しましょう。
収入の内訳(月額25万4395円)
このうち、公的年金などの社会保障給付が22万8614円を占めています。
支出の内訳(月額29万6829円)
支出のうち、生活費にあたる消費支出は26万3979円です。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
税金や社会保険料などの非消費支出は3万2850円です。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
毎月の家計収支の実態
- ひと月の赤字:4万2434円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%
このモデル世帯では、月の収入が25万4395円で、その大半を公的年金をはじめとする社会保障給付が占めています。
対して、月の支出は29万6829円です。
内訳は、食費や光熱費といった日々の生活に必要な消費支出が26万3979円、税金や社会保険料である非消費支出が3万2850円となっています。
結果として、毎月の収支は4万2434円の赤字となり、この不足分は貯蓄から補填することになります。
年間に換算すると、約51万円を貯蓄から取り崩す計算です。
シニア世代は現役時代のように安定した収入を得ることが難しいため、このような赤字が続くと、長期的に見て貯蓄が大きく減少する原因になりかねません。
現在の貯蓄額を考慮しつつ、家計を見直したり、健康であれば短時間でも働いたりするなど、できる範囲で対策を講じることが、老後の生活を安定させる鍵といえるでしょう。
まとめ:70歳代の家計と向き合うために
今回は、70歳代の負債額・貯蓄額、生活費にまつわる様々なデータをご紹介しました。
平均貯蓄額は2416万円でしたが、より実態に近い中央値は1178万円であり、両者には大きな差があることがわかりました。
また、年金収入だけでは家計が赤字になる世帯も珍しくなく、生活が「苦しい」と感じている人が半数を超えるという実情も明らかになりました。
もちろん、これらのデータはあくまで平均値であり、個々の状況は人それぞれ大きく異なります。
大切なのは、こうした客観的な数値を参考に、ご自身の状況と照らし合わせて、これからのライフプランを考えるきっかけにすることではないでしょうか。
家計を見直したり、健康なうちは可能な範囲で仕事をしたりと、できることから少しずつ準備を進めることが、将来の安心につながっていくはずです。
この記事が、皆様が豊かなセカンドライフを築くための一助となれば幸いです。
参考資料
SMBC日興証券(旧日興コーディアル証券)出身。証券外務員一種保有。富裕層や法人に向けた資産運用コンサルティングに従事。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして記事の企画・執筆・監修をしている。
