この記事はここがポイント
- オルカンは全世界株分散投資、S&P500は米国株集中投資が特徴
- S&P500は長期でオルカンを上回る実績も、米国市場集中は値動き拡大リスク
- 新NISA120万円一括投資のシミュレーションでは、評価額が約220万円台へ増加
新NISAが始まってから、オルカンやS&P500に積立投資を続けている人も多いのではないでしょうか。
足元では、米国の大型ハイテク株を中心に株式市場が堅調に推移し、2024年初めにまとまった資金を投じていた場合、評価額が大きく増えているケースもあります。
本記事では、オルカンとS&P500の特徴や組入上位銘柄、過去の運用成果を比較し、新NISA開始時点で120万円を一括投資していた場合の評価額も試算します。
「オルカン」と「S&P500」の特徴は?組入上位銘柄も比較
NISAの積立投資でよく比較されるのが、「オルカン」と「S&P500」です。
どちらも人気のインデックスファンドですが、投資対象や値動きの特徴は異なります。まずは、それぞれの基本を確認しましょう。
オルカン(全世界株式)の特徴
「オルカン」は、全世界の株式に分散投資するファンドです。
日本や米国、欧州、新興国など、幅広い国・地域の株式に投資できるため、1本で世界経済全体の成長を取り込めます。
長期で分散投資を続けたい人に向いた選択肢といえるでしょう。
S&P500の特徴
「S&P500」は、米国を代表する約500社で構成される株価指数です。
アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど、世界的な企業も多く含まれており、米国経済の成長を取り込みやすい点が特徴です。
過去の実績では高いリターンを出してきましたが、投資先は米国に集中しています。
米国株が好調なときは大きな成果が期待できる一方、米国市場が不調な局面では資産の値動きも大きくなりやすい点に注意が必要です。
上位銘柄の顔ぶれは似ている?オルカンとS&P500の組入上位銘柄を比較
オルカンとS&P500を比較する際は、投資対象の地域だけでなく、実際にどのような企業が上位に組み入れられているかも確認しておきたいポイントです。
まず、オルカンの組入上位10銘柄は以下のとおりです。
- NVIDIA CORP(アメリカ):4.9%
- APPLE INC(アメリカ):4.3%
- MICROSOFT CORP(アメリカ):2.9%
- AMAZON.COM INC(アメリカ):2.5%
- ALPHABET INC-CL A(アメリカ):2.1%
- ALPHABET INC-CL C(アメリカ):1.9%
- BROADCOM INC(アメリカ):1.8%
- TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾):1.7%
- META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ):1.3%
- TESLA INC(アメリカ):1.2%
一方、S&P500の組入上位10銘柄は以下のとおりです。
- NVIDIA CORP(アメリカ):7.9%
- APPLE INC(アメリカ):7.0%
- MICROSOFT CORP(アメリカ):4.8%
- AMAZON.COM INC(アメリカ):4.1%
- ALPHABET INC-CL A(アメリカ):3.5%
- BROADCOM INC(アメリカ):3.1%
- ALPHABET INC-CL C(アメリカ):2.7%
- META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ):2.1%
- TESLA INC(アメリカ):1.9%
- MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ):1.6%
上位銘柄を見ると、NVIDIA、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabetなど、大型ハイテク株が多く並んでいます。
そのため、オルカンとS&P500はまったく別の値動きをする商品というより、上位銘柄の顔ぶれには一定の共通点があるといえるでしょう。
ただし、違いもあります。
S&P500は米国株で構成されるため、組入上位銘柄もすべて米国企業です。NVIDIAが7.9%、Appleが7.0%を占めるなど、上位銘柄への集中度も高くなっています。
一方、オルカンは全世界株式に分散投資する商品です。上位には米国企業が多いものの、台湾のTSMCも含まれています。また、NVIDIAは4.9%、Appleは4.3%と、S&P500に比べると1銘柄あたりの比率はやや抑えられています。
つまり、上位銘柄の顔ぶれは似ているものの、米国株への集中度はS&P500のほうが高く、オルカンは米国以外の企業も一部取り込んでいる点が大きな違いです。
「オルカン」と「S&P500」過去の運用成果を比較!
