ファイナンシャルプランナーとして、これまで1500世帯以上のご家庭の家計相談に携わってきました。
ご相談のなかでよく話題にのぼるのが、「昇進してお給料は増えたはずなのに、なぜか手元にお金が残らない」というお悩みです。
役職が上がって収入が増えると、つい生活の水準も一緒に上がりがちで、気づけば支出も膨らんでいた……というのは、子育て世代にとても多いパターンなんですよね。
だからこそ私がお伝えしているのは、増えたぶんの一部を「先に取り分けて、強制的に積み立てる」という工夫です。
私自身も28歳のときに投資をスタートし、その後も自動で積み立てられる仕組みに何度も助けられました。
もちろん運用商品には値動きがあり、元本割れのリスクもありますから、無理のない範囲で選ぶことが大前提です。
年収の「額」そのものに一喜一憂するよりも、増えたお給料をどう活かすかを一緒に考える。それが、わが家の安心につながる第一歩だと感じています。
7月に入り、夏のボーナスが振り込まれた明細を見ながら、ほっと一息ついているご家庭も多いのではないでしょうか。
わが家でもこの時期はつい、「来年はどうなるかな」「今の働き方のままでいいのかな」と、お給料やキャリアの話題が増えてきます。
ここ数年は食料品や電気代の値上げが続き、ボーナスが増えても家計の余裕はなかなか実感しにくい、というのが正直なところですよね。
一方で「管理職は罰ゲーム」という言葉も広がり、あえて役職を目指さない若い世代も増えていると言われています。
そこでこの記事では、厚生労働省が公表した最新のデータをもとに、「大企業」「中企業」「小企業」それぞれの年齢階級別の平均賃金や、部長・課長・係長といった役職ごとの平均賃金を、わかりやすく見ていきます。
ご自身の年齢と勤め先の企業規模に当てはめながら、これからの働き方を考えるヒントにしてみてくださいね。
【中間管理職の平均年収】部長・課長・係長の月収と試算年収
はじめに、厚生労働省が公表した「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」のデータから、中間管理職にあたる「部長」「課長」「係長」の平均的な年収を見ていきます。
※本記事で用いる賃金とは、調査対象年の6月分における所定内給与額の平均を指します。これは実際に支払われた現金給与から時間外手当などを差し引いた金額で、所得税などが控除される前の額面給与です。
中間管理職の平均年収一覧表
まずは部長・課長・係長それぞれの役職における平均賃金と平均年齢から確認していきましょう。
「部長」「課長」「係長」の平均賃金
- 部長職
- 男女計:平均賃金 63万5800円/平均年齢 53.1歳
- 男性:平均賃金 64万2400円/平均年齢 53.1歳
- 女性:平均賃金 57万8300円/平均年齢 53.0歳
- 課長職
- 男女計:平均賃金 52万9200円/平均年齢 49.5歳
- 男性:平均賃金 54万1400円/平均年齢 49.5歳
- 女性:平均賃金 47万300円/平均年齢 49.4歳
- 係長職
- 男女計:平均賃金 39万9200円/平均年齢 45.4歳
- 男性:平均賃金 41万900円/平均年齢 45.3歳
- 女性:平均賃金 36万5700円/平均年齢 45.7歳
この月額賃金をもとに、男女計のデータから賞与を年間で4カ月分と仮定した平均年収を試算すると、次のような結果になります。
【ボーナス込み】試算した中間管理職の平均年収
- 部長職の平均年収:およそ1017万円
- 課長職の平均年収:およそ846万円
- 係長職の平均年収:およそ638万円
参考までに、役職に就いていない非役職者のデータも整理しておきます。
- 非役職者
- 男女計:平均賃金 31万500円/平均年齢 41.8歳
- 男性:平均賃金 33万2100円/平均年齢 42.1歳
- 女性:平均賃金 28万100円/平均年齢 41.3歳
同様に試算した非役職者の平均年収は、およそ504万円という結果になります。
国税庁が発表した「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の給与所得者全体の平均年収は478万円とされています。
この数値と並べてみると、中間管理職の年収水準は全体平均を上回るラインにあることが見て取れます。
さらに、「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」から役職者と非役職者の賃金格差を確かめると、部長の賃金は非役職者の約2.05倍、課長は約1.7倍、係長は約1.28倍という結果でした。
中間管理職は給与水準こそ高い位置にあるものの、その立場に見合った重い責任を背負っているのも事実です。
近年では「管理職は罰ゲーム」と呼ばれることもあるように、誰もが管理職を目指すわけではないという実情もうかがえます。
「大企業」「中企業」「小企業」で月給はどう違う?年齢階級別の平均賃金
続いて、企業規模別の平均賃金を整理していきます。
「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」では、企業規模を常用労働者の数で次のように区分しています。
- 大企業:常用労働者1000人以上
- 中企業:常用労働者100〜999人
- 小企業:常用労働者10〜99人
男女計の年齢計でみた平均賃金は、大企業38万5100円、中企業32万6200円、小企業30万5600円となっており、規模間で月額8万円近い差が確認できます。
ここからは、年齢階級ごとの平均賃金(男女計)を企業規模別に並べていきます。ご自身の年代と勤め先の規模に当てはめながら、現在地を確かめてみてください。
【大企業】年齢階級別の平均賃金(男女計)
- ~19歳:21万8400円
- 20~24歳:25万8400円
- 25~29歳:30万1700円
- 30~34歳:34万4600円
- 35~39歳:38万6300円
- 40~44歳:42万2000円
- 45~49歳:43万9300円
- 50~54歳:44万7600円
- 55~59歳:46万5900円
- 60~64歳:35万7700円
