村岸 理美
インフレがなければ、1億円はほぼ減らない
まずは「インフレがない場合」のシミュレーションから見ていきましょう。
毎月4万2000円の不足を老後資金から取り崩していくと、30年・35年でどれくらい減るのでしょうか。
- 30年間(65歳〜95歳)の取り崩し総額:4万2000円 × 12カ月 × 30年 = 約1512万円
- 35年間(65歳〜100歳)の取り崩し総額:4万2000円 × 12カ月 × 35年 = 約1764万円
100歳まで生きたとしても、1億円から取り崩す金額は約1764万円。残り約8200万円は手元に残る計算です。「1億円あれば老後は安泰」という言葉がリアルに感じられる数字ですね。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
「毎年2%のインフレ」が続いたら、家計はどう変わるか
近年、物価の上昇を実感している方は多いのではないでしょうか。
日本の年金制度には「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、物価が上昇しても年金の増加は抑制される設計になっています。
仮に物価が毎年2%上昇する一方、年金の増加が年0.5%程度にとどまった場合、毎月の赤字はどう変化するでしょうか。
- 65歳(スタート時):毎月の赤字 約4万2000円
- 75歳(10年後):毎月の赤字 約9万円(生活費の上昇が家計を圧迫し始める)
- 85歳(20年後):毎月の赤字 約16万円(当初の約3.8倍に)
- 95歳(30年後):毎月の赤字 約24万円(当初の約5.7倍に膨らむ)
65歳の時点では「月4万2000円の補填」で済んでいたはずが、95歳時点では毎月24万円近くを取り崩さなければならない計算です。
累計の取り崩し額:インフレあり・なしで比較
以下は、インフレがある場合とない場合で、老後資金の取り崩し総額がどれだけ変わるかを比較したものです。
【30年間(95歳まで)の取り崩し総額】
- インフレなし:約1512万円
- 毎年2%インフレ:約4700万円(約3.1倍に膨れ上がる)
【35年間(100歳まで)の取り崩し総額】
- インフレなし:約1764万円
- 毎年2%インフレ:約6300万円(資産の6割超が消える)
インフレが続いた場合、100歳までに取り崩す金額は約6300万円。
1億円の元手があっても、残りは3700万円になる計算です。
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
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神田 翔平