「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとするファンドは複数ありますが、今回は三菱UFJアセットマネジメントが設定している以下の2本を比較します。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、日本を含む先進国や新興国の株式に幅広く投資するインデックスファンドです。
米国株の比率は高いものの、投資対象は米国だけに限られません。日本、欧州、新興国などにも分散している点が特徴です。
同ファンドの騰落率は、以下のとおりです。
【基準日:2026年7月1日】
- 1ヵ月:+1.27%
- 3ヵ月:+17.19%
- 6ヵ月:+14.53%
- 1年:+40.06%
- 3年:+93.42%
- 5年:+147.71%
- 設定来:+283.76%
設定来では+283.76%となっており、長期では大きく上昇しています。
直近1年でも+40.06%となっており、世界株式全体が堅調に推移してきたことがうかがえます。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績
一方の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に投資するインデックスファンドです。
投資対象は米国株に集中しているため、世界株式に分散するオルカンよりも、米国市場の影響を受けやすい特徴があります。
同ファンドの騰落率は、以下のとおりです。
【基準日:2026年7月1日】
- 1ヵ月:+1.06%
- 3ヵ月:+17.94%
- 6ヵ月:+13.66%
- 1年:+38.23%
- 3年:+96.13%
- 5年:+171.15%
- 設定来:+346.78%
設定来リターンは+346.78%となっており、オルカンを上回っています。
直近5年でもS&P500のリターンが高く、米国株式市場の強さが反映された結果といえるでしょう。
一方で、直近1年ではオルカンが+40.06%、S&P500が+38.23%と、オルカンがやや上回る結果となっています。また、直近6カ月でもオルカンがわずかに上回る一方、直近3カ月ではS&P500が上回るなど、期間によってパフォーマンスが入れ替わっています。
長期ではS&P500のリターンが目立ちますが、米国株に集中する分、米国市場が不調な局面では値動きが大きくなりやすい点に注意が必要です。
どちらが優れているかを一概に判断するのではなく、米国株に集中したいのか、世界全体に分散したいのかという視点で選ぶことが大切でしょう。
なお、上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
もし新NISA開始時点で120万円を一括投資していたら?
ここでは、新NISAが始まった2024年1月に、120万円を一括投資していた場合の評価額を試算します。
投資開始日は、2024年の初回基準価額が確認できる2024年1月4日とし、評価日は2026年7月1日とします。
オルカンの場合
オルカンの基準価額は、2024年1月4日時点で2万756円、2026年7月1日時点で3万8376円です。
この期間の騰落率は、以下のとおりです。
3万8376円 ÷ 2万756円 − 1 = 約+84.9%
120万円を一括投資していた場合の評価額は、以下のように試算できます。
120万円 × 1.849 = 約221万9000円
- 投資元本:120万円
- 騰落率:約+84.9%
- 現在の評価額(税引前):約221万9000円
- 増加額(概算):約+101万9000円
S&P500の場合
S&P500の基準価額は、2024年1月4日時点で2万4154円、2026年7月1日時点で4万4848円です。
この期間の騰落率は、以下のとおりです。
4万4848円 ÷ 2万4154円 − 1 = 約+85.7%
120万円を一括投資していた場合の評価額は、以下のように試算できます。
120万円 × 1.857 = 約222万8000円
- 投資元本:120万円
- 騰落率:約+85.7%
- 現在の評価額(税引前):約222万8000円
- 増加額(概算):約+102万8000円
新NISA開始時点に120万円を一括投資していた場合、2026年7月1日時点では、オルカン・S&P500ともに評価額は220万円台となる計算です。
この期間では、S&P500の評価額がオルカンをやや上回っています。ただし、その差は約9000円程度にとどまります。
どちらも大きく上昇した背景には、米国株を中心とする世界的な株式市場の上昇や、円安の影響があったと考えられます。