- 65~69歳:29万4600円
- 年齢計:38万5100円(平均年齢43.4歳/平均勤続年数14.1年)
【中企業】年齢階級別の平均賃金(男女計)
- ~19歳:20万2600円
- 20~24歳:23万7600円
- 25~29歳:27万600円
- 30~34歳:29万9400円
- 35~39歳:32万2300円
- 40~44歳:34万6100円
- 45~49歳:36万2100円
- 50~54歳:37万6000円
- 55~59歳:37万6700円
- 60~64歳:31万6200円
- 65~69歳:28万4600円
- 年齢計:32万6200円(平均年齢44.1歳/平均勤続年数12.4年)
【小企業】年齢階級別の平均賃金(男女計)
- ~19歳:20万1900円
- 20~24歳:22万6300円
- 25~29歳:25万8200円
- 30~34歳:28万6500円
- 35~39歳:30万5300円
- 40~44歳:31万8900円
- 45~49歳:33万円
- 50~54歳:33万6600円
- 55~59歳:33万5100円
- 60~64歳:31万5700円
- 65~69歳:28万1000円
- 年齢計:30万5600円(平均年齢46.0歳/平均勤続年数11.5年)
規模の差は年代を追うごとに広がっていく
20歳代後半の段階ですでに、大企業の「30万1700円」と小企業の「25万8200円」には月額で4万円以上の開きがあります。
これが50歳代後半まで進むと、大企業の「46万5900円」に対して小企業は「33万5100円」となり、月額の差はおよそ13万円にまで広がっていく構造です。
同じ年代であっても、勤め先の規模によってこれだけの差が積み重なるという事実は、キャリアや働き方を考えるうえで押さえておきたい視点です。
また男女別の年齢計を見ると、大企業は男性42万8000円・女性31万800円、中企業は男性35万6000円・女性28万100円、小企業は男性32万9600円・女性26万4000円となっており、規模が小さくなるほど男女ともに賃金水準が下がる傾向が読み取れます。
役職別の試算年収と並べると、部長クラスの「およそ1017万円」は、大企業の年齢計(38万5100円×12カ月=約462万円)を月額換算でも大きく上回る水準にあることがわかります。
つまり、賃金を引き上げるアプローチは「より大きな規模の企業へ移ること」と「役職に就くこと」の2軸に整理できる、ということです。
ご相談の現場でも、「収入を増やしたいけれど、いまの会社で役職を目指すべきか、それとも思いきって転職すべきか」と悩まれる子育て世代の方は本当に多いです。どちらが正解ということはなく、ご家庭のライフプランと相談しながら選んでいけたらいいですよね。
【現実】高収入の裏側で?中間管理職が抱える課題も
中間管理職は平均年収こそ高い水準にあるものの、その裏側で多くの困難に直面している人も少なくないようです。
「管理職は罰ゲーム」と呼ばれる背景には、責任と業務量の増加、上司と部下の板挟み、人材育成の難しさ、ハラスメント対応のリスクといった要素が挙げられます。
企業によって状況はさまざまですが、業務内容の見直しに加えて、社内制度や研修体制を整える必要があるケースもあるでしょう。
もちろん、管理職という役割には向き不向きもあります。
マネジメント業務よりも、特定の分野で専門性を深めるスペシャリストの道を望む人や、そちらに適性のある人もいます。
実際、ヒューマンホールディングス株式会社が実施した「40歳のキャリア実態と『なりたい自分』意識調査2025」の調査結果によると、「スペシャリスト志向」の人が74.0%となっています(「スペシャリスト19.5%」「どちらかといえばスペシャリスト54.5%」の合計値)。
管理職志向とスペシャリスト志向
主な理由は「管理職に向いていないから」「管理職になりたくないから」などが挙げられました。
収入を増やすという目的だけで役職を目指すのではなく、自身の適性とキャリアビジョンに合った道を選ぶ視点も大切です。
私自身も、お金の相談のなかでは収入の多さだけでなく、「無理なく続けられる働き方かどうか」を大切にしています。ご家族との時間や心のゆとりも含めて、わが家にとっての納得感を一緒に探していけたらと思います。
【まとめ】年収の現在地を知って、わが家の家計を整えよう
今回は、厚生労働省の最新データをもとに、中間管理職の平均年収と、企業規模別の年齢階級別の平均賃金を見てきました。
試算では部長職の平均年収がおよそ1017万円と、給与所得者全体の平均を大きく上回る一方で、役職には重い責任がついてまわることも見えてきましたね。
また同じ年代でも、大企業と小企業では50歳代後半で月額およそ13万円もの差が生まれるなど、勤め先の規模による違いも小さくありませんでした。
とはいえ、年収の多い少ないだけで働き方の幸せが決まるわけではありません。
大切なのは、いまの収入の現在地を正しく知り、そのうえで無理なく続けられる家計とキャリアを組み立てていくことだと思います。
まずはご自身の年代と企業規模の平均賃金を見比べて、わが家の家計を見直す小さなきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
役職や会社規模などにより、平均的な年収は異なります。今回挙がったように管理職の年収は高い傾向にあるものの、罰ゲームといわれる場合もあり、結局はお金だけでなく自身の適性や希望といったところが重要となります。
収入を上げる方法は昇進以外にもスペシャリストとして技術の向上や資格取得などを行ったり、転職や副業、また資産運用を行うなど多岐にわたり選択肢はあります。データはもとにしながらも自身の最適解をみつけていきましょう。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格、FP2級、TLC保有。明治安田生命保険会社、保険代理店出身。これまでに子育て世代の資産運用や老後資金準備など1500世帯超の相談実績を持つ。現在はIFAとして個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
