【iDeCoと退職金】新ルール対応!税金を減らす受け取り方
新しい「10年ルール」を踏まえた場合、退職金とiDeCoはどのように受け取ればよいのでしょうか。受取時の税金を減らす視点で、2つの方法を押さえましょう。
対策①iDeCoを60歳で受け取り、退職金を70歳で受け取る
iDeCoと退職金をいずれも一時金として受け取るとき、双方で退職所得控除を満額で適用するには、「iDeCoを先に受け取り、10年後以降に退職金を受け取る」か「退職金を先に受け取り、20年後以降にiDeCoを受け取る」ことが条件となります。先述の通り、後者は条件が厳しいと考えられるため、ここでは前者を考えましょう。
iDeCoは最短60歳で受け取れるため、退職金は70歳以降に受け取れば、この条件を満たすことになります。先述した「60歳でiDeCo一時金、65歳で退職一時金」のケースで考えると、退職一時金の受け取りを5年遅らせるイメージです。
ただし、iDeCoを60歳で受け取るには、10年以上の加入者期間が必要です。また、退職金を70歳で受け取れるかは、勤務先の制度次第という事情もあります。
退職金を先に受け取るケースよりハードルは低いとはいえ、この方法を実践できる人は、やはり限定的といえるでしょう。
対策②iDeCoと退職金のいずれかを年金受取
多くの人が実践できる方法が、iDeCoと退職金のいずれかを年金で受け取ることです。所得区分が「退職所得」と「公的年金等にかかる雑所得」に分かれるため、退職所得控除と公的年金等控除をそれぞれ適用できます。
退職金を年金で受け取れるかどうかは、こちらも勤務先の制度にかかっています。厚生労働省によると、退職金の支給形態は一時金が主流で、年金で受け取れる企業は少数派です。
【退職給付制度の形態別企業割合(退職給付制度がある企業)】
- 退職一時金制度のみ:69.0%
- 退職年金制度のみ:9.6%
- 両制度併用:21.4%
退職給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付制度の形態別企業割合
勤務先に退職年金制度がなくても、iDeCoを年金で受け取ることが可能です。iDeCoは原則として5年以上20年以下の年金形式でも受け取れます。
この方法なら、退職一時金は勤続年数に応じた退職所得控除が満額適用され、iDeCo年金は他の公的年金等にかかる雑所得と合算して公的年金等控除が適用されます。双方が互いに干渉することなく、独立した所得としてみなされるため、受け取り時の税負担を抑制する効果が期待されます。
もっとも、退職金やiDeCoの金額が一定以下の場合など、双方を同時に一時金として受け取っても税金が発生しないケースも考えられます。
どの方法が有利となるか、受け取りの際は事前にシミュレーションしておきたいところです。
【iDeCoと退職金】iDeCoの年金は「在職老齢年金」の対象外 働いてもカットされない
厚生労働省が2025年12月に公表した「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』」によると、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%にのぼります。また、3社に1社が70歳までの雇用機会を提供するなど、定年を引き上げる機運が高まっています。
主なポイント
定年が後ろ倒しになると、気になるのが「在職老齢年金制度」です。年金を受け取りながら働く高齢者の年金を調整する制度で、賞与を含む賃金と年金の合計が一定水準を超えるとき、年金支給の一部が停止されます。
なお、在職老齢年金制度で停止されるのは、公的年金のうち老齢厚生年金の部分で、老齢基礎年金(国民年金)のほか、iDeCoなどの私的年金は対象外です。働きながらiDeCoを年金形式で受給していても、年金が減らされることはありません。
iDeCoと退職金の受け取りルールが変更されたことにより、今後は年金形式を指定する人が増えそうです。税制や在職老齢年金制度も踏まえ、損しない出口戦略を考えておきましょう。
最後に、IFAとしてiDeCoの相談も受けてきた筆者からのアドバイスをお伝えします。
「とりあえず一時金」で決めず、必ずシミュレーションを
iDeCoは一時金での受け取りを希望する人が多いと思いますが、勤務先に退職金制度がある場合、税負担が重くなる場合があります。特に新しい「10年ルール」が施工された2026年以降、その懸念は高まっています。
後悔しないよう、受け取り方は事前に試算してから判断しましょう。
50代のうちに退職金制度を把握する
事前の試算には、勤務先の退職金制度の把握が不可欠です。定年が見えてきたら、退職金の受け取り方や時期、金額の把握に努めましょう。
iDeCoは「一時金」と「年金」の併用も検討したい
iDeCoは退職所得控除に収まる部分は一時金、超える部分は年金で受け取れば、双方の非課税枠を無駄なく使い切れます。
ただし、退職一時金も受け取る場合は重複期間の考慮が必要です。また、iDeCo一時金を先に受け取る場合、受け取るべきiDeCo一時金の額は、後から支給される退職一時金の退職所得控除額を前もって計算し判断する必要があります。
元マネースクール監修者からのコメント
2026年からの「10年ルール」施行により、iDeCoと退職金の受け取り戦略は、これまで以上に個人の状況に合わせた事前のシミュレーションが不可欠な時代になりました。
記事にある通り、50代のうちから勤務先の退職金制度を正確に把握し、「一時金」と「年金」の併用を含めた柔軟な出口戦略を立てておくことが、老後の手取り額を最大化して資産寿命を守る最大の鍵となります。
参考資料
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証券会社を経てIFAとして10年以上活動。個人へ投資提案を行う傍ら、金融ライターとしてNISA等の資産運用から社会保障まで幅広く執筆。現在は大型株を中心に年100本ペースで連載。AFP等保有。
PROFILE
金融商品仲介業(IFA)/証券外務員資格(証券外務員一種)/資産形成コンサルタント(日本証券アナリスト協会)/AFP(日本FP協会)保有。証券会社からIFAに転じ、IFAとして10年以上活動。個人向けに個別株式、投資信託の提案を行う。
コロナ禍を機に金融ライターとしても活動を開始。NISAやiDeCoを含む資産運用のほか、公的保険などの社会保障や税制、クレジットカードなど、幅広い金融ジャンルで執筆。現在は主に大型株を中心に上場企業の記事を年100本ペースで連載。