なお、上記は過去の基準価額をもとにした概算です。実際の投資成果は、購入日、約定日、為替、売買タイミングなどによって変わります。また、過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。
まとめ
オルカンとS&P500は、どちらもNISAの積立投資で人気の高い選択肢です。
上位銘柄にはNVIDIAやApple、Microsoftなど共通する大型ハイテク株が多く含まれていますが、投資対象の広がりや米国株への集中度には違いがあります。
過去の運用実績では、長期でS&P500がオルカンを上回る場面もありました。一方で、米国市場に集中する分、米国株が不調な局面では値動きが大きくなりやすい点に注意が必要です。
どちらを選ぶかは、リターンの高さだけで判断するものではありません。
米国の成長に期待して集中投資したいのか、世界全体に分散しながら長期で資産形成したいのか、自分の考え方に合う商品を選びましょう。
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証券会社出身。約8年間にわたり株式や投資信託、生命保険の販売に従事。現在はフリーライター兼個人投資家として活動中。FP2級や一種外務員の知識と自身の投資実務を活かし、マーケット動向を注視した金融記事を精力的に執筆している。
PROFILE
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)、生命保険募集人。証券会社で約8年間、株式や投資信託、生命保険等の販売に携わる。退職後はフリーライター兼個人投資家として活動。金融ジャンルの記事を中心に執筆しつつ、日々のマーケット動向も注視している。
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
PROFILE
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)保有。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて窓口業務およびリテール営業に従事。国内外株式の仲介をはじめ、国内外債券、投資信託、生命保険、住宅ローンなど幅広い金融商品の提案・販売を担当し、資産運用コンサルティングに携わる。全国表彰を多数受賞。
金融業界で培った知識と実務経験を生かし、株式会社モニクルリサーチ(旧:株式会社ナビゲータープラットフォーム)に入社。現在は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」編集部にて、記事の企画・執筆・編集・監修を担当している。
厚生労働省管轄の公的年金制度(老齢年金・障害年金・遺族年金)や社会保障をはじめ、資産運用、NISA、iDeCo、住宅ローン、カードローン、為替、株式投資など、お金に関する幅広いテーマについて、制度の仕組みや最新動向をわかりやすく解説。金融機関での実務経験と金融ライターとしての知見を生かした記事を多数執筆し、Yahoo!ニュース経済カテゴリではアクセスランキング1位を多数獲得している。

【おさえておきたい】「プラス85%」の裏側にある、見落としがちなポイント
2024年1月の新NISA開始時に一括投資をしていた場合、オルカンやS&P500の評価額は約1.8倍(約+85%)になったという試算を見ると、「やはり投資はすごい」と感じる方も多いでしょう。
確かに素晴らしい運用成績ですが、銀行で多くのお客様の資産運用をサポートしてきた経験からお伝えしたいのは、この結果には「株価の上昇」だけでなく、もう一つ大きな要因があるということです。
それが、「歴史的な円安」です。
オルカンやS&P500に連動する投資信託は、主に海外の株式に投資しています。そのため、運用成果は株価だけでなく、円と外貨の為替レートにも大きく左右されます。
2024年初頭から2026年にかけては、海外株式の上昇に加え、円安が進んだことで、日本の投資家にとっては「株高」と「円安」が同時に追い風となりました。その結果、円換算での評価額が大きく伸びたのです。
一方で、為替は円安だけでなく、円高に動くこともあります。
たとえ海外の株価がほとんど変わらなかったとしても、円高が進めば、日本円で見た資産価値は下がる可能性があります。
私が銀行で働いていた頃も、円高局面になると「評価額が急に減った」「投資は失敗だった」と不安になり、慌てて売却してしまう方を何度も見てきました。
もちろん、将来どのように為替や株価が動くかは誰にも分かりません。しかし、「プラス85%」という好成績には、株式市場の上昇だけでなく、円安という追い風も大きく影響していたことは理解しておくことが大切です。
長期投資では、株価が下落する時期や円高になる時期もあります。そうした値動きを想定したうえで、一時的な評価額の増減に慌てず、長期的な視点で資産形成を続けることが成功への近道といえるでしょう。