株価は年初来安値圏のイオン。売上10兆円で日本の小売首位なのに純利益726億円という「稼ぐ効率」の問題
slyellow/Shutterstock.com
執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
09:59
株価は年初来安値圏のイオン。売上10兆円で日本の小売首位なのに純利益726億円という「稼ぐ効率」の問題
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この記事はここがポイント

  • 小売首位イオンは売上10兆円超も、純利益726億円で稼ぐ効率が低い構造
  • 上場子会社への利益配分や金利負担が親会社最終利益を圧迫
  • ROE約6%と他社比で低い効率、高いPER・PBRへの投資家は慎重姿勢

イオン(8267)の2026年2月期は、営業収益(売上高にあたる)が10兆7,153億円と、小売業として国内で群を抜く規模を誇ります。営業利益も2,704億円と過去最高を更新しました。ところが、株主に最終的に帰属する当期純利益は726億円。売上高の1%にも満たない水準です。株価も冴えず、7月24日の終値は1,339円と、1月につけた高値から大きく水準を切り下げ、年初来の安値圏で推移しています。「売上日本一」の巨大企業が、なぜ株式市場で高く評価されないのか。カギは「稼ぐ効率」にあります。

過去最高の営業利益、でも薄い最終利益

2026年2月期は、営業収益が前期比5.7%増、営業利益が同13.8%増と好調でした。ヘルス&ウエルネス(ドラッグストア)事業やモールを運営するディベロッパー事業がけん引役です。当期純利益は726億円で前期比167.5%増と見出しは派手ですが、これは前の期の利益が落ち込んでいた反動という面が大きく、水準そのものはなお低いままです。

注目すべきは利益率です。営業利益率は約2.5%、最終的な純利益率にいたっては約0.7%。売上高10兆円という規模に対し、株主の手元に残る利益はきわめて薄い、というのがイオンの決算の実像です。

なぜ最終利益がこれほど薄いのか

理由は主に3つあります。第一に、中核である総合スーパー(GMS)が構造的に薄利のビジネスであること。第二に、イオンが多くの上場子会社を抱える巨大グループだという点です。イオンフィナンシャルサービスやドラッグストア各社など、傘下に上場企業が多く、稼いだ利益のかなりの部分が、それら子会社の少数株主(非支配株主)の取り分として差し引かれます。連結の売上は大きく見えても、親会社の株主に届く利益はそのぶん目減りするのです。第三に、銀行を含む総合金融事業や大規模な出店・物流投資のために負債が大きく、自己資本比率は約7.9%と低い水準にあります。金利が上がる局面では、この借入の利息負担が最終利益を圧迫します。

つまり、連結の「見かけの大きさ」と、株主が実際に受け取る利益とは、大きく異なるということです。ここを混同すると、イオンという会社を過大にも過小にも評価しかねません。

同じ小売でも際立つROEの低さ

株主から見た効率の低さは、ROE(株主資本利益率)に表れます。イオンのROEは約6%。同じ小売業でも、ファーストリテイリング(ユニクロ)は約20%、パン・パシフィック(ドン・キホーテ)は約16%で、この差は歴然です。ROEは、株主が預けた資本に対してどれだけの利益を生んだかを示す指標で、長期の投資家がもっとも重視する数字のひとつです。規模では日本一でも、稼ぐ効率という物差しで測ると見劣りする——ここがイオンの評価が伸び悩む根本にあります。

バリュエーション——PER51倍・PBR3倍をどう読むか

株価1,339円をもとにすると、会社予想の1株利益(予想EPS約26円)に対する予想PER(株価収益率)は約51倍、1株純資産(BPS)約440円に対するPBR(株価純資産倍率)は約3.0倍です。PERが50倍超と高いのは、株価が高いというより、割り算の分母である利益が薄いために倍率が大きく出ている、という面が強い点に注意が必要です。

さらに見落とせないのが来期の会社計画です。2027年2月期は営業収益12兆円、営業利益3,400億円(前期比25.7%増)と大きな伸びを見込む一方、当期純利益は730億円(同0.4%増)とほぼ横ばいの予想です。営業段階では大きく増益でも、金利負担や少数株主への配分を経ると、株主に届く利益は増えにくい。この構造こそ、投資家がイオン株に慎重になる理由といえます。

投資家はどう受け止めればよいか

もっとも、イオンには生活に密着した強固な基盤があります。ドラッグストアのツルハ・ウエルシアの統合による共同調達や、決済・会員基盤(AEON Pay)、購買データを使った広告事業など、規模を収益力に転換する打ち手は動き出しています。これらが実を結び、少数株主への利益流出という構造を乗り越えてROEを引き上げられるかどうかが、長期の投資妙味を左右します。

一方で、物価高によるコスト増や金利上昇、大型投資の回収長期化はリスクです。株主優待や生活インフラとしての安心感で保有する魅力はありますが、「規模の大きい会社」と「株主が効率よく稼げる株」は必ずしも同じではありません。イオンは、その違いを考えるうえで格好の教材といえるでしょう。

泉田良輔
執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

個人投資家にファンは多いが、投資対象とみるとROE他効率性が問われる

イオンというと、誰もが知る日本を代表する小売企業。

私も「まいばすけっと」には普段大変お世話になっているので、イオングループを応援したい気持ちはある・・・とはいえ、投資家目線で見ると微妙な感覚があるのも事実です。

それは収益性であったり、ROEといった資本効率の指標をみると、競合企業や同業他社と比較すると見劣りするからです。

イオンは、GMSを祖業とする不動産・金融事業が柱の企業グループとして理解すると腹落ちするのではと思います。

実際、バランスシートを見ると、いわゆる「レバレッジ」をかけた状態になっており、まさに不動産・金融業と同じ構造です。

その観点でバリュエーションを見たときにどうか。

銀行業であれば金利負担が上がっても利ザヤを確保しやすくなりますが、不動産や金融業は資金調達コストが上昇するので、マクロ環境は逆風ということになります。

「デフレ、低金利」vs「インフレ、金利復活」のマクロ環境の変化にどう向き合うか。注目です。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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