この記事はここがポイント
- キヤノンは配当性向40%めどの累進配当を基本方針とし、年間配当は2021年12月期100円から2025年12月期160円へ増配実績
- 今期年間配当予想は160円(配当性向40.1%)で、10月5日終値での予想配当利回りは3.46%
- 10月27日第3四半期決算では、期末配当予想の修正有無と通期業績見通しの確認が重要
9月末の配当・株主優待の権利取りが一巡し、株式市場は10月中旬から決算発表の季節に入ります。
3月期決算企業の中間決算が11月半ばにかけて集中し、業績予想や配当予想の修正など、投資判断の材料が一度に出そろう時期です。
情報が押し寄せる前に、手元を整理しておきたいところです。
その先、次に権利取りの動きが活発になるのが12月です。
海外で事業を展開する企業には、12月を決算期末とする会社も少なくありません。
キヤノン<7751>もその1社で、事業年度は1月1日から12月31日まで、6月30日を基準日とする中間配当と、12月31日を基準日とする期末配当の年2回、配当を出しています。
同社も10月27日に第3四半期決算の発表を控えています。
キヤノンの配当で押さえておきたいのが、同社が掲げる「累進配当」の方針です。
本記事では、決算発表の前に、累進配当の中身と直近5期の配当金の推移、株価と利回り、そして12月の権利付き最終日までを予習しておきましょう。
※記事中の株価はすべて終値です。
キヤノンは配当性向40%めどの「累進配当」が基本方針。今期予想の配当性向は40.1%
累進配当とは、配当を減らさず、維持または増やしていくことを基本とする考え方です。
キヤノンは、2026年1月15日に発表した5カ年の中長期経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅦ」(2026〜2030年)の財務戦略で、この累進配当を基本方針に据えました。
それまでは、配当について「配当性向50%を目途に」としていましたが、フェーズⅦでは、配当性向の目安を50%から40%に変えると同時に、配当額を下げないことを基本に据えた形です。
「統合報告書2026」によると、同社は累進配当を基本方針とし、配当性向(利益のうち配当に回す割合)は40%をめどに安定した配当を続けるとしています。
自己株式の取得も、財務状況や市場環境などに応じて機動的に行う方針で、フェーズⅦの期間中に株主還元へ1兆円以上を配分する計画です。
今期の配当についても、1月29日の2025年12月期決算短信から、「配当金額を下げることなく、配当性向40%を目途に」利益還元を行うと明記しています。7月27日の第2四半期決算短信でも同じ表現です。
今期予想の1株あたり当期純利益398円84銭をもとに計算すると、年160円の予想配当の配当性向は40.1%で、目安の40%とほぼ同じ水準です。なお、2025年12月期の配当性向(実績)は42.9%でした。
一方で、同社は、今後の業績動向や財務状況を踏まえて配当を適宜見直す、ともしています。
累進配当は配当を下げないことを基本とする方針であり、将来の配当額を約束するものではない点は押さえておきたいところです。
なお、有価証券報告書では、「配当を中心に安定的かつ積極的な利益還元」に取り組むことを基本方針としています。
株主資本に対する配当の割合を示すDOE(株主資本配当率)は、目標としては示されていません。決算短信に載っている実績は、2025年12月期で4.1%です。
キヤノンの株価は10月5日終値4,627円。予想配当利回りは3.46%
続いて、株価と参考指標の数字をみておきましょう。
キヤノンの10月5日の終値は4,627円でした。
この株価をもとにした指標は、PER(会社予想)が11.79倍、PBR(実績)が1.13倍、配当利回り(会社予想)が3.46%です。
2026年の年初来高値は2月9日につけた5,033円、年初来安値は5月7日につけた3,987円です(いずれも取引時間中の値)。
10月5日の終値4,627円は、年初来安値を640円上回り、年初来高値を406円下回る水準にあります。
キヤノンの年間チャート
ここからは、3.46%という利回りのもとになっている配当金そのものをみていきます。
キヤノンの配当金の推移、1株あたり年間配当金は2021年12月期の100円から2025年12月期は160円に
1株あたりの年間配当金は次のように動いてきました。いずれも中間配当と期末配当を合わせた金額です。
1株あたり年間配当金の推移
決算期:中間配当:期末配当:年間配当
- 2021年12月期:45円:55円:100円
- 2022年12月期:60円:60円:120円
- 2023年12月期:70円:70円:140円
- 2024年12月期:75円:80円:155円
- 2025年12月期:80円:80円:160円
- 2026年12月期(予想):80円:80円(予想):160円(予想)
2021年12月期の100円から、2025年12月期には160円まで増えています。
5年分を並べると、金額は60円増えました。
ただし、毎期同じ幅で増えてきたわけではなく、20円ずつ増えた期が2回続いたあと、直近2期の増え方は15円、5円でした。
この5期の間、年間配当金が前の期を下回った年はありません。
今期にあたる2026年12月期は、年間160円の予想です。
同社の2026年12月期第2四半期決算では、中間配当は80円で、期末配当も80円の予想とされています。
前期も中間・期末ともに80円だったので、今期の予想は中間・期末とも前期と同じ金額です。
