この記事はここがポイント
- 三菱UFJは2026年3月期に純利益2兆4,272億円と過去最高益を達成し、株価も上場来高値圏で推移
- 金利上昇、手数料増加、海外事業の寄与がその主な要因
- PBRは1.90倍に改善したが、収益が金利・景気・与信の循環的要因に左右される点
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の株価が上場来高値圏で推移しています。2026年7月24日の終値は3,754円。年初の2,516円(1月5日安値)から半年あまりで約1.5倍になりました。2026年3月期の純利益は2兆4,272億円と過去最高を更新し、翌期はさらに増益を見込みます。「銀行株は地味で低評価」というかつてのイメージは、なぜここまで変わったのでしょうか。銀行の決算は一般の会社と読み方が異なるため、まずその特殊性を押さえたうえで、業績と株価の関係を読み解きます。
過去最高益をけん引した3つの追い風
2026年3月期の連結業務粗利益は前期比23.3%増の5兆9,444億円、経常利益は27.7%増の3兆4,101億円、親会社株主に帰属する当期純利益は30.3%増の2兆4,272億円でした。いずれも大幅な増益です。
けん引役は大きく3つあります。第一に、日銀の金融正常化にともなう円金利の上昇です。銀行の本業利益である「資金利益」が貸出の利ざや改善で膨らみました。第二に、国内外の手数料収入(役務取引等利益)の増加。第三に、海外の買収案件の寄与と、持分法適用会社である米モルガン・スタンレーの好業績です。金利・手数料・海外という、収益源の異なる3つが同時に効いた決算でした。
銀行の決算は「普通の会社」と読み方が違う
ここで注意したいのが、銀行の決算書は一般の事業会社と用語も構造も異なる点です。銀行には「売上高」や「営業利益」という科目がありません。売上高にあたるのは経常収益で、本業の儲けは資金運用収益から資金調達費用を差し引いた「資金利益」で捉えます。その資金利益に手数料などを加えたものが業務粗利益で、銀行の稼ぐ力を示す出発点になります。
もう一つ、初めて見ると驚くのが自己資本比率です。三菱UFJの自己資本比率は約5.2%。一般の製造業なら債務超過が心配になる水準ですが、銀行では普通のことです。銀行は預金という形で巨額の資金を預かって運用するビジネスモデルのため、総資産約431兆円に対して純資産は約23.7兆円と、資産が自己資本の約18倍に膨らみます。健全性を測るのは、この会計上の比率ではなく、国際的な資本規制(BIS規制)にもとづく自己資本比率であり、両者はまったくの別物です。ここを混同すると銀行の財務を見誤ります。
株価はなぜ上場来高値まで買われたのか
では、株価はこの好決算をどう評価しているのでしょうか。銀行株が上昇する局面は、教科書的には「金利が上がるとき」です。金利上昇は利ざやの拡大を通じて資金利益を押し上げるため、市場は業績改善を先取りして銀行株を買い進めます。今回の上昇は、まさにこの経路に沿ったものです。
加えて、東京証券取引所が求めた「資本コストや株価を意識した経営」への対応、いわゆるPBR改革が背景にあります。三菱UFJは政策保有株式の削減や自社株買い・増配といった株主還元を進め、資本効率を高めてきました。その結果、株主資本利益率(ROE)は約11%まで上昇しています。一般に日本企業の株主資本コストは8%程度とされますが、それを上回るROEを稼げる状態になったことが、株価の水準を一段引き上げたと考えられます。
バリュエーション——PBR1倍割れを「卒業」した意味
株価3,754円をもとにすると、1株純資産(BPS)1,973円に対するPBR(株価純資産倍率)は約1.90倍です。かつて多くのメガバンクはPBR1倍割れ、つまり純資産よりも株価が安い状態が続いていました。それが今や純資産の約1.9倍まで評価されているわけで、市場の目線は明確に切り替わっています。
利益で見ると、会社予想の当期純利益2兆7,000億円(2027年3月期、前期比11.2%増)をもとにした1株利益は約237円、予想PER(株価収益率)は約16倍です。PBR = ROE × PER という関係で整理すると、ROEの改善とPERの切り上がりが同時に起きたことでPBRが1倍を大きく超えた、という構図が見えてきます。歴史的な低評価から抜け出した以上、単純な「純資産割れだから割安」という理屈はもう通用しません。
投資家はどう受け止めればよいか
明るい材料は株主還元です。会社は2027年3月期の年間配当を96円(前期は86円)と増配する計画で、予想配当利回りは約2.6%。金利上昇の追い風が続けば、資金利益の拡大余地はなお残ります。
一方で、注意すべき点もあります。金利が上昇局面から反転すれば利ざや改善のストーリーは弱まりますし、景気が悪化すれば貸し倒れに備える与信費用が増え、利益を圧迫します。リスクアセットの増加で自己資本比率に低下圧力がかかる面もあります。過去最高益と上場来高値という華やかな数字の裏で、銀行の収益が金利・景気・与信という循環的な要因に左右されやすいことは変わりません。決算の見出しだけで判断せず、利益の源泉が続くものかどうかを見極める姿勢が、これまで以上に問われる局面といえるでしょう。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。

金利上昇で遅れてやってきた巨人「メガバンク株」
国の債務規模への懸念もあり、日本の長期金利が上昇しています。
通常、金利が上昇すると株価は理屈上下落するものですが、珍しくその中で株価が上がる業種があります。その一つが銀行株です。
今回取り上げたMUFGは年初から値を上げ、株式市場が不安定な局面でもしっかりとした株価形成をしています。
これまでの銀行株というと「いけてないバリュー株」のイメージが強かっただけに、意外だという投資家も多いのではないでしょうか。
その背景にあるのは、日本の低金利によるものです。
その状況が変わった今再評価されている点と、MUFGの海外展開が花開いているのが今ということです。
メガバンク株はMUFG以外にもありますが、海外展開という点では、歴史的にもMUFGが頭一つ抜けています。
ハイテク株が軟調に展開する中で、バリュー株であった銀行株が、金利水準とともにどう展開していくかが注目ポイントとなります。