元機関投資家が解説。米中間選挙で株価は上がる?最有力シナリオの罠
出所:イズミダイズム
元機関投資家が解説。米中間選挙で株価は上がる?最有力シナリオの罠
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この記事はここがポイント

  • 中間選挙後12か月のS&P500(米国の代表的な株価指数)は、1950年以降19回連続で上昇している
  • 予測市場で最有力とされる「上下院とも民主党」シナリオは、過去の平均リターンが+4.9%と低調
  • 投資家が11月3日の選挙結果で注目すべき分岐点は「上院」の議席争い

11月3日に迫るアメリカの中間選挙。大統領の任期折り返しに行われるこの選挙は、今後のアメリカの政策を左右する重要なイベントです。

株式市場には「中間選挙の後の1年間は株価が上がる」という強力なアノマリー(経験則)が存在します。過去19回すべてで上昇してきたこのアノマリーですが、今回の選挙情勢を政党の組み合わせ別の過去データに当てはめると、手放しでは喜べない数字が見えてきます。

この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏が過去のデータと政党の組み合わせ別シナリオを読み解き、プロの投資家ならではの視点で迫ります。

そもそも米中間選挙とは何か?

大統領の「通信簿」となる議会選挙

アメリカの中間選挙とは、大統領の4年の任期のちょうど中間(2年目)に行われる連邦議会の選挙です。下院の全435議席(任期2年)と、上院の100議席のうち約3分の1(任期6年)が改選されます。

現状は、トランプ大統領(共和党)のもと、上院・下院ともに共和党が過半数を占めています。中間選挙の結果によって大統領が代わることはありませんが、議会の多数派がどうなるかは今後の政策運営に直結します。

泉田氏はこの選挙の位置づけについて、政権の2年間の政策に対する評価が反映される選挙だと説明したうえで、こう付け加えます。

「通信簿が悪いからクビになるとか、変わっちゃうって話じゃなくて、単純に過去2年間の意見の反映がされるもの。何が変わるのかっていうので見ていくと、改選議席っていうので議会の中身が変わっていく」

つまり、アメリカの有権者がトランプ政権の2年間をどう評価しているかが、議会の議席数という形で表れるということです。

民主党優勢を示すデータと背景

では、足元の情勢はどうなっているのでしょうか。各種データを見ると、野党である民主党が勢いを増していることが分かります。

日本貿易振興機構(JETRO)が2026年10月1日に伝えた世論調査(エコノミスト/YouGov、9月29日発表)によると、投票する可能性が高い有権者に限った場合、民主党候補の支持が53%、共和党候補が38%と、民主党が15ポイントのリードを保っています。

さらに注目すべきは、選挙の行方を左右する無党派層の動向です。同じ調査では、無党派層のうち投票する可能性が高い有権者で、民主党支持が共和党支持を上回る差が、9月初旬(4〜8日)の調査の24ポイントから32ポイントに広がりました。

 

無党派層(投票する可能性が高い有権者)で広がる民主党支持の差

無党派層(投票する可能性が高い有権者)で広がる民主党支持の差
出所:日本貿易振興機構(JETRO)ビジネス短信(2026年10月1日、エコノミスト/YouGov調査)を基にイズミダイズム作成

泉田氏は、この背景に長引くインフレへの不満があると見ています。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、物価の上昇が続いており、アメリカではトラックなどに使うディーゼル燃料の小売価格が2026年9月に統計開始以来の最高値(1ガロンあたり6.529ドル)を記録しました。

泉田氏は、インフレになると株を持つ人の資産は増える一方、現金しか持たない人は実質的な購買力が下がり、格差が広がると指摘します。Reuters/Ipsosの調査(2026年9月17〜20日)では、トランプ大統領の支持率は32%、不支持率は66%で、同調査では1期目・2期目を通じて最低の水準です。

Pew Research Centerの調査(2026年7月)では、中間選挙の1票を「トランプ大統領支持の意思表示」と考える人は全体の22%、「反対の意思表示」と考える人は42%でした。共和党支持層に限ると支持の意思表示は44%、「トランプ氏は関係ない」が50%と割れています。泉田氏は、共和党の中にもトランプ氏を支持するMAGA(Make America Great Again)派と、そうでない人たちがいると解説します。

