【FPが解説】夏休みに知っておきたい「生前贈与の新ルール」年110万円非課税で《暦年課税と相続時精算課税》はどう変わった?
years44/shutterstock.com
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【FPが解説】夏休みに知っておきたい「生前贈与の新ルール」年110万円非課税で《暦年課税と相続時精算課税》はどう変わった?

「10人に1人が課税」過去最高の相続税申告データと生前対策の重要性

執筆者橋本 優理保険ライター/元保険代理店プランナー/FP2級
監修者村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者
11:30
【FPが解説】夏休みに知っておきたい「生前贈与の新ルール」年110万円非課税で《暦年課税と相続時精算課税》はどう変わった?
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2026年も折り返し地点を過ぎた7月中旬、将来の家計や資産の引き継ぎについてご家族で話し合う機会が増える時期かと思います。

筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として住宅ローンの見直しから老後資金のご相談まで幅広い家計のサポートをさせていただきました。その中でも、生前贈与に関するお悩みも数多く寄せられています。

今回は、国税庁が発表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」の調査結果をもとに、年々身近になる相続税の現状と、税制改正によって年110万円の非課税枠ができ非常に使いやすくなった「相続時精算課税」について解説します。

「10人に1人が課税」過去最高の相続税申告データと生前対策の重要性

国税庁が発表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、被相続人数や課税価格が年々右肩上がりで増加しており、相続税の対象となる方が着実に増えていることがわかります。

課税割合は10.4%に!増加を続ける相続税の課税対象者

【相続税】課税割合の推移

【相続税】課税割合の推移
【相続税】課税割合の推移

亡くなった方(被相続人数)のうち、実際に相続税の課税対象となった方の割合(課税割合)は上昇を続けています。令和6年には10.4%に達し、前年の9.9%と比較して0.5ポイントの増加となりました。

総額23兆円超!基礎控除引き下げ以降で最大規模に

相続税の課税価格及び税額の推移

相続税の課税価格及び税額の推移

令和6年分の相続税の課税価格の総額は約23兆3846億円、申告税額の総額は約3兆2446億円にのぼり、前年と比べても大きく増加しています。これらの数値はいずれも、基礎控除額が引き下げられた平成27年分以降で過去最高を記録しており、相続税の課税規模が継続的に拡大している状況がうかがえます。

これらのデータからもわかるように、相続税はより多くの方に関わりのある身近な税制へと変化してきています。だからこそ、今回のメインテーマである「進化した相続時精算課税制度」を活用し、年間110万円の非課税枠を活かした早めの生前対策を行うことが、将来の安心につながるのです。

「生前贈与の新ルール」年110万円非課税で《暦年課税と相続時精算課税》はどう変わった?

今回の改正により、相続税法及び租税特別措置法の一部が大きく変わりました。主なトピックは以下の通りです。

【年110万円の非課税枠】使い勝手が大幅に向上した相続時精算課税のメリット

相続時精算課税の変更点

相続時精算課税の変更点
相続時精算課税の変更点

年110万円の基礎控除が創設され、受贈した土地建物が被災した際の再計算特例が新設されました。

【加算期間が3年から7年へ】駆け込みでの贈与が難しくなった暦年課税の変更点

暦年課税の変更点

暦年課税の変更点
暦年課税の変更点

生前贈与が相続財産に加算される期間が、これまでの3年から7年へと延長されました。

このように、生前贈与のルールは「暦年課税」での駆け込み贈与が厳しくなる一方で、「相続時精算課税」の使い勝手が圧倒的に良くなる方向へ大きく舵を切りました。早めに計画を立てるかどうかが、将来のご家族の負担を大きく左右することになります。

ご自身の状況に合わせて、二つの制度を賢く使い分けることが今後の相続対策の要です。中でも今回は、非常に便利に生まれ変わった「相続時精算課税の年110万円の非課税枠」について、次章でさらに詳しく解説していきます。

【将来の相続財産に加算ゼロ】年間110万円以下の贈与なら申告も不要

令和6年1月1日以後に特定贈与者から贈与により取得した財産について、相続時精算課税を選択した場合でも、暦年課税とは別に年間110万円の基礎控除が新たに設けられました。

これにより、年間110万円以下の贈与であれば贈与税の課税価格から全額控除され、将来の相続時にも特定贈与者の相続財産に加算されることはありません。同一年中に複数の特定贈与者から財産を取得した場合、この110万円の枠は特定贈与者ごとの課税価格で按分して適用されます。

【3300万円の贈与ケース】実際に基礎控除を活用した場合の贈与時と相続時の税額シミュレーション

実際に基礎控除を活用した場合の計算イメージを見てみましょう。

<前提条件>

  • 相続時精算課税を適用した贈与財産が3300万円
  • 相続財産が1500万円
  • 法定相続人は配偶者1人、子2人のケース

改正後のイメージ

改正後のイメージ

贈与時(贈与税の計算)

贈与額3300万円から、今回創設された基礎控除110万円を差し引きます。基礎控除後の課税価格は3190万円となり、そこから特別控除2500万円を引いた残りの金額に20%が課税され、納付税額は「138万円」となります。

相続時(相続税の計算)

相続財産1500万円に、贈与時の基礎控除後課税価格である3190万円を加算します。合計4690万円となりますが、これは相続税の基礎控除額(4800万円)を下回るため、相続税の納付税額は「0円」となります。その結果、贈与時に納付していた138万円は全額還付されることになります。

つまり、まとまった金額を先に贈与して贈与税を払ったとしても、最終的なトータルの財産が基準内に収まれば、払った税金は手元に全額戻ってくる仕組みなんです。非課税枠の110万円を毎年コツコツ使うだけでなく、マイホーム資金など大きな金額を早めに渡したい時にも安心な制度ですね。

まとめにかえて

今回は、国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」の調査結果をもとに、身近になった相続税の現状と進化した相続時精算課税について解説しました。

相続税は一部の方だけの問題と思われがちですが、データが示す通り、今はより多くの方に関わりのあるテーマとなっています。だからこそ、新しくなった年110万円の非課税枠をうまく活用し、無理のない範囲で少しずつ財産を次世代へ移していくことが大切です。

・制度の利用には初回の届出が必須なので忘れずに手続きを行うこと ・贈与税だけでなく将来の相続税の計算も視野に入れて計画を立てること ・教育費の援助など目的のある資金移動はご家族のライフプランに合わせること

制度がこれまで以上に使いやすくなった今こそ、ご家族で将来のお金のことについて話し合う良いタイミングかもしれません。ご自身のペースで、できることから少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。

【監修者コメント】 生前贈与はご家族の想いを形にする大切な手段ですが、税制改正に伴い、正しい知識に基づく早めの準備がより一層重要になってきています。制度のメリットを最大限に活かしつつ、ご家庭ごとのご事情に合わせた最適な選択ができるよう、迷われた際はぜひ専門家にご相談ください。

参考資料

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橋本 優理保険ライター/元保険代理店プランナー/FP2級
村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者株式会社モニクルリサーチ