三菱電機<6503>、2027年3月期1Qは営業利益+25%。株価6割上昇は何を映すのか
Alexander Tolstykh/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
18:30
三菱電機<6503>、2027年3月期1Qは営業利益+25%。株価6割上昇は何を映すのか
Alexander Tolstykh/Shutterstock.com

この記事はここがポイント

  • 株価が昨秋から6割上昇、2026年3月期ROE9.7%で業界平均超の水準。
  • 2027年3月期1Qは売上+14.0%・営業利益+24.6%達成、多角化ポートフォリオが牽引。
  • 会計恩恵後の利益持続と資本効率改善継続が、今後の課題。

総合電機と聞くと、幅広い事業を抱えるぶん一つひとつの稼ぐ力は薄まる、というイメージが今もついて回る。多角化はディスカウント要因として株価に響く、という理屈だ。

だが三菱電機<6503>の直近を眺めると、その一般的な見方からは少しずつ外れているのかもしれない。株価は昨秋から水準を切り上げ、資本効率も静かに改善してきた。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

昨秋から水準を切り上げた株価が映すもの

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価は2025年9月末に3,800円台だった。そこから昨秋以降、水準をはっきりと切り上げていく。

2026年に入ると一段高となり、2026年5月末には6,500円台をつけた。昨秋以降の月末終値では、最も高い水準である。

その後はやや上げ幅を吐き出し、6,000円前後での高止まりが続いた。2026年8月時点の終値も6,000円台にある。

1年足らずで6割近い上昇であり、値動きとしては大きい部類に入る。背景には地合いの追い風もあったとみられる。日本株全体が水準を切り上げるなか、大型の総合電機にも資金が向かった可能性がある。

2027年3月期1Qの増収増益はどこから来たのか

まず直近の数字を押さえたい。2027年3月期1Qの売上収益(IFRS)は1兆4,971億円で、前年同期比+14.0%となった。

営業利益は1,395億円で+24.6%、親会社株主に帰属する当期利益は1,098億円で+20.8%。税引前利益も1,570億円と+26.6%で、増収増益で着地している。

利益の伸びには、会計上の追い風も含まれる。会社の説明によると、有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法へ変更し、これにより営業利益と税引前利益がそれぞれ90億円押し上げられた。

会社は、事業構成の変動で価格水準の維持や安定的な設備稼働が見込まれるため、定額法が経済的実態をより適切に反映すると判断したとしている。

もっとも、方法変更による押し上げを除いても、営業利益は二桁の増益を保つ。実力ベースの伸びも確かにある。持分法による投資利益が144億円と前年の95億円から膨らんだことも、利益を底上げした。

1Qの当期利益は、通期予想の2割強に相当する。会社の通期予想は、売上収益6兆2,700億円(+6.4%)、当期利益4,950億円(+21.4%)。増益基調を見込む姿勢が、期初から示されている。

多角化ポートフォリオの分散効果が効いた1Q

三菱電機の稼ぐ力は、複数の事業に分散している。この分散が、今回の1Qではうまく噛み合った。

けん引役は、FA機器や自動車機器を抱えるインダストリー・モビリティだ。1Qの調整後営業利益は571億円と、前年同期の250億円から大きく伸びた。

パワー半導体などのセミコンダクター・デバイスも、162億円と前年の89億円から拡大している。一方で、デジタルイノベーションは小幅に後退した。

事業ごとに温度差があっても、全体では利益が伸びる。これが多角化ポートフォリオの分散効果であり、単一事業に依存しない設計の意義が数値として表れた1Qと読み取れる。

通期のセグメント構成を眺めると、その姿はより鮮明になる。2026年3月期は、売上構成比で最大のライフ(38.8%)が安定した収益を担った。社会インフラや電力を担うインフラも見逃せない。同期の売上は前年比+19.8%、営業利益は+73.0%と大きく伸びている。

セミコンダクター・デバイスは売上構成比こそ4.4%と小さいが、営業利益率は18.4%と全社で最も高い。規模の大きい事業と利益率の高い事業が併存する構造だ。

ROE9.7%が問いかける、多角化への評価

資本効率にも変化が出ている。ROE(自己資本利益率)は2026年3月期に9.7%まで切り上がった。

過去5期を振り返ると、2022年3月期の7.1%から着実に水準を上げてきた。電気機器業種の中央値である7.4%前後と比べても、上に位置する。

ここに、一つのズレが見えてくる。総合電機は多角化ゆえに評価が伸びにくい、という一般的な見方がある。いわゆるコングロマリット・ディスカウントの発想だ。

一方で、資本効率は改善し、株価も昨秋から大きく上昇した。株主への通算リターンで見ても、この5年間は市場平均を上回って推移してきた。多角化への市場の見方が、少しずつ変わりつつある局面とも読み取れる。両者は対立するというより、同時に成り立っている。

財務面では、自己資本比率は60%台と厚い。安全性という意味では心強い数字だ。

ただ、潤沢な自己資本をどこまで効率的に使えているかは、また別の論点でもある。負債をほとんど使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、今後も見ておきたいところだ。

筆者コメント

決算の数字と会計方針の変更、そしてセグメントの顔ぶれを重ねて見ると、今回の増益の中身が立体的に見えてくる。

一つは、償却方法の変更という会計上の追い風だ。もう一つは、FA機器やパワー半導体といった事業が実力で稼いだ利益である。この二つが同居しているのが、直近の三菱電機の姿だといえる。

私が着目したいのは、会計の追い風が一巡した後だ。方法変更による押し上げがなくなったとき、実力ベースの利益がどこまで伸び続けられるか。ここに、多角化の稼ぐ力が本物かどうかが表れる。

もう一点、資本効率の改善が続くかどうかも見どころだ。ROEはようやく二桁に手が届く手前にある。潤沢な自己資本をどう使うかという課題も残る。

総合電機は地味だという印象で片づけず、事業ごとの利益の伸びと資本効率の変化をセットで追う。そうした視点で見ていくのが有効だろう。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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