この記事はここがポイント
- 40・50歳代の貯蓄は平均と中央値に乖離、約2~3割が貯蓄ゼロの二極化。
- 65歳以上無職世帯は夫婦で月約4.2万円、単身で月約3万円の家計赤字。
- 老後資金は運用しながら計画的に取り崩す、資産寿命を延ばす「4%ルール」の活用。
本格的な夏を迎え、厳しい暑さが続く7月下旬。
夏のボーナスが支給され、少し家計にゆとりを感じつつも、日々の買い物のたびに長引く物価高に頭を悩ませている方は決して少なくないはずです。
総務省が公表した最新の消費者物価指数(2026年5月分)を見ても、総合指数は前年同月比で1.5%の上昇、天候による変動が大きい生鮮食品を除く総合指数でも1.4%の上昇となっており、物価上昇の波は依然として続いています。
食品から日用品、サービスに至るまで生活に身近な幅広い分野で値上げが起きており、家計への負担感は日に日に増しています。
私たち40歳代・50歳代は、収入がピークに向かう「働き盛り」の年代。
しかし同時に、日々の生活を楽しみながらも、ふと「自分たちの老後資金はどうなるのだろうか」と将来への備えについて真剣に考え始める時期でもあります。
今回は、金融メディア編集部でマネー情報を日々発信している50歳代の編集記者(証券外務員・相続診断士資格保有)である筆者が、同世代の皆様に向けて、最新の公的統計データから働き盛り世代の貯蓄事情をひも解きます。
さらに、厚生労働省が公表した最新の「国民生活基礎調査」から見えてくるリアルな生活意識や、インフレ時代における「資産寿命」を延ばすための実践的なアプローチについて、コラムを交えてお伝えします。
今回は、私たち働き盛り世代が直面するリアルな貯蓄事情と、インフレに負けない「資産防衛」の秘訣をお伝えします!
ご家族で暮らす方も、おひとりさまの暮らしを満喫している方も、これからの人生をより豊かにするためのヒントをお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
40歳代・50歳代の貯蓄事情《平均と中央値のギャップ》
まずは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」から、働き盛り世代の現在の貯蓄事情(金融資産保有額)を確認しましょう。
ここでは、一部の極端な高額資産に引っ張られやすい「平均値」だけでなく、より一般的な生活者の実態に近い「中央値」に注目することが重要です。
40歳代・50歳代「二人以上世帯」の金融資産保有額
【40歳代・二人以上世帯】
40歳代・二人以上世帯の金融資産保有額
- 平均:1486万円 / 中央値:500万円
- 金融資産非保有(貯蓄ゼロ):18.8%
【50歳代・二人以上世帯】
50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額
- 平均:1908万円 / 中央値:700万円
- 金融資産非保有(貯蓄ゼロ):18.2%
二人以上世帯では、40代・50代ともに平均値は1500万円~2000万円近い水準ですが、実態を表す中央値は500万円~700万円にとどまっています。
約2割の世帯が「貯蓄ゼロ」である一方で、3000万円以上の資産を保有する世帯も一定数存在しており、教育費や住宅ローンの有無などを背景として、世帯間の貯蓄額に「二極化」の傾向がはっきりと見られます。
40歳代・50歳代「単身世帯」の金融資産保有額
自分の趣味やこだわりに自由にお金や時間を使えるのが、単身世帯(おひとりさま)の大きな魅力です。
一方で、将来に向けた資金準備も自分自身の裁量でコントロールしていく必要があります。
【40歳代・単身世帯】
- 平均:859万円 / 中央値:100万円
- 金融資産非保有(貯蓄ゼロ):32.1%
【50歳代・単身世帯】
- 平均:999万円 / 中央値:120万円
- 金融資産非保有(貯蓄ゼロ):35.2%
単身世帯はライフスタイルの自由度が高い分、現在の生活や自己投資にしっかりとお金をかけている方が多いのかもしれません。
各年代ともに約3割が「貯蓄を持たない」という結果が出ています。
