私が普段、ファイナンシャル・アドバイザーとして相談をお受けしていて実感するのは、今回お伝えするような優遇措置や給付は「自分が対象かどうかを知り、必要な手続きをした人」が支えを受けられるということです。
非課税に当てはまりそうでも、制度によっては申請が必要だったり、自治体ごとに取り扱いが違ったりします。したがって、「自分は知らなかった」で見逃してしまうのは、本当にもったいないことです。
今回、この記事でご自身やご家族が対象になりそうかを気付かれた際には、一度確認してみてください。また、分からなければ、お住まいの市区町村の窓口に問い合わせしてみてください。
私も金融プロフェッショナルとして常に制度理解に関してはアップデートをしているのですが、制度は変わるものと認識しています。はじめての方にとっては理解しにくいのは当然だと思います。
厳しい暑さが続く2026年7月。エアコン代や食料品の値上がりなど、物価高で家計の負担が増すなか、少しでも使える制度や支援がないかと気になっている方も多いのではないでしょうか。
6月ごろに届いた「住民税の通知書」を見て、「自分の住民税はこの金額なんだ」「もしかして非課税に当てはまるのかな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、住民税非課税世帯に該当するかどうかを分ける「年金収入」や「給与収入」の境界線(ボーダーライン)は、意外と知られていません。
この記事では、住民税が非課税になる収入の目安を単身・二人世帯に分けてやさしく解説し、あわせて非課税世帯が受けられる心強い「優遇措置」5つもご紹介します。ご自身やご家族に当てはまるところがないか、一緒に確認していきましょう。
【一覧表で確認】住民税非課税世帯が対象となる「優遇措置」は何がある?
これまで、新型コロナウイルス対策や物価上昇への対応として、住民税非課税世帯を主な対象に、現金給付などの支援策が実施されてきました。
住民税非課税世帯とは、所得が一定の基準以下で、住民税が課されない世帯のことをいいます(詳しい定義は後ほど確認します)。
こうした世帯に向けては、現金給付だけでなく、日々の暮らしを支えるさまざまな優遇措置も用意されています。
ここでは、その中から代表的な5つを見ていきましょう。
【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置
1:国民健康保険料(応益割)の減額
- 応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額
2:介護保険料の減額
- 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる
3:国民年金保険料の免除・納付猶予
- 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか
4:保育料の無償化
- 0歳から2歳までの保育料が無償化
- これにより、0~5歳までの保育料が無料になる
5:高等教育の修学支援新制度
- 授業料・入学金の免除または減額
- 返還を要しない給付型奨学金
- 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化
このほかにも、自治体が独自に設けている制度まで含めると、利用できる支援は数多くあります。
それでは、住民税非課税世帯とは具体的にどのような世帯を指すのか、次の章で一緒に確認していきましょう。
【住民税のキホンも整理】「住民税非課税世帯」とはどんな世帯?
まずは住民税の基本的な仕組みを押さえたうえで、住民税非課税世帯に当てはまる条件を見ていきましょう。
住民税は、お住まいの都道府県や市区町村に納める地方税で、公共サービスの提供やインフラ整備などに使われる、暮らしを支える大切な財源です。
住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造
個人に課される住民税は、「均等割」と「所得割」の2つで成り立っています。少しむずかしく感じるかもしれませんが、次のように整理すると分かりやすくなります。
- 均等割:所得の多い少ないに関係なく、一律に課税される部分
- 所得割:所得に応じて税額が決まる部分
この均等割と所得割のどちらも課されていない状態を「住民税非課税」といい、世帯全員がこの条件に当てはまる場合を「住民税非課税世帯」と呼びます。
なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、給付金などの支援制度の対象になるかどうかは、自治体によって取り扱いが異なることがあります。
詳しい内容は、必ずお住まいの市区町村が定めている基準を確認するようにしましょう。
【要件】「住民税が非課税」となる世帯条件をチェック
それでは、住民税が課されない条件について、具体的に見ていきましょう。
次に挙げるいずれかに当てはまる場合、住民税は非課税となります。
- 生活保護を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
- 前年の所得が各市区町村の基準を下回る
このうち1と2の要件は全国共通ですが、3の所得基準は市区町村ごとに定められており、内容が異なる場合がある点には注意しておきましょう。
住民税非課税世帯となる「所得のボーダーライン」はどのくらい?
「住民税非課税世帯」に当てはまる所得の水準について、兵庫県神戸市を例に見ていきましょう。
均等割も所得割もかからない人(非課税者)
神戸市では、「非課税となる所得の基準額」を次の計算式で算出しています。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
ただし、21万円は同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者で、前年の合計所得金額が58万円以下の人
住民税非課税世帯となる「給与収入・年金収入のボーダーライン」はどのくらい?
住民税が非課税となる所得の基準は、先ほど触れた「同一生計配偶者や扶養親族の人数」に加えて、収入の種類によっても変わってきます。
所得は、収入金額から各種控除を差し引いて算出されるため、ここでは神戸市の基準を「収入ベース」に置き換えて確認していきましょう。
住民税非課税世帯に該当する世帯
出所:神戸市「いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?」
単身世帯の場合は?
合計所得金額が45万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が110万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
同一生計配偶者または扶養親族が1名いる場合は?
合計所得金額が101万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)
単身世帯の場合、給与収入のみであれば年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下が、住民税非課税となるおおよその目安です。
一方で、同一生計配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入の基準が引き上げられます。
とくに65歳以上で年金収入のみの世帯では、目安が211万円以下となり、単身世帯に比べて条件が大きくゆるやかになっている点が特徴です。
このように、住民税が非課税になるかどうかは、世帯の構成や収入の種類によって変わってきます。ご自身の場合はどうなるだろう、と思い浮かべながら読み進めてみてください。
シニアのほうが「住民税非課税世帯」に該当しやすい?
厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」をもとに、年代別に住民税が課税されている世帯の割合を見ていきましょう。
【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む
住民税が課税されている世帯の割合は、30~50歳代ではおよそ9割近くに達していますが、60歳代では79.8%まで下がります。
さらに、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%となっており、年齢が上がるにつれて、住民税が課されている世帯の割合はゆるやかに低くなっていく傾向が読み取れます。
一般的に、年金生活へ移ると現役時代より収入が減ることに加え、65歳以上には公的年金に対する所得控除が手厚く設けられています。
また、遺族年金は課税の対象になりません。
こうした背景から、年金を受給している高齢者世帯は、住民税非課税世帯に該当しやすい傾向があるといえます。
まとめ
この記事では、「住民税非課税世帯」の仕組みや収入のボーダーライン、受けられる優遇措置について確認してきました。
非課税世帯には、国民健康保険料や介護保険料の減額、保育料の無償化、高等教育の修学支援など、暮らしを支える5つの優遇措置が用意されています。
非課税となる収入の目安は、単身世帯で65歳以上・年金収入のみなら155万円以下、扶養親族が1名いる場合は211万円以下と、世帯構成によって変わります。
また、住民税が課税されている世帯の割合は75歳以上で54.4%まで下がり、年齢が上がるほど非課税世帯に該当しやすくなる傾向も見られました。
収入状況が変わる年齢で対象になる可能性があるので、ご自身やご家族に当てはまるところがないか、この機会にぜひ確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級保有。住友生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
