松屋フーズホールディングス<9887>、2027年3月期1Qは増収でも営業利益▲28%。成長投資とキャッシュフローの実像
slyellow/shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
20:30
松屋フーズホールディングス<9887>、2027年3月期1Qは増収でも営業利益▲28%。成長投資とキャッシュフローの実像
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この記事はここがポイント

  • 2027年3月期1Q、売上17.4%増もFLコスト増で営業利益28.0%減。
  • 大規模投資で2026年3月期借入金519億円、自己資本比率40.9%に低下。
  • 重い資本構造ながらROE7.3%、営業利益率4%台で平均並みの効率。

牛丼チェーンと聞けば、身軽で回転の速い商売を思い浮かべる人が多いだろう。1杯あたりの単価は低く、在庫も長くは持たない。だが松屋フーズホールディングス<9887>の貸借対照表をめくると、外食にしてはずいぶん重い。株価も昨秋以降、大きく水準を下げてきた。この重さは何を意味するのか。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

年明けの高い水準から反転。昨秋以降で1割半ば下げた株価

出所:各種資料をもとに筆者作成

2025年9月末の終値は6,000円台だった。10月末に5,800円台へ下げたあと、年末にかけては切り上がり、2026年1月末には6,600円台まで戻している。

反転はそこからだ。2月末に6,000円台へ押し戻されると、3月末は5,700円台、4月末は5,200円台と、月を追うごとに水準が下がっていった。

5月末と6月末はいずれも4,700円台。起点の2025年9月末と比べて1割半ばの下落となり、昨秋以降ではもっとも低い水準に沈んだ。7月末は5,000円台まで戻し、2026年8月時点の終値も5,000円台にある。

半年以上かけて一方向に水準を切り下げる値動きは、単発の悪材料というより、収益の伸び方に対する見方が入れ替わっていく過程を映していることが多い。実際、直近の決算はその見方の変化を裏づける中身だった。

売上+17.4%、営業利益▲28.0%。1Qを分けたFLコスト

2027年3月期1Qの売上高は506億円で前年同期比+17.4%と伸びた。一方、営業利益は6億円で▲28.0%、経常利益は8億円で▲25.7%と、増収と減益が同居している。

売上が伸びた理由を、会社は3つ挙げている。既存店売上高が前年同期比102.6%と前年を上回ったこと、買収した子会社2社と香港の現地法人の連結効果、そして前期以降の新規出店による寄与だ。

では、なぜ利益は減ったのか。会社によれば、エネルギー費や各種調達価格の上昇により原価率が前年同期の37.2%から37.4%へ上昇した。加えて、ベースアップや初任給の引き上げといった待遇改善など積極的な人的投資を実施したことで、販管費比率が60.6%から61.2%へ切り上がっている。

同社が重視する指標として挙げるFLコスト、つまり売上原価と人件費を足した金額の売上高比率は、67.2%から68.2%へ1ポイント上昇した。外食の損益は、この1ポイントが利益を丸ごと持っていく世界である。売上が1割台後半で伸びても営業利益が3割近く減るのは、その構造の帰結だ。

なお親会社株主に帰属する四半期純利益は7億円で+26.8%と増えている。固定資産売却益などの特別利益が前年同期からまとまって積み上がり、法人税等も軽くなったことが効いた形で、本業の減益とは別の話と切り分けて読みたい。

通期予想は売上高2,150億円、営業利益82億円、経常利益84億円、当期純利益38億円のまま据え置かれた。1Qの営業利益進捗は1割弱にとどまるが、外食は季節性が大きく、四半期の進捗率だけで通期の達成度を判定しないよう注意したい。

1,595店舗の裏側。投資が営業キャッシュフローを追い越した局面

利益の重さを理解するには、店舗網の広がり方を見るのが早い。1Qだけで牛めし業態13店舗を含む21店舗を新規出店し、香港の子会社を連結範囲に含めたことで既存店4店舗も加わった。撤退を差し引いた期末の店舗数は、フランチャイズ店を含め1,595店舗となっている。

業態別では牛めしが1,197店舗、とんかつが195店舗、ラーメンが137店舗と続く。これに加えて全面改装1店舗、一部改装72店舗の改装も同時に走らせている。

この出店ペースは資金の流れにそのまま出る。設備投資額は2023年3月期の76億円から、2024年3月期121億円、2025年3月期173億円、2026年3月期171億円へと積み上がってきた。

2026年3月期の営業キャッシュフローは153億円あったが、投資キャッシュフローは265億円の支出。差し引きは大きくマイナスで、その穴を財務キャッシュフローの256億円の収入が埋めている。

借入は当然膨らむ。長期借入金と1年内返済予定分を合わせた残高は、2022年3月期の190億円から2026年3月期には519億円へと2.7倍になった。自己資本比率も同じ期間に52.7%から40.9%へ低下している。2026年3月期には買収に伴うのれん74億円も計上された。

外食らしくない重さと、業種の中での立ち位置

小売業の自己資本比率の中央値は48.9%であり、松屋フーズホールディングスの40.9%はこれを下回る。総資産は1,407億円まで膨らみ、うち有形固定資産が594億円を占める。

薄利多売で身軽、というイメージが先に立つ業態だが、実際のバランスシートは土地と建物と厨房設備を抱え込んだ装置産業に近い。1店舗ずつ資本を沈めて、そのうえで1杯数百円を積み上げる商売なのだから、当然といえば当然である。

もっとも、稼ぐ力そのものが弱いわけではない。2026年3月期は売上高1,844億円、営業利益75億円と前期比+72.3%、当期純利益37億円と+72.6%で着地した。2022年3月期に営業損失▲42億円まで沈んだところからの回復と考えれば、水準の戻り方は速い。

業種比較でも見劣りしない。2026年3月期のROE(自己資本利益率)は7.3%で小売業の中央値7.4%とほぼ並び、営業利益率は4%台と中央値の3.6%を上回る。

つまりこの会社は、外食としては重い資本を抱えながら、業種平均並みの資本効率を維持している。重さと効率が同時に成立しているのは、店舗を増やすほど売上が積み上がる局面が続いてきたからだ。裏を返せば、FLコストの上昇が続いて1店舗あたりの利益が薄くなると、この構図はもっとも脆くなる。

筆者コメント

ここ数年の数字を並べると、この会社の稼ぎ方が変わりつつあるのが見えてくる。コロナ禍からの回復期は、既存店が戻るだけで利益が増えた。今はそこを抜け、増えた店舗と増えた借入を、値上げと生産性で支える段階に入っている。

投資が営業キャッシュフローを上回る期間が続くとき、投資家が確かめるべきは金額の大きさではない。沈めた資本が、何年でどれだけの利益を戻すのかという回収の速さのほうだ。出店と改装が同時に走っている今は、その答えがまだ損益計算書に出そろっていない。

私が気になっているのは、人的投資の位置づけである。人件費の増加は、削れば戻る費用として扱われがちだ。だが人手が確保できなければ店は開かないのだから、この会社にとっては出店余力を買うための投資に近い。費用と投資の境目にある支出をどう読むかで、この決算の評価は変わってくる。

損益計算書の増減率だけでなく、店舗数と借入残高と自己資本比率の3つを並べて追いかける。そういう見方を持って、次の決算を眺めてみてほしい。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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