この記事はここがポイント
- 新NISA1800万円を5年投資し20年運用で資産4342万円
- 4342万円を元本に利回り3%で20年取り崩せば月24万円受取
- 出口戦略は「減らさない運用」が肝要、株式から債券へ移行しリスク調整
新NISAは最大1800万円まで投資できます。人気の投資先である「オルカン」と「S&P500」のどちらに投資するか迷っている方も多いのではないでしょうか。
私は証券会社やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として10年以上にわたり個人の資産形成をサポートしてきましたが、日々の相談業務でも「この2つのどちらにすべきか」「1800万円の枠を使い切った後はどうなるのか」というご質問を数多くいただきます。
この記事では、1800万円を使い切った場合の運用シミュレーションと、増えた資産の「出口戦略」をわかりやすく解説します。
【新NISA】人気の「オルカン」と「S&P500」、何が違う?
NISAで投資先を選ぶとき、多くの人が比較するのが「オルカン」と「S&P500」の2つでしょう。違いはなんでしょうか。
オルカン:世界中の株式に分散投資
オルカン(全世界株式) は、日本を含む世界中の株式に幅広く分散投資する商品です。「地域の分散」が働くため、1つの国や地域への依存が抑制され、世界経済全体の成長を取り込めることが期待されます。
S&P500:米国株式に集中投資
S&P500は、米国の主要500社で構成される株式指数です。S&P500への連動を目指す投資信託を購入すれば、エヌビディアやグーグルといった世界を代表する企業の成長を享受できます。
ただし、S&P500は米国企業のみで構成される指数のため、その連動型投資信託は米国へ集中投資することになります。「地域の分散」がないため、オルカンよりもリスクは高くなりやすいでしょう。
オルカンとS&P500は、どちらも高いリターンを残してきたこともあり、投資先として広く知られています。では、実際に1800万円を投資するといくらになるのでしょうか。シミュレーションしてみましょう。
【新NISA】投資額累計1800万円、その後「ほったらかし運用」20年後はどうなっている?
オルカンやS&P500の運用実績はいずれも良好で、そのままシミュレーションすると期待が過剰になるかもしれません。
ここでは、もう少し低い利回りでシミュレーションしてみましょう。
NISAシミュレーションの前提
- 年初に360万円を一括投資資
- 新規投資は累計1800万円に達するまで継続(5年目まで)
- 累計1800万円に達した以降は新規投資せず運用を継続(6年目以降)
シミュレーションは、NISAの年間投資可能額である360万円を年初に一括投資する前提で行います。NISAのうち、つみたて投資枠は積立投資が前提ながら、ボーナス投資などの設定を利用すれば一括投資に近い運用も可能です。
新規投資は、NISAの累計投資可能額(非課税保有限度額)である1800万円に達するまで行います。年360万円なら、5年目で1800万円に達する計算です。6年目以降は新規投資は行わず、運用のみを継続します。
利回り5%なら17年で倍増 非課税でそのまま手取りに
この前提で利回りを5%とした場合、運用益は17年目で投資額の1800万円を上回ります。運用益は20年目に約2542万円に達し、本来は約516万円の税金が生じるところ、NISAなら非課税です。
利回り5%運用シミュレーション
利回り別 20年後の運用額
- 利回り3%:3067万円(運用益:1267万円)
- 利回り5%:4342万円(同2542万円)
- 利回り7%:6112万円(同4312万円)
- 利回り10%:1億99万円(同8299万円)
NISAで1800万円を最短で投資すると、比較的小さい利回りでもまとまった資産となります。また、NISAなら税金がかからないことも大きなポイントです。
※本シミュレーションは一定の前提を基にした試算であり、将来の成果を保証するものではありません。市場環境により資産が大きく減少するリスクもあり、常に右肩上がりで推移しない点に注意が必要です。
【新NISA】増えた資産、いくら取り崩せる?シミュレーションで検証
NISAは非課税期間に制限がないため、資産形成期だけでなく、資産の取り崩し期においても運用を継続できます。運用しながら取り崩すことで、資産寿命の長期化を図ることも可能です。
NISAで増やしたお金は、どれくらいの額を取り崩すことができるのでしょうか。こちらもシミュレーションで確認してみましょう。
取り崩しシミュレーションの前提
- 元本:4342万円(利回り5%運用シミュレーションの結果)
- 取り崩し中の運用利回り:3%
前述したNISAの1800万円運用シミュレーションでは、利回り5%だと20年後に4342万円に達しました。これを元本として取り崩し額を検証します。取り崩し期間はリスク許容度が下がると考えられるため、利回りは3%へ減じます。
20年の取り崩しなら月24万円
この前提で取り崩し期間を20年と置いた場合、年間に受け取れる金額は約291万円です。月に約24万円を受け取れる計算で、20年間の取り崩し総額は5820万円と、当初元本4342万円を超える結果となりました。
利回り3%取り崩しシミュレーション(取り崩し額:年291万円)
「人生100年時代」の現代では、取り崩し期間がさらに長くなるケースもあるでしょう。取り崩し期間を30年に延長した場合、受け取れる金額は年間約221万円(月間約18万円)、40年なら約188万円(月間約16万円)となります。
- 20年間取り崩し:年間約291万円(月約24万円)
- 30年間取り崩し:年間約221万円(月約18万円)
- 40年間取り崩し:年間約188万円(月約16万円)