なお、同社は7月27日に発表した第2四半期決算で、2026年12月期の通期業績予想を4月の第1四半期決算時点から引き上げ、売上高4兆8,000億円(前期比3.8%増)、営業利益4,650億円(同2.1%増)、税引前当期純利益4,920億円(同2.1%増)、純利益3,400億円(同2.4%増)としています。
配当金の推移をみるときは、年間の金額だけでなく、その中身にも目を向けたいところです。
年間配当金は、6月末を基準日とする中間配当と、12月末を基準日とする期末配当を足したものです。キヤノンの場合、2024年12月期は中間75円・期末80円と、期の途中で金額が変わっていました。
見落としやすいのが、今期の年160円のうち、金額が決まっているのは中間の80円だけという点です。
中間配当は8月25日から支払いが始まりましたが、期末の80円はあくまで予想で、決まるのは2027年3月の定時株主総会です。
100株を持っている場合、年160円の予想どおりなら受け取る配当金は年1万6,000円(税引前)ですが、このうち期末分の8,000円はまだ確定していません。
次の節目は、10月27日に予定されている第3四半期決算の発表です。
期末配当の予想が変わったかどうかは、決算短信の冒頭のサマリーにある「配当の状況」の表のすぐ下で確かめられます。
ここには「(注)直近に公表されている配当予想からの修正の有無」という注意書きがあり、7月27日の第2四半期決算短信では「無」となっていました。
これが「無」であれば、配当予想は前の四半期に示した金額(年160円)から変わっていません。「有」であれば予想が修正されたことを示しており、増配か減配かは表の金額で確認できます。
もっとも、見ておきたいのは配当の欄だけではありません。
同社は配当性向40%をめどにしているため、配当の原資となる利益の見通し、つまり通期の業績予想がどう変わったかもあわせて確認しておきたいところです。
減配のインパクトも
さかのぼると、配当金が減った時期もあります。
同社の「配当金」のページによると、2019年12月期の年間160円から、2020年12月期は年間80円と半分になりました。
2025年12月期の160円は、6期ぶりに2019年12月期と同じ水準に戻った金額です。
配当が業績や会社の判断で動くものであることは、この推移からも読み取れます。
ただ、高配当銘柄として知られる銘柄ほど、減配が発表されたときの株価への影響は大きくなりやすく、株価が大きく下落することもある点は押さえておきましょう。
配当利回りは、配当金が同じでも買う時の株価で変わります。
年160円の予想で試算すると、年初来高値の5,033円で買った場合の利回りは3.18%、年初来安値の3,987円なら4.01%です。
同じ1年のうちでも、0.8ポイントほどの開きがあります。
利回りが上がったのは配当が増えたからなのか、株価が下がったからなのか、2つを分けて見ておきたいところです。
裏を返せば、利回りの高さだけで買うと、株価の値下がりが配当を上回ることもあります。
仮に年初来高値の5,033円で買い、年初来安値の3,987円まで下がっていれば、1株あたりの値下がりは1,046円です。
年160円の配当の6年分を超える計算です。配当の金額や利回りだけで判断せず、株価の水準や業績とあわせて見ておく必要があります。
キヤノンの配当は6月30日と12月31日が基準日。受け取り方の変更は証券会社が窓口
配当を受け取れるのは、基準日の株主名簿に記載または記録されている株主です。
同社の中間配当の基準日は毎年6月30日です。
期末配当は12月31日を基準日とし、3月の定時株主総会で決まります。
今期の中間配当は、2026年8月25日から支払いが始まりました。
なお、実際には権利付き最終日までに株式を買い付ける必要がある点に注意が必要です。
証券会社の口座で株式を持っている場合、配当金の受け取り方法の変更は、口座を開設している証券会社が窓口です。
証券会社等の口座で管理されていない「特別口座」に記録された株式の場合は、株主名簿管理人のみずほ信託銀行 証券代行部が窓口になります。
まだ受け取っていない配当金(未払配当金)の支払いについても、みずほ信託銀行 証券代行部が窓口とされています。
配当金領収証と引き換えで受け取っている株主に向けては、口座振込制度の案内も用意されています。
キヤノンの期末配当の基準日は12月31日。2026年12月の権利付き最終日は12月28日
では、期末配当を受け取るには、いつまでに株式を持っていればよいのでしょうか。
期末配当は、支払いが決まった場合に、12月31日の株主名簿に載っている株主に支払われます。
2026年12月の権利付き最終日は12月28日(月)です。
12月31日(木)は取引所の休業日のため、受け渡しを12月30日(水)までに済ませる必要があり、そこから2営業日さかのぼった日が権利付き最終日になります。
また、期末配当を受け取れるのは、同社が期末配当の支払いを決めた場合です。
今期の期末80円はあくまで予想で、決まった金額は決算の発表で確かめられます。
記者コメント
キヤノンは配当性向40%をめどとした累進配当を基本方針に掲げ、今期予想の配当性向も40.1%と、その目安に沿った水準です。
直近5期は年間配当金が前の期を下回ることなく、100円から160円まで増えてきました。
一方で、累進配当はあくまで方針であり、配当の原資は日々の事業が生み出す利益です。
10月27日の第3四半期決算では、配当予想の修正の有無とあわせて、通期の業績見通しにも目を向けておきたいところです。
12月の権利取りの動きが活発になる前に、配当と業績の両面から情報を整理しておくとよいでしょう。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