これは裏を返せば、現状の家計の「見える化」を行い、今のうちから少しずつでも資産形成の仕組みを作っていくことで、将来の安心を大きく育てていける伸びしろがあるとも言えそうですね。
日々の生活を充実させつつも、どこかのタイミングで「未来の自分への仕送り」を意識し始めることが、これからの自由な暮らしを守る鍵となるかもしれません。
最新データが示す「健康リスク」と介護への備え
私たちの多くにとって、「医療や介護に関する予期せぬ出費」は老後家計の最大の不安要素かもしれません。
最新の調査データを読み解くと、私たちが老後に直面する健康リスクのリアルな輪郭が見えてきます。
「まだ先のこと」と思わず、働き盛りの今から自分の体と向き合うことが、最強の資産防衛に繋がります。
介護が必要となる主な原因と「健康寿命」
厚生労働省が公表した最新の「2025年 国民生活基礎調査」では、支援や介護が必要となった主な原因について、興味深いデータが示されています。
同調査によると、要支援者・要介護者となった原因の割合(総数)は以下のようになっています。
- 認知症:16.7%
- 高齢による衰弱:15.6%
- 骨折・転倒:14.6%
- 脳血管疾患(脳卒中):12.5%
- 関節疾患:9.1%
このデータから読み取れるのは、脳卒中などの突発的な重病だけでなく、「骨折・転倒」や「関節疾患」「高齢による衰弱」といった、日々の生活習慣や運動機能の低下(フレイル・ロコモティブシンドローム)に起因するものが全体の多くを占めているという点。
足腰の衰えや転倒による骨折は、車椅子生活や寝たきりの引き金となりやすく、単身世帯の方にとっては、日常生活の自由度を大きく奪うリスクとなるでしょう。
つまり、40歳代・50歳代のうちから適度な運動を習慣化して健康維持につとめること自体が、将来の介護費用を抑えるための立派な「投資」とも言えそうですね。
働き盛りから意識したい「がん検診」の受診状況
また、同調査では各種がん検診の受診状況も報告されています。
40〜69歳における過去1年間の受診率を見ると、男性では「胃がん検診(48.8%)」「肺がん検診(55.2%)」「大腸がん検診(50.9%)」と、おおむね半数程度にとどまっています。
女性においても「胃がん検診(38.3%)」「肺がん検診(49.5%)」「大腸がん検診(46.2%)」となっており、半分近い方が受診していないという結果が浮き彫りになっています。
がんは早期発見・早期治療ができれば、身体への負担も少なく、治療費や休職に伴う収入減少のリスクを最小限に抑えることができる可能性もあります。
特に単身世帯の方や、共働きで多忙なご家庭は、つい自分の健康管理を後回しにしてしまいがちですが、定期的な検診は欠かさず受ける仕組みを作っておくことが大切です。
予期せぬ出費を防ぐためのマネー戦略
健康を維持する努力と並行して、万が一の事態に備えたマネー戦略も必要です。
高額な医療費がかかった場合は公的な「高額療養費制度」などで自己負担を軽減できますが、入院中の差額ベッド代や日用品費、その後の介護サービスの利用料など、公的保険ではカバーしきれない出費も多々あります。
だからこそ、次章で触れるような「資産寿命」を延ばす戦略が、私たちの安心を支える土台となるのです。
リタイア後の「赤字家計」と資産寿命を延ばす戦略
それでは、働き盛りを過ぎて実際にリタイアを迎えた後、私たちの生活費はどのくらいかかるのでしょうか。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」のデータから、65歳以上の無職世帯のリアルな家計収支を見てみましょう。
ここでは、夫婦世帯と単身世帯、それぞれの目安をご紹介します。
65歳以上の無職世帯の毎月の収支
【65歳以上・無職夫婦世帯】
65歳以上の夫婦のみの無職世帯
- 実収入:25万4395円(うち社会保障給付:22万8614円)
- 支出合計:29万6829円(消費支出:26万3979円、非消費支出:3万2850円)
- 毎月の不足額(赤字):約4万2000円
【65歳以上・単身無職世帯】
65歳以上の単身無職世帯
- 実収入:13万1456円(うち社会保障給付:12万0212円)
- 支出合計:16万1435円(消費支出:14万8445円、非消費支出:1万2990円)
