7月中旬に入り、夏のボーナスをきっかけに将来に向けた資産形成を意識し始めた方も多いのではないでしょうか。
実際、iDeCo公式サイトが公表した「最新iDeCo加入者数等について(令和8年4月)」によると、加入者数は約395万2000人に達しており、自助努力による備えへの関心が高まっています。
その背景の一つとして挙げられるのが、日本人の「平均寿命の延伸(人生100年時代)」です。
医療の進歩などに伴って老後生活が長期化する傾向にあり、これまで以上に中長期的な視点での資金計画が注目されるようになりました。
私はかつて銀行員として、若年層から富裕層まで幅広いお客様のライフプランニングをお手伝いしてまいりました。
その経験から実感しているのは、資産形成においては、収入の多寡にかかわらず「日々の家計管理の工夫」が大切な要素の一つになるということです。
また、家計簿のやりくりや貯蓄のペースを掴みづらいと感じていらっしゃる方には、いくつかの共通する傾向が見られることがあります。
本記事で解説する内容
- 平均寿命の推移
- 貯蓄額の現状
- 貯蓄の目安
- 習慣の見直し
- これからの備え
元銀行員の視点から、公的データを交えてこれからの暮らしに向けたヒントを分かりやすく解説します。
平均寿命の推移「男性・女性」2001年からどれくらい延びた?
健康寿命と平均寿命の推移(男女別)
2026年7月に内閣府が公表した「男女共同参画白書」によると、平均寿命は2001年から男女ともに延びている傾向にあります。
- 2001年の平均寿命:男性78.07歳・女性84.93歳
- 2022年の平均寿命:男性81.05歳・女性87.09歳
具体的には、2001年~2022年にかけて、男性は2.98歳・女性は2.16歳平均寿命が延びています。
仮に65歳で退職した場合、男性は16年・女性は20年近く平均余命があることになります。
老後は公的年金や貯蓄などで生計を立てる方が多いことが考えられますが、40歳代~60歳代の方の貯蓄事情はどのようになっているのでしょうか。
40歳代~60歳代の二人以上世帯「平均貯蓄額・中央値」はいくら?
金融経済教育推進機構が公表している「家計の金融行動に関する世論調査」を基に、40歳代から60歳代までの金融資産保有額を見ていきます。
※この調査における貯蓄額には、日常の入出金や引き落としに利用する普通預金の残高は含まれていません。
※また、貯蓄額には将来への備えとしての預貯金に加え、投資信託、株式、債券、金銭信託、個人年金保険、生命保険、損害保険なども含まれます。
二人以上世帯の金融資産保有額:年代別の平均と中央値
次に、二人以上世帯の貯蓄額を見ていきましょう。
表2.【二人以上世帯】20歳代~70歳代の貯蓄額
二人以上世帯の貯蓄額(20歳代~60歳代)
- 20歳代:平均値525万円・中央値125万円
- 30歳代:平均値1096万円・中央値311万円
- 40歳代:平均値1486万円・中央値500万円
- 50歳代:平均値1908万円・中央値700万円
- 60歳代:平均値2683万円・中央値1400万円
平均値は、一部の富裕層の資産額によって大きく引き上げられる傾向があるため、より実態に近い数値を把握するには中央値も参考にすることが大切です。
これらのデータからは、働き盛りの世代であっても、必ずしも十分な資産形成ができているわけではない実情がうかがえます。
毎月の貯蓄はいくらが目安?収入の何割を貯めるべきか
では、毎月いくらくらいを貯蓄に充てるのが適切なのでしょうか。目安となるデータを確認してみましょう。
金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、金融資産を保有する二人以上世帯の場合、年代による顕著な差は見られず、年間手取り収入の17%~18%程度を預貯金に充てているようです。
- 40歳代:18%
- 50歳代:17%
- 60歳代:17%
※金融資産保有世帯のうち金融資産に振り分けた世帯
これらのデータから、手取り収入のおおよそ2割を貯蓄や資産形成に回すことが、一つの目安となりそうです。
まずはご自身の手取り収入の2割がいくらになるか計算し、その金額を毎月自動的に貯蓄や投資に回せる「先取り」の仕組みを作ることが大切です。
元銀行員が解説「貯蓄が苦手な人」に共通してみられる3つの習慣
貯蓄が計画通りに進まない方には、いくつかの共通した行動パターンが見受けられます。
ここでは、具体的な特徴と改善のヒントを解説します。
①キャッシュレス決済の「見えない支出」を管理できていない
かつては「小銭の無駄遣い」が貯蓄を妨げる一因とされていましたが、現代では気付きにくいデジタル決済での支出が家計を圧迫しやすくなっています。
- 月額制サービスの利用料
- コンビニエンスストアでのスマートフォン決済
- オンラインゲームなどへの課金
一度の支払いは少額でも、積み重なると家計にとって大きな負担になりかねません。
キャッシュレス決済は利便性が高い一方で、現金払いのような「お金を使っている」という感覚が薄れがちで、支出管理が疎かになる点に注意が必要です。
【改善の鍵】
まずは、毎月定額で引き落とされる固定費をリストアップし、支出の全体像を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
②資金を用途別に管理する習慣がない
貯蓄がなかなか増えない方は、「生活費」「貯蓄用資金」「万が一の備え」といった目的の違うお金を、一つの口座でまとめて管理している場合が少なくありません。
これでは口座残高が多く見えてしまい、本来は貯蓄に回すべきだった資金まで使ってしまう原因になります。
【改善の鍵】
お金は「日常的に使う」「将来のために貯める」「資産として増やす」という3つの役割に分けて管理するのが効果的です。
物理的に口座を分けるほか、家計簿アプリなどを活用して資金の用途を可視化し、給料日など収入があった時点ですぐに振り分ける習慣を身につけることをおすすめします。
③貯蓄の目的が曖昧で金額だけを追いかけている
「とりあえず100万円貯めよう」といった目標設定は、具体的で分かりやすいものの、途中でモチベーションを維持できずに挫折してしまうことがあります。
何のために貯蓄するのかという目的がはっきりしていないと、ストレスを感じた際などに、つい貯蓄に手をつけてしまうことにもなりかねません。
【改善の鍵】
例えば「3年後の自動車の車検費用として」「10年後に必要になる子どもの教育資金として」など、「いつまでに・何のために・いくら貯めるのか」を具体的に設定することが重要です。
平均寿命の推移から考える「これからの資金設計」と無理のない資産形成
日本人の平均寿命は延伸の推移をたどっており、いわゆる「人生100年時代」を見据えた長期的な資金設計の重要性がこれまで以上に高まっています。
セカンドライフの期間が長くなるからこそ、早い段階から中長期的な視点を持ち、無理のない形で資産形成に取り組むことが大切です。
この記事では、40歳代~60歳代の二人以上世帯「平均貯蓄額・中央値」や、元銀行員の視点から貯蓄のペースが思うように掴めないときに見直したい「3つの習慣」とその改善策について解説しました。
家計のやりくりに悩む背景には、支出の全体像が不透明であったり、意志の力だけに頼って無理な節約をしようとしたりする傾向が見られることがあります。
しかし、「支出の全体像を把握する」「お金を役割に分けて管理する」「お金を貯める目的を具体的に設定する」といった、蓄えが増やすための仕組みを生活の中に上手に取り入れることで、日々の暮らしに大きな負担をかけることなく資産形成を継続しやすくなります。
平均寿命が伸びていく傾向にあるこれからの時代を穏やかに過ごすために、まずはご自身の家計状況を客観的に見つめ直し、ライフステージに合った方法で資産形成の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級保有。地方銀行出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
