カゴメ<2811>、2026年12月期上期は営業利益▲14.5%。通期予想の下方修正と国際事業の増収減益が示すもの
New Africa/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
18:30
カゴメ<2811>、2026年12月期上期は営業利益▲14.5%。通期予想の下方修正と国際事業の増収減益が示すもの
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この記事はここがポイント

  • カゴメ2026年12月期上期営業利益14.5%減、通期事業利益予想は40億円減の190億円。
  • 株価は2025年9月末以降1割弱下落、稼ぐ力の水準見直しが背景。
  • 国内価格改定後の数量減と販促費増、国際一次加工の価格下落が主な減益要因。

食品メーカーと聞くと、景気に左右されにくい堅い商売という印象が先に立つ。値上げが通れば利益も付いてくる、と考える人も多いだろう。だがカゴメ<2811>の直近の数字を並べると、その筋書きどおりには進んでいない。株価も2025年9月末以降、じわりと水準を切り下げてきた。何が効いているのか。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

上値が重いまま推移した株価。2025年9月末以降に描いた下向きの弧

出所:各種資料をもとに筆者作成

2025年9月末の終値は2,800円台後半だった。そこから10月末にかけて2,600円台まで下押しし、以後はしばらく狭いレンジでの推移が続いた。

年明けにいったん持ち直し、2026年2月末には2,900円に迫る水準まで戻している。だが、そこが折り返し点になった。

春以降は再び水準を切り下げ、5月末には2,500円台まで下げた。7月末は2,600円台、2026年8月時点の終値も2,600円台にとどまる。起点となる2025年9月末と比べると、1割弱の下落だ。

派手な急落があったわけではなく、上値が少しずつ削られていく値動きである。この形の株価は、単発の材料よりも、稼ぐ力の水準そのものが見直されている姿を映していることが多い。

増収なのに減益。2026年12月期上期を分けたもの

2026年12月期上期の売上収益(IFRS)は1,437億円で、前年同期比+3.7%となった。一方、営業利益は90億円で▲14.5%、親会社の所有者に帰属する中間利益は46億円で▲24.2%と、増収と減益が同居している。

会社が経常的な事業の実力を測る指標として用いる事業利益も、84億円で▲18.6%だった。

利益はなぜ縮んだのか。会社によると、国内加工食品事業では主要原材料である農産物の高値が続いたため一部製品の出荷価格を改定したが、改定後の販売数量が減少し、広告宣伝費や販売促進費の増加も重なって減収減益となった。値上げが数量を削り、その穴を埋めるための販促がさらに利益を削る、という順番である。

加えて会社は、通期の事業利益予想を230億円から190億円へ40億円引き下げた。中東情勢の悪化でグループ全体に約28億円の事業利益影響を見込むこと、下期に包材関連費用や原材料費、エネルギーコストが上昇する見通しであること、飲料の一部商品で価格改定後の数量回復が想定を下回っていることが理由に挙がっている。

売上収益予想は3,100億円のまま据え置かれている。売上は保てるが利益は保てない。修正の中身は、そう読める。

国際事業の「増収減益」はどこから来たのか

セグメントに分けると、構図はもう少し具体的になる。国際事業の上期売上収益は685億円で+11.9%と伸びた一方、事業利益は51億円で▲10.2%だった。

内訳は対照的だ。トマト他一次加工は売上収益306億円(+5.5%)に対し、事業利益は23億円で▲23.7%。会社はトマトペーストの世界的な需給緩和を受けて米国や欧州、豪州で販売価格を引き下げたとしており、円安による増収効果が価格下落を覆い隠した格好である。

対してトマト他二次加工は売上収益382億円(+18.4%)、事業利益27億円(+10.4%)と伸びた。2026年1月に取得した英国の食品ディストリビューターの連結効果に加え、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したという。取得対価は55億円、のれんは27億円を計上し、取得日以降の売上収益として80億円が積み上がっている。

原料に近い一次加工が市況に振られ、顧客に近い二次加工が付加価値で持ちこたえる。国際事業の増収減益は、逆向きの2つの力が同じセグメントの中で相殺し合った結果と読み取れる。

国内側も楽ではない。主力の飲料カテゴリーは売上収益389億円で▲1.5%、事業利益は27億円で▲10.7%と、価格改定の副作用が最も色濃く出た。

ピークからの巻き戻しと、食品らしくないバランスシート

時間軸を広げると、直近の減益は悪化というより巻き戻しに見える。2024年12月期は売上収益3,068億円、営業利益362億円、当期利益250億円、ROE(自己資本利益率)15.7%と突出した1年だった。

続く2025年12月期は売上収益2,942億円、営業利益226億円、当期利益148億円、ROEは7.9%に戻っている。トマト市況という外部要因が効く事業を抱える以上、単年のピークをそのまま実力と見なすのは危うい。

もっとも、業種の中で見れば上位にあるものは多い。食料品業種のROE中央値は6.6%、営業利益率の中央値は3.8%であり、カゴメの2025年12月期の営業利益率は7%台後半とこれを大きく上回る。

興味深いのは、その一方で財務の形が食品らしくない点だ。食料品業種の自己資本比率の中央値が60.8%であるのに対し、カゴメは50.7%。有利子負債は824億円あり、棚卸資産は2021年12月期の471億円から2025年12月期には1,194億円へ膨らんだ。在庫が現金に戻るまでの日数も143日から219日へ伸びている。

ディフェンシブという言葉から連想される軽い商売とは、ずいぶん様子が違う。原料となる農産物を海外の畑から抱え込む垂直統合は、強みであると同時に運転資本を太らせる。高い利益率と重い資産は、同じ事業構造の表と裏として同時に成り立っている。

株価が上値を切り下げてきた局面では、この資本の重さと利益水準の後退が同時に意識された可能性がある。

筆者コメント

上期の減益要因と通期修正の理由を並べると、外からの一撃で沈んだのではないことが見えてくる。価格改定の副作用、市況の下降、地政学、コスト高。どれも単独では致命傷ではないが、同時に効くと利益の層は薄くなる。

ここで効いてくるのが、在庫が現金に戻るまでの長さだ。仕入れから販売までの時間が長い商売では、原料価格が動いた瞬間ではなく、数四半期遅れて損益に出てくる。足元の数字は、昨年の畑と今年の値段が混ざり合った結果でもある。

だからこそ、この会社を四半期ごとの増減率だけで評価するのは向いていないと私は考える。見たいのは、価格改定後の数量がいつ戻るか。そして一次加工の市況が下げ止まったとき、利益率がどこまで戻るか。この2点だろう。

利益の絶対水準が下がる局面でも、業種の中での相対的な位置は保たれている。物差しを1本に絞らず、絶対水準と相対水準の両方を持ったまま次の四半期を眺めることをおすすめしたい。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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