株価は上がる?中間選挙にまつわる3つのアノマリー

中間選挙後12か月は「19回連続で上昇」

このような政治状況のなか、株式市場はどう反応するのでしょうか。ここで注目されるのが「アノマリー」と呼ばれる市場の経験則です。

過去のデータでは、中間選挙の後の1年間は、米国の代表的な株価指数であるS&P500が上がりやすい傾向が見られます。

 

中間選挙後12か月のS&P500

中間選挙後12か月のS&P500

 

泉田氏は、このデータについてこう切り出します。

「これ、過去のデータひっくり返してきて、中間選挙後1年、S&P500がどう動いたのかっていうのをまとめてきたんですけども」

1950年から2022年までの19回の中間選挙すべてで、その後の12か月間にS&P500は上昇しています。平均の上昇率は+15.1%で、最も小さかった1986年でも+1.1%でした。共和党・民主党のどちらが勝ったかに関係なく、下落した回は一度もありません。

「ハロウィンに買え」とプレジデンシャルサイクル

ただし泉田氏は、この傾向は「中間選挙だから株が上がる」というより、別のアノマリーと時期が重なっているだけかもしれないと指摘します。

それが「株はハロウィン(10月末)に買え」と「Sell in May(5月に売れ)」という格言です。秋に株を買い、春に売る半年間のサイクルが有効だとする経験則で、中間選挙の投票日(11月3日)はハロウィンと時期が近いため、2つのアノマリーが重なって見えている可能性があります。

泉田氏は、この格言だけを信じるなら、という前提で次のように例えます。

「秋に仕込んで春に芽が出て刈り取って、あとは現金に寝かしてまた秋が来て仕込んで春に売るっていう、農業っぽい発想が一番儲かるかもしれない」

もう一つのアノマリーが「プレジデンシャルサイクル(大統領サイクル)」です。1950年から2025年までの暦年平均を見ると、大統領任期の4年間のうち、中間選挙の翌年である3年目のリターンが最も高く(+17.2%)、中間選挙の年である2年目が最も低い(+4.6%)というデータがあります。

今年はまさにその2年目にあたります。ただしS&P500の年初来の上昇率は+12.8%(10月2日時点)で、2年目の平均(+4.6%)をすでに上回っています。今年を「しんどい」と感じるとすれば、それは指数ではなく個別株の値動きの話と考えられます。過去のサイクルでは来年にあたる3年目の平均が最も高いものの、19年中2年は下落しており、平均どおりになる保証はありません。

泉田良輔の分析:最有力シナリオに潜む罠

「ねじれ」の方が株価は上がりやすい?

これまでのアノマリーだけを見れば、「中間選挙が終われば株価は上がるから買いだ」と結論づけたくなります。しかし、泉田氏はここで一歩踏み込み、政党の組み合わせ別の過去データから、今回の「最有力シナリオ」に潜む罠を提示します。

株式市場には「Gridlock is good(ねじれは良い)」という格言があります。大統領の政党と議会の多数派が異なる「ねじれ」(大統領と上下院が同じ党の場合は「一党支配」)になり、膠着状態の緊張感がある方が株は上がりやすい、という考え方です。

しかし、実際のデータを細かく分解すると、異なる景色が見えてきます。

 

政党の組み合わせ別 S&P500の平均上昇率(1950〜2025年・暦年)

政党の組み合わせ別 S&P500の平均上昇率(1950〜2025年・暦年)

 

実は、「ねじれ全体」の平均リターン(+9.0%)は、「一党支配」の平均(+10.5%)を下回っています。ねじれ状態が好成績を残しているのは、「民主党大統領で議会がねじれている場合(+16.6%)」など、一部の組み合わせに限られるのです。

今回の最有力シナリオ「上下院とも民主」はリターンが最低

では、今回の選挙で最も起こり得るシナリオはどれでしょうか。

未来の出来事の確率を取引する予測市場「Polymarket」のデータ(10月7日時点)を見ると、下院だけでなく上院も民主党が過半数を奪い、「上下院とも民主党」になる確率が約65%と最も高く見積もられています。

この「共和党大統領(トランプ氏)+上下院とも民主党」という組み合わせを過去のデータに当てはめるとどうなるでしょうか。

泉田氏は次のように指摘します。

「これ今度、共和党大統領で上院・下院とも民主だと4.9%なんで、これ上げ幅がちょっと少ない。今回これになっちゃうかもしれないけどね」

現在最も有力視されているシナリオは、該当する22年分の平均上昇率が+4.9%で、ここで比べた組み合わせの中で最も低い数字です。「中間選挙後は上がる」というアノマリーも、政党の組み合わせで分けてみると、最有力シナリオには上げ幅の小さい区分が当てはまるのです。