取り崩し期間が長くなるほど年間に受け取れる金額は減りますが、その分資産が長持ちします。100歳まで生きることも視野に入れるなら、年金といった老後のキャッシュフローも把握し、取り崩しは必要最低限にとどめることが望ましいでしょう。
※本シミュレーションは一定の前提を基にした試算であり、将来の成果を保証するものではありません。市場環境により資産が大きく減少するリスクもあり、常に右肩上がりで推移しない点に注意が必要です。
【新NISA】出口戦略の基本:「減らさない運用」を目指す
NISAの出口戦略においては、「お金を増やす」ことより、「お金を減らさない」視点が大切です。加齢にともない運用期間を長く取ることが難しく、損失をその後の運用で取り戻すハードルは高くなるためです。資産形成期では許容できた損失も、老後は受け入れられないケースが想定されます。
オルカンやS&P500連動型投資信託のように、原則として株式のみで運用される投資信託は、一般にリスクが高い商品です。出口が近付いてきたら、相対的にリスクが低い債券の組み入れを検討しましょう。債券には、主に次のような方法で投資できます。
選択肢①:債券型ファンド
債券で運用される投資信託です。債券は株式よりも値動きが小さい傾向にあるため、組み入れることでポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待できます。
また、債券型ファンドは複数の銘柄で運用されるため、1本で分散投資ができるメリットもあります。
選択肢②:個別債券
個別の債券を直接購入する方法です。個別債券は、発行体が破綻しない限り満期まで保有すると利回りが確定しています。「いつ、いくら戻ってくるか」が明確なため、老後の資金計画と組み合わせやすいのが特徴です。
ただし、個人向け国債を除き、企業が発行する社債は破綻するリスクがあります。1銘柄に集中投資するのではなく、分散投資を心がけたいところです。
まとめにかえて
新NISAを利用して最初の5年間で1800万円を投資し、利回り5%で20年間運用した場合、資産額は4342万円に達する計算となります。さらに、この4342万円を利回り3%で運用しながら取り崩していくと、20年間にわたり毎月約24万円を受け取ることが可能です。
【プロ視点のアドバイス】
証券会社やIFAとして長年お客様の資産形成に携わってきた経験から、読者の皆様に3つのアドバイスをお伝えします。
①相場に一喜一憂せず「ほったらかし」を貫く
途中で運用をやめてしまうのが一番もったいないケースです。短期的な下落があっても、長期目線で市場に居続けることが成功の鍵となります。
②ライフステージに応じたリスクの見直しを
出口が近づくにつれて、株式中心から債券を組み入れた保守的な運用へシフトするなど、ご自身の年齢や環境に合わせてリスク許容度を調整しましょう。
③「増やす」だけでなく「使う」喜びも計画に
資産運用は人生を豊かにするための手段です。老後の安心を確保しつつ、適切な取り崩しによってご自身のために有意義にお金を使う視点も大切にしてください。
NISAは「増やす」ことが注目されやすい制度ですが、その目的である「どう使うか」まで考えておきたいところです。出口戦略を早めに意識しておくことで、長い老後を安心して過ごせる備えになるでしょう。
【元マネースクール講師の監修者コメント】
マネースクールで講師を務めていた際、多くのスクール生の方々と接してきましたが、「NISAで資産を増やすこと」に熱心な方が多い一方で、「増えた資産をどう取り崩すか」まで計画できている方はごくわずかでした。本記事のように、あらかじめ出口戦略まで見据えて資産形成を始めることは、将来の安心につながる非常に大切な視点です。
参考資料
- MSCI Inc. 「MSCI ACWI Index (JPY)」
- S&P Dow Jones Indices LLC「S&P 500」
- 資産運用業協会 投信総合検索ライブラリー「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」
- 資産運用業協会 投信総合検索ライブラリー「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)〈愛称:オルカン〉投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2026.1.24」
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2026.1.24」
- 金融庁「NISAを知る」
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証券会社を経てIFAとして10年以上活動。個人へ投資提案を行う傍ら、金融ライターとしてNISA等の資産運用から社会保障まで幅広く執筆。現在は大型株を中心に年100本ペースで連載。AFP等保有。
PROFILE
金融商品仲介業(IFA)/証券外務員資格(証券外務員一種)/資産形成コンサルタント(日本証券アナリスト協会)/AFP(日本FP協会)保有。証券会社からIFAに転じ、IFAとして10年以上活動。個人向けに個別株式、投資信託の提案を行う。
コロナ禍を機に金融ライターとしても活動を開始。NISAやiDeCoを含む資産運用のほか、公的保険などの社会保障や税制、クレジットカードなど、幅広い金融ジャンルで執筆。現在は主に大型株を中心に上場企業の記事を年100本ペースで連載。
元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO&ファイナンス編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
