ディスコ<6146>の源流は砥石メーカー。切る、削る、磨くが営業利益率42%を生んだ構図
JHVEPhoto/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
19:05
ディスコ<6146>の源流は砥石メーカー。切る、削る、磨くが営業利益率42%を生んだ構図
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この記事はここがポイント

  • ディスコは砥石製造が源流。「切る・削る・磨く」技術と消耗品で、営業利益率42.3%の高収益
  • 精密加工装置と消耗品の二層モデルが強み。消耗品が収益安定に貢献する仕組み
  • 売上・利益は順調に成長。売上総利益率70.1%と、高い水準を維持する堅調な財務

半導体製造装置メーカー。ディスコ<6146>を一言で表すなら、たいていはそうなる。私自身、長らくその整理で済ませてきた。ところが会社の沿革をさかのぼると、出発点はまるで違う場所にある。工業用砥石だ。しかもその出自は、過去の話として片づけられていない。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

社名が示すのは半導体ではない。出発点にあった工業用砥石

有価証券報告書の沿革には、1937年5月に「工業用砥石を製造、販売する目的で第一製砥所」を個人営業として創業した、と記されている。

会社の名は第一製砥所。読んで字のごとく、砥石を製造する所である。1940年に有限会社、1958年に株式会社へと形を変えても、この社名はそのまま残った。

「株式会社ディスコ」への商号変更は1977年4月のことだ。創業から実に40年後である。つまり投資家がいま覚えている社名は、この会社の歴史の後半にしか存在しない。

興味深いのは海外拠点の名前だ。1969年に米国の販売拠点として設立された会社は、当初 DISCO ABRASIVE SYSTEMS という名を持っていた。Abrasive は研磨材を指す語である。

社名から半導体を連想するのは自然だろう。ただ、その社名がついた経緯まで含めて眺めると、この会社が自分をどう規定してきたかが透けて見える。削るための材料を売る会社、である。

切る、削る、磨く。三つの動作が装置と消耗品の二階建てになった

砥石屋が半導体装置メーカーに化けた、という語り方は正確ではない。沿革を並べていくと、化けたのではなく同じ技術を横へ伸ばしただけだと分かる。

1970年9月、精密切断装置の開発と販売を開始する。切る、である。続く1975年2月には精密ダイヤモンド工具へ進出し、同じ月に半導体用ダイシングソーを世に出した。

1980年1月には精密平面研削装置。削る、である。2002年8月にレーザソー、2003年11月には全自動グラインダ/ポリッシャ装置が加わった。磨く、が揃ったのはこの時期だ。

切る、削る、磨く。砥石という一点から出た加工の三動作が、そのまま製品ラインの背骨になっている。

重要なのは、装置だけを売る会社になったわけではないという点である。2027年3月期1Qの決算短信で、会社は事業を二層で説明している。精密加工装置の出荷と、「消耗品である精密加工ツール」の出荷だ。

会社によれば、装置の出荷は高性能半導体向けの高付加価値製品を中心に好調に推移した。消耗品のツールについては、顧客の設備稼働率等に連動して高水準で推移したという。

この二層構造が、砥石の直系にあたる。装置は設備投資が決まったときにしか売れないが、消耗品は現場が動いているあいだ減り続け、そして補充される。

半導体製造装置と聞けば、投資サイクルに振り回される業種というイメージが先に立つ。だが減るものを売る層を内側に抱えていれば、収益の性質はそのイメージから少しずれてくる。

数値にも痕跡が出ている。売上総利益率は2022年3月期の60.7%から2026年3月期の70.1%へ、5期かけて10ポイント近く切り上がった。

機械業種の売上総利益率の中央値は29.6%である。同じ業種区分に並んでいる会社と比べて、原価の構造がまるで違う。

5期の伸びも並べておきたい。2022年3月期の売上高2,537億円・営業利益915億円が、2026年3月期には売上高4,368億円・営業利益1,849億円になった。売上が1.7倍になるあいだに、営業利益は2倍である。

営業利益率は同じ期間に36.1%から42.3%へ上がった。機械業種の営業利益率の中央値は7.9%だから、水準そのものが別の階層にある。

従業員数は4,258人から5,547人へ増えた。人を増やしながら利益率を上げているのだから、単価の上がる何かを内側に抱えているとみるのが自然だろう。

棚卸資産の重さも、この会社の性格を語っている。2026年3月期末の棚卸資産は1,413億円。研削と研磨の現物を作って届ける会社であることが、資産の側から見えてくる。