投資家が注目すべきポイントと今後の展望

分岐点は「上院」の議席争い

泉田氏が示したもう一つのシナリオと比べると、分かれ目は「上院」にあることが見えてきます。

予測市場では、主なシナリオとして「上院は共和党が維持し、下院だけ民主党になる」という確率も約28%存在します(共和党が上下院を維持するシナリオも約8%あります)。

「上院共和・下院民主」の組み合わせだった年は、過去の平均上昇率が+13.7%です。ただし該当するのは8年分だけで、標本は多くありません。泉田氏は、下院は全議席が改選されるため世論の流れが表れやすい一方、上院は約3分の1の入れ替えなので、引き続き共和党が過半数を取るという見方もあると説明します。

11月3日の結果で上院がどちらに転ぶかによって、当てはまる過去の平均が+4.9%と+13.7%に分かれます。投資家にとっての分岐点は上院の議席と考えられます。

アノマリーを過信せずファンダメンタルズを見る

とはいえ、これらの数字はあくまで過去の平均値であり、将来の株価上昇を保証するものではありません(※S&P500の騰落率は配当を含まない株価指数の値です)。

泉田氏も、アノマリーの限界について次のように釘を刺します。

「アノマリーって言うからにはやっぱり特異なパターンがあるの。アノマリーだけで投資判断できないけどね。やっぱりファンダメンタルズ見ないと自信持てないけど、過去こういうパターンでしたよ」

ファンダメンタルズとは、企業の業績や経済の実態といった、株価の土台となる要素のことです。

ファンダメンタルズの観点で懸念されるのが、AIやデータセンター関連企業への政策的逆風です。これまで共和党は、2025年税制法を通じて設備投資の即時全額経費化など、データセンター投資に有利な減税を進めてきました。

民主党議員からは、こうした優遇の見直しやAI企業への課税を求める案が出ています。中間選挙で議会が民主党優勢になり、さらに2年後の大統領選挙でも民主党が勝てば、こうした法案が通りやすくなると考えられます。実際、カリフォルニア州など民主党が強い地域では、AI規制の法制化が進みつつあります。

まとめ

「中間選挙の後は株が上がる」というアノマリーは確かに存在しますが、政党の組み合わせという一段深いレイヤーで分析すると、今回は手放しで楽観視できない状況が見えてきます。

泉田氏は、投資における視野の広さの重要性を次のように語ります。

「株やってるとさ、経済ばっかり目が行きがちじゃん。だけどよく言ったもんで、政治と経済って、経済ばっかり見ててもダメだし政治ばっかり見ててもダメなんだけど、これやっぱり両方バランス良く見ないと間違えちゃうし、今回のメッセージかな」

見るべきは、11月3日の結果で上院がどちらの党の過半数になるかです。上下院とも民主党なら過去の平均は+4.9%、上院を共和党が守れば+13.7%と、同じ「中間選挙後」でも当てはまる数字が大きく変わります。

一方で、ここで扱った数字はすべて過去の平均です。予測市場の確率は選挙までに変わり得ますし、政党の組み合わせごとの標本は8〜46年分しかなく、とくに上院共和・下院民主の+13.7%は8年分の平均です。また、議会の構成の変化がAIやデータセンターへの投資の勢いにどう影響するかという、ファンダメンタルズ側の論点は、この記事では詳しく扱っていません。アノマリーの数字だけで判断すると、その部分のリスクが見えないまま残ります。

参考資料

  • 日本貿易振興機構(JETRO)「米中間選挙で投票する可能性が高い有権者は民主党支持が15ポイントのリード、無党派層で拡大」(2026年10月1日)
  • Reuters/Ipsos 世論調査(2026年9月17〜20日)
  • Pew Research Center 調査データ
  • Polymarket 予測市場データ(2026年10月7日時点)
  • 米連邦選挙委員会(FEC)データ
  • 米連邦議会(house.gov / senate.gov)データ
  • 2025年税制法(OBBBA, P.L. 119-21)条文
  • 米連邦議会 民主党議員の法案(H.R.10448 等)
  • カリフォルニア州議会 法案データ(SB 947 / SB 53 等)
  • Yahoo Finance S&P500(^GSPC)過去データに基づく算出
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム」

※リンクは記事作成時点のものです。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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泉田良輔
LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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