- 毎月の不足額(赤字):約3万円
データからわかるように、夫婦世帯であっても単身世帯であっても、公的年金などの収入だけでは日々の生活費や税金・社会保険料をまかないきれず、毎月数万円を貯蓄から取り崩しているのが標準的なシニア世帯の姿です。
もし、リタイア後の生活が20年、30年と続けば、この不足額の累積は大きな金額になります。だからこそ、現役時代から計画的にまとまった資産を準備しておくことが求められるのです。
「デキュムレーション」と資産寿命を延ばす「4%ルール」
「老後に向けた資産形成は『目標額に到達したらゴール』というわけではありません。
近年、蓄えた資産をいかに長持ちさせるかという「資産寿命」を延ばす戦略(デキュムレーション)が重要視されています。
資産を長持ちさせる目安
その一つの目安として知られているのが「4%ルール」です。 これは、引退時の資産残高の4%を毎年の生活費の補填として引き出し、残りの資産は引き続き運用に回すという考え方です。
たとえば、2000万円の資産があれば、初年度は80万円(月額約6.6万円)を取り崩すことになります。
残りの資産を年利数%で手堅く運用できれば、資産の枯渇を大幅に遅らせることができます。
もちろん、日本のインフレ状況や個人の家計状況によって必要な取り崩し額は異なるため、このルールをそのまま鵜呑みにするのではなく、ご自身の状況に合わせてアレンジすることが大切です。
重要なのは、老後資金を「一気に使い切る」のではなく、「運用しながら少しずつ取り崩す」という視点を持つことです。
まとめ:未来の自分への仕送りを始めよう
40歳代・50歳代は、人生の折り返し地点であり、老後に向けた「資産形成の後半戦」でもあります。
日々の生活費のやりくりに追われがちですが、現状の家計を「見える化」し、少額からでも「先取り貯蓄」や積立投資の仕組みを作ることが、将来の不安を安心に変える確実な一歩となります。
公的年金をベースに自力で備え、インフレを乗り越えるための「運用」を取り入れ、リタイア後は計画的に「取り崩す」。
この3つの視点を持ち、他人の家計と比べるのではなく「自分自身のペース」で、無理なく前向きに資産づくりを進めていきましょう。
老後資金づくりは、目標額を貯めて完了ではなく、その後の「出口戦略」もセットで考える必要があります。
私自身も50代になり、様々なマネー情報を扱う中で、リタイア後の生活をよりリアルに想像するようになりました。
「まだ先」と思わず、NISAなども上手に活用しながら、自分らしいセカンドライフに向けた資産寿命を延ばすための第一歩を、今日から一緒に踏み出しましょう!
※投資には価格変動リスクがあり、元本割れが生じる可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
参考資料
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早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
PROFILE
【保有資格】 二種外務員資格(証券外務員二種)、相続診断士、認知症介助士、終活ガイド1級
【経歴】 早稲田大学第一文学部卒業。
二種外務員資格(証券外務員二種)を保有し、15年以上にわたる書籍校閲で培った「ファクトチェック力」を武器に、現在は株式会社モニクルリサーチLIMO編集部に所属、くらしとお金の経済メディア『LIMO』にてパーソナルファイナンス系記事の編集・執筆を担当。
厚生年金保険・国民年金、貯蓄、家計管理など暮らしに不可欠なテーマについて、厚生労働省・日本年金機構・総務省などの一次データをもとに読み解く分析記事を得意とする。
プライベートでは認知症の家族介護に直面し、ビジネスケアラーとして仕事と家庭の両立に葛藤した経験を持つ。大手人材派遣会社の採用管理部門での就業経験もあり、仕事と実生活を通じて「就業と将来設計の密接な関係」を痛感している。
長年の紙媒体で培った編集力に、一人の生活者としてのリアルな実体験を掛け合わせ、読者目線に立った信頼性の高い情報を発信。執筆記事はYahoo!ニュース「経済ランキング」で多数の1位を獲得している。
