現役世代が老後に向けてすべきこと
日本の公的年金の平均受給額を見て、「思ったより少ないな」「自分は大丈夫だろうか」と感じた方も多いのではないでしょうか。
ここからは、元銀行員の視点も交えながら、現役世代の私たちが「老後の不安を解消するために、今すぐ起こすべき行動」を具体的なステップと年代別の戦略に分けて解説します。
【ステップ1】「ねんきん定期便」で将来の年金見込額を把握する
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、WEB上で確認できる「ねんきんネット」をチェックしましょう。
ここで確認すべきは、「将来自分はいくらもらえるのか」の現実的な数字です。
また、もし学生時代などに年金保険料の「未納期間」や「猶予期間」があれば、後から納める「追納」ができないか検討してみてください。
追納することで、将来受け取れる年金額を確実に増やすことができます(※追納には期限があります)。
【ステップ2】老後の「生活費」をざっくり試算する
次に、老後にいくらお金が必要かを計算します。とはいえ、今から何十年も先の家計簿を細かくつける必要はありません。
まずは「いまの生活費」をベースに考えましょう。そこから、老後にはなくなっているはずの以下の固定費を差し引いてみます。
- 子どもにかかる教育費
- 完済している予定の住宅ローン
- 現役時代にかかっていた仕事関連の諸経費
これらを引いた金額が、あなたの「老後のざっくりとした月々の生活費」になります。
【ステップ3】「不足額」を割り出し、準備すべき最低金額を知る
ステップ1でわかった「年金見込額」から、ステップ2の「老後の生活費」を差し引いてみましょう。
【計算式】「年金見込額(月額)」 - 「老後の生活費(月額)」 = 毎月の不足額
ここで割り出された「不足額」こそが、あなたが現段階で把握できる、老後までに最低限準備しておくべきリアルな金額です。
【年代別】老後資金を準備するための具体策
準備すべき金額がわかったら、次はその金額をどうやって作っていくかです。
当然ながら、20歳代と50歳代では取るべきアプローチ(戦略)が大きく異なります。
ご自身の年代に合わせて、最適な方法を選んでいきましょう。
20歳代:時間を味方に。コツコツ積立と税制優遇のフル活用
20歳代の強みは「老後までの時間がたっぷりあること」です。
- 積立投資を早く始める: 少額からでも良いので、NISAなどを活用してコツコツと長期の積立投資をスタートさせましょう。時間は資産運用の最大の味方(複利効果)になります。
- 制度の活用: iDeCo(個人型確定拠出年金)や勤務先の企業型DCなども視野に入れ、所得税や住民税を減らす(節税する)工夫をしながら、「減らせるものを減らし、増やす工夫」を習慣化させましょう。
30歳代:ライフイベントの波を乗り越えながら計画的に
30歳代は、結婚、出産、住宅購入など、人生の大きなイベントが重なる時期です。
- 無理な住宅ローンは厳禁: 周りに流されてキャパシティを超える住宅ローンを組んでしまうと、老後資金の準備が完全にストップしてしまいます。計画性が最も重要になる年代です。
- 投資の継続: 出費は増えますが、20代と同様にNISAやiDeCoを活用した積立投資の手は止めず、家計の一部としてたんたんと積み上げていきましょう。
40歳代:支出のピークを凌ぎつつ、老後のリアルと向き合う
40歳代は、子どもの教育費が本格化し、住宅ローンの返済も続くなど、人生で最もお金が出ていく「支出のピーク」を迎えます。
- 家計のメリハリ: 非常に大変な時期ですが、老後の足音も少しずつ近づいてくる頃です。「教育費が終わったら一気に老後資金へシフトする」といった、数年先を見据えた家計のシミュレーションをはじめましょう。
50歳代:ラストスパート、「攻め」と「守り」のバランスが重要
50歳代に入ると、ねんきん定期便に記載される見込額の精度がかなり高くなり、実際の受給額との乖離が小さくなります。ここからは老後資金作りのラストスパートです。
- 運用のピッチを上げる: 「NISAで毎月数千円」ののんびりとした積立では間に合わないケースも出てきます。iDeCoなどの税制優遇を最大限に活用し、所得税・住民税を極限まで減らして手取りを増やし、浮いたお金を少しでも多く運用に回すなど、ギアを上げる必要があります。
- 安全資産の確保: 一方で、老後が目前に迫っているため、すべての資産を投資に回すのは危険です。暴落に備え、ある程度の割合は現金などの「安全資産」として確保しておくバランス感覚(守りの姿勢)が求められます。
- 65歳以降の働き方を検討: 現状の資産状況と年金見込額を天秤にかけ、「65歳以降もパートや再雇用で働くべきか」といったリタイア後の働き方の最終調整を行いましょう。
まとめ
銀行員時代から多くのシミュレーションを見てきて確信しているのは、「早く現状を知り、早く行動を起こした人ほど、老後の選択肢が圧倒的に増える」ということです。
ご覧いただいたように、年金の受給額は現役時代の働き方や加入歴によって大きく異なり、まさに「人それぞれ」です。
平均額やモデルケースはあくまで参考とし、ご自身の状況と照らし合わせることが大切になります。
年に一度送られてくる「ねんきん定期便」や、いつでも加入記録を確認できる「ねんきんネット」などを活用して、ご自身の年金見込額を把握してみてはいかがでしょうか。
具体的な数字を知ることで、これからのライフプランもより考えやすくなるはずです。
参考資料
関連タグ
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。社内表彰歴多数。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。現在は、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、および専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて、企画・執筆・編集・監修を幅広く担当している。
金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、NISAや投資信託をはじめとするファイナンス領域を主軸に、その土台となる年金制度や社会保障、住宅ローン、相続まで横断的に分かりやすく解説。