清水建設<1803>、2027年3月期1Qは経常利益+201%。増益の中身と受注動向をどう読むか
Ground Picture_shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
18:30
清水建設<1803>、2027年3月期1Qは経常利益+201%。増益の中身と受注動向をどう読むか
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この記事はここがポイント

  • 経常利益・純利益の急増は、負ののれん計上や政策保有株式売却益による一時的要因
  • 売上高は増加も受注高は前年同期比35%減。厚い受注残が目先の売上を下支え
  • ROEは建設業中央値を超えるが、営業利益率は中央値を下回る本業収益性

決算の見出しに並ぶ増益率が大きいほど、その数字の中身まで見る手間は後回しになりがちだ。清水建設<1803>の2027年3月期1Qは、経常利益が前年同期の3倍に膨らんだ。もっとも株価は、昨秋の上昇から2026年初にかけて高値をつけたあと、足元では上げ幅を吐き出している。数字の勢いと株価の落ち着き。この二つのずれを一段深く見ていきたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

昨秋の上昇から一転、高値もみ合いに入った株価

出所:各種資料をもとに筆者作成

清水建設の株価は、2025年9月末に2,000円台前半だった。そこから水準を切り上げ、2026年2月末には3,400円台をつける場面もあった。昨秋以降の月末終値でみれば、この2月末が最も高い。

しかしその後は流れが変わる。3月末に2,700円台へ調整したのち、4月末には3,000円台へ戻す場面もあったが、初夏にかけては緩やかに下押しした。2026年7月末は2,300円台まで水準を下げている。2026年8月時点の直近終値は2,400円前後で、下げ止まりを探る動きにみえる。

株価が最も勢いづいた昨冬の局面と、このあと触れる決算の増益局面は、必ずしも重なっていない。数字の派手さと株価の反応がずれること自体は、相場ではしばしば起きる。だからこそ増益の中身を分けて読む価値がある。

経常利益3倍の主因は、本業ではなく一時的な要因だった

2027年3月期1Qは、売上高が前年同期比9.3%増の4,828億円、営業利益が同11.8%増の192億円となった。会社の説明によると、手持ちの大型工事が順調に進んで完成工事高が伸びたことに加え、工事採算の改善で完成工事総利益が増えたことが、増収増益を支えた。ここまでは本業の着実な前進だ。

だが経常利益は前年同期比201.0%増の556億円、純利益は同396.5%増の552億円と、桁の変わる伸びになった。この差はどこから来るのか。

会社によれば、経常利益には清和綜合建物を持分法適用関連会社としたことに伴う負ののれん相当額355億円が、持分法投資利益として計上されている。純利益の急増は、政策保有株式の売却に伴う投資有価証券売却益が前年から大きく膨らんだことが大きい。いずれも本業の稼ぐ力とは別の、一時的あるいは現金を伴わない利益だと読み取れる。実際、会社はこの負ののれんについて、現金の入りを伴わない連結決算上の利益であるとして、配当予想を据え置いている。

増収の裏側で、受注高は前年から3割超減った

建設会社の先行きを測るうえで、受注の動きは売上高より前を走る指標になる。清水建設の1Q(個別)の受注高は約4,047億円で、前年同期の約6,225億円から35.0%減少した。前年同期に国内民間の大型案件が集中していた反動が大きいと考えられる。

一方で、受注残にあたる次期繰越高は2兆6,663億円と、前年同期をやや上回る水準を保っている。すでに積み上がった手持ち工事が厚いため、目先の完成工事高はしばらく下支えされる公算が大きい。増収と受注減が同居する一見ちぐはぐな姿も、この受注残の厚みを踏まえると腑に落ちる。

受注は期ごとの大型案件の有無で振れやすい。単一四半期の受注減だけで先行きを悲観するのは早計だろう。海外受注が前年から増えている点も含め、数四半期ならした流れで見ていく姿勢が大切だ。

ROEは業種上位でも、営業利益率は中位に届かない

前期(2026年3月期通期)の実績を業種の物差しと重ねると、清水建設の姿は一様ではない。ROE(自己資本利益率)は13.8%で、建設業の中央値10.2%を上回る。自己資本を効率的に使えているように映る数値だ。

もっとも、本業の収益性を示す営業利益率は5.8%にとどまり、建設業の中央値7.1%には届かない。ROEの高さは、政策保有株式の売却益など本業の外側の利益にも支えられている面がある。「建設は増益で好調」という印象と、本業のマージンがなお業種平均に届かないという事実は、同時に成り立っている。

資材高と労務費上昇という逆風のなかで、工事採算を立て直してきた流れ自体は本物だと考えられる。ただ、資本効率の数値がどこまで本業の実力を映しているのかは、一時要因をならして見極めたい局面だ。

筆者コメント

見逃せないのは、いまの清水建設の利益が、政策保有株式の縮減という長期の宿題と表裏にある点だ。売却益が特別利益を押し上げ、純利益の伸びを大きく見せている。裏を返せば、この追い風は保有株を売り切るまでの期間限定の性格を帯びる。

株価が昨秋の上昇のあと高値圏で伸び悩んでいるのは、市場がこの利益の質をある程度見透かしているためではないだろうか。見出しの増益率よりも、本業の完成工事総利益がどれだけ積み上がるか。そして受注の波がならされたとき、どの水準の利益が残るか。ここに着眼して観察していきたい。

手元には売却で得た資金と厚い受注残がある。これを成長投資と株主還元にどう振り向けるのか。その配分の巧拙こそ、一時要因が剥落したあとの株価を左右する論点になると考えている。

参考資料

  • 清水建設株式会社2027年3月期 第1四半期決算短信

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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