サイゼリヤ<7581>、2026年8月期3Q累計は営業利益+26%。稼ぎ頭の交代が起きているのではないか
Ned Snowman/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
19:00
サイゼリヤ<7581>、2026年8月期3Q累計は営業利益+26%。稼ぎ頭の交代が起きているのではないか
Ned Snowman/Shutterstock.com

サイゼリヤ<7581>と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは値段ではないだろうか。安さの代名詞、という言葉が先に立つ。だが投資家の目で見たとき、この会社の利益がどこで生まれているかを言い当てられる人は、意外と少ないと思う。株価は昨秋から水準を大きく切り上げた。その裏側では、稼ぎ手の顔ぶれが静かに入れ替わりつつある。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

昨秋の4,900円台から7,800円台へ、株価が水準を入れ替えた道筋

出所:各種資料をもとに筆者作成

2025年9月末の終値は4,900円台だった。そこから11か月分の月末終値を並べると、上下しながらも水準そのものが切り上がっている。

年明けにかけては厚みを増し、2026年2月末には7,000円台まで乗せた。ところが3月末、4月末と続けて下押しし、4月末には5,000円台まで戻ってしまう。

反転は初夏だ。5月末、6月末と5,400円前後で足踏みしたあと、7月末は7,800円台。2025年9月末以降の月末終値では、これが最も高い。

2026年8月時点の終値は7,300円台。7月末からは上げ幅をやや吐き出しているが、昨秋の水準からはずいぶん離れた場所にいる。

株価がなぜこう動いたのかを、単一の材料で説明するのは無理がある。相場全体の地合いも需給も絡む。ただ、この間に決算の中身が変わったことは、事実として確かめられる。

増収率17.5%を上回る増益率25.6%は、どこから来たのか

2026年8月期3Q累計の売上高は2,213億円で前年同期比+17.5%。営業利益は133億円で+25.6%、経常利益は136億円で+24.9%となった。増収率を上回る増益率が出ている。

小売業の売上高成長率の中央値は3.9%だ。同じ物差しに乗せると、この+17.5%はまるで別の水準にある。既存店の積み上げと海外の出店が同時に効いているからこその伸び方だろう。

なぜ利益がここまで伸びたのか。会社によると、国内では店内組織の構築やメニュー施策、DXの活用といった取り組みの効果で、既存店の客数と客単価がともに増加傾向にある。QRコードと携帯端末を使う注文方式は、2025年12月末までに全店舗への導入を終えた。

海外も動いている。中国の広州で新工場が竣工し、武漢に1号店を開いた。ベトナムでも3号店を出している。一方で、円安による食材価格の上昇とエネルギー価格の上昇は続いており、消費者マインドの動向に留意が必要な経営環境だとしている。

もっとも、純利益は87億円で+11.8%と、営業利益の伸びには届いていない。税金等調整前の四半期純利益131億円に対し、法人税等は44億円。前年同期は税前112億円に対して34億円だった。利益の伸びよりも税負担の伸びが大きい。

通期予想は売上高2,970億円、営業利益182億円、純利益118億円で据え置かれている。1株当たり配当金の予想は35円だ。

3Q累計時点での営業利益の進捗率は73.2%になる。9か月経過時の目安である75%をわずかに下回る水準だ。会社計画がやや保守的に置かれていると読むこともできるが、外食は四半期ごとの季節性もあるため、進捗率だけで通期を語るのは早計だろう。

連結営業利益154億円のうち、101億円はアジアが稼いでいた

2025年8月期の通期実績を、セグメントごとに分けてみる。日本は売上高1,729億円に対して営業利益50億円で、利益率は2.9%。アジアは売上高838億円に対して営業利益101億円で、利益率は12.1%だった。

売上のおよそ3分の2は日本にある。ところが連結営業利益154億円のうち、3分の2近くをアジアが持っていく。看板は国内チェーンでも、利益の重心は海外にあった。

安さの代名詞という言い方から、薄利で回している会社という像を結びやすい。だが同じ期の粗利率は58.1%で、小売業の中央値48.9%を上回る。薄いのは仕入れの段階ではない。

薄くしているのはその先だ。粗利1,490億円に対し、人件費や地代を含む販売費及び一般管理費が1,335億円かかる。外食という業態の重さが、ここに集約されている。

それでも営業利益率6.0%は小売業中央値の3.7%を上回り、ROE(自己資本利益率)9.8%も中央値7.5%より高い。自己資本比率65.0%は中央値48.9%と比べて厚い。もっとも、負債をほとんど使わない財務が資本効率の面で最適かどうかは、また別の論点だ。