2027年3月期1Qの増益は何から来たのか

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近の2027年3月期1Qは、売上高1,143億円で前年同期比+27.1%、営業利益490億円で同+42.2%だった。経常利益は484億円で同+42.5%、純利益は342億円で同+44.0%である。

営業利益率は42.9%。売上の伸びを上回る速さで利益が増えている。

なぜ増えたのか。会社の説明によると、生成AIの需要拡大を背景にデータセンタ向け投資が継続した。先端ロジックやHBM(高帯域幅メモリ)といった高性能半導体向けの需要は高水準で推移したという。

そのうえで、機械装置の検収が進んだことなどで売上高が増えた。為替の影響と高付加価値製品の増加により売上総利益率が上昇し、人件費や研究開発費といった販売管理費の増加を吸収して増益になった、というのが会社の整理である。

前期にあたる2026年3月期通期も、売上高4,368億円で前期比+11.1%、営業利益1,849億円で同+10.9%と増収増益だった。出荷額と売上高はともに6期連続で過去最高を更新している。

もっとも、同じ期の会社説明は用途別の強弱にも触れている。PC・スマートフォン向けの需要には緩やかな回復が見られた一方、パワー半導体向けはEV需要の鈍化を背景に低調だったという。

生成AI一色で伸びているわけではない、ということだ。用途の入れ替わりを吸収しながら、削る対象そのものは増え続けている。そう読み取れる。

研究開発費は2026年3月期に341億円まで積み上がった。売上高の8%弱を毎期投じ続けている会社が、装置の値段だけで戦っているとは考えにくい。

資金の使い方にも、この局面の特徴が出ている。2026年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは1,335億円だが、投資活動によるキャッシュ・フローは▲1,357億円で、差し引きはわずかにマイナスへ振れた。

有形固定資産は2,232億円まで膨らみ、うち建設仮勘定が338億円、土地が654億円を占める。稼いだ現金を、削る現場そのものを増やす方向へ回している時期だと読める。

株価は8万円台から5万円台へ。市場はこの構造をどう見ているか

株価の動きは、業績の滑らかさとはまるで別物だった。2025年9月末の終値は4万6千円台で、11月末には4万3千円台まで下押しした。昨秋以降の月末終値では、これが最も低い水準である。

年明けから様子が変わる。2026年1月末に6万6千円台、2月末には7万5千円台へと大きく切り上がり、6月末には8万1千円台をつけた。

ところが7月末には5万8千円台まで大きく下落した。2026年8月時点の終値は6万2千円台で、いくぶん戻した水準にある。

1Qの増益率が前期より加速していることと、7月末の下押しが同じ時期に並んでいる。決算そのものが嫌気されたと断じるのは早計だろう。半導体関連全体の地合いや、バリュエーションの調整が意識された可能性もある。株価が動いた本当の理由は、外から断定できない。

財務の側は静かだ。2026年3月期末の自己資本比率は78.9%で、総資産7,434億円に対して非流動負債はわずか8億円にとどまる。それでもROE(自己資本利益率)は25.1%と、機械業種の中央値7.8%を大きく上回る。

負債をほとんど使わずにこの資本効率を出しているのは見事だ。ただ、負債を使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点として残る。

筆者コメント

売上総利益率の切り上がりと、棚卸資産の重さを並べて見ると、この会社の性格が浮き上がってくる。

利益率だけを取り出せば、設備をほとんど持たない情報サービス業のような数字だ。一方で在庫の厚みは、現物を削り、磨いて出荷する製造業そのものである。この二つが同居している会社は、そう多くない。

同居を可能にしているのが消耗品の層ではないだろうか。装置の受注が途切れても、すでに現場に据え付けられた装置の刃は減っていく。減れば買い直される。砥石屋から始まった会社が最後まで手放さなかったのは、この「減るものを売る」位置だったと考えられる。

にもかかわらず、この構造は外から見えにくい。報道の焦点は装置の出荷額に集まり、消耗品は独立した数字として切り出されないためだ。半導体製造装置メーカーという一語で片づけたくなる誘惑は、そこから生まれている。

決算を読むときは、装置が何台売れたかではなく、現場がどれだけ動いているかを映す部分に目を向けてほしい。そちらのほうが、この会社の地力に近いはずだ。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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