投資の重さもセグメントで違う。2025年8月期の設備投資は日本100億円に対してアジア205億円。減価償却費は日本39億円、アジア118億円だった。アジアの利益率の高さは、重い資産の上に成り立っている。

なぜアジアの利益率がここまで高いのか。人気の差だけで片づけるのは乱暴だろう。海外では自前の工場を構え、そこから店舗網へ供給する形を取ってきた。

食材の加工から店頭までを自社で握る度合いが高いほど、外部に払う分は減り、売上に対して残る利益は厚くなりやすい。2026年1月に広州で新工場が竣工したのも、その延長線上にある動きと読める。豪州セグメントが食材の製造等を担っているのも同じ構図だ。

日本の営業利益+120.7%、9か月で前期通期を超えた

2026年8月期3Q累計のセグメントを見ると、構図が動き始めている。日本は売上高1,498億円で+19.6%、セグメント利益は55億円で+120.7%。アジアは売上高715億円で+13.4%、セグメント利益は73億円で▲6.3%となった。豪州も売上高97億円で+19.5%、利益4億円と伸びている。

注目したいのは、日本の55億円という数字だ。前期通期の日本セグメント利益は50億円だった。9か月で前期の1年分を超えたことになる。

日本とアジアの利益差も縮んだ。前年同期は日本25億円に対しアジア77億円で、52億円の開きがあった。それが今期は17億円まで詰まっている。

アジアは店舗数の増加で売上を伸ばしながら、利益は前年を下回った。会社は増収の理由を新規出店の継続と店舗数の増加に置いている。減益の側については、出店に伴う先行費用や償却の重さが効いている可能性が高い。

数字の裏づけもある。3Q累計の減価償却費は139億円で、前年同期の118億円から増えた。有形固定資産も前期末の684億円から855億円へ膨らんでいる。投じた資本が売上に変わるまでには、どうしても時間がかかる。

貸借対照表の側も同じ方向を向いている。3Q末の総資産は2,077億円で、前期末から283億円増えた。会社によれば、主な要因は有形固定資産の増加170億円と現金及び預金の増加47億円だ。

負債も膨らんでいる。負債合計は763億円で前期末から140億円増え、内訳としては買掛金の増加25億円、リース債務の増加41億円が挙げられている。リース債務の伸びは、店舗を増やしている会社の姿がそのまま出た項目と言っていい。

純資産は1,313億円で142億円増え、自己資本比率は62.9%になった。前期末の65.0%からはわずかに下がっている。資産を厚くしながら利益を積むと、比率の側は一時的に下がる。数字が悪化したというより、投資が先に進んだ結果と読むほうが素直だろう。

5期で売上はほぼ2倍、増えたのは店舗だけではない

時間軸を広げると、この変化の意味がもう少しはっきりする。

2021年8月期の売上高は1,265億円で、営業損益は▲22億円の赤字だった。日本セグメントは2023年8月期まで営業赤字が続き、2024年8月期に27億円で黒字へ戻っている。2025年8月期は売上高2,567億円、営業利益154億円、純利益111億円。ROEは2.2%から9.8%まで戻った。

この4年で増えたのは店舗だけではない。連結の従業員数は4,134名から4,868名へ、臨時従業員は6,915名から11,853名へ増えている。

賃金も上がった。有価証券報告書に記載された平均年間給与は、2021年8月期の551万円から2025年8月期は699万円になっている。外食の費用構造の中心は人件費であり、ここが上がれば営業段階の利益は圧縮されやすい。

その圧力を受けながら営業利益率が6.0%まで戻ったのだから、単価と客数の両方が動いたと考えるのが自然だ。値上げだけでも、来店増だけでも、この形にはなりにくい。

資本の使い方も変わった。2025年8月期の営業キャッシュフローは262億円、設備投資は165億円。2021年8月期はそれぞれ121億円と76億円だった。稼いだ現金の使い道そのものが広がっている。

国内の立て直しが、最後に残っていたピースだったと読み取れる。

筆者コメント

なぜ、国内の利益がこのタイミングで戻ったのか。

値上げが通る局面だったから、という説明は分かりやすい。だが値上げは、どのチェーンにも等しく開かれていた選択肢だ。同じ環境で差がついたのなら、効いたのは値段ではなく、店の回し方の側だろう。

注文の仕組みを入れ替えるような手は、一度やり切れば効果が毎日の営業の中で積み上がっていく。派手さはないが、王道にして効く手だと思う。

ただし、この種の改善には天井がある。仕組みの入れ替えが一巡したあと、次に何を積むのか。そこが見えたときに、国内の利益がどこまで伸びる話なのかが決まる。

海外の店を数える視点と、国内の店を回す視点。この二つを別々に持って観察していくことをおすすめしたい。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
Google で優先するソースとして追加
石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

関連タグ