「ほんだし」の味の素(2802)は今や"半導体関連"としても知られる存在に。決算の増益はヘルスケア等事業から
Ned Snowman/Shutterstock.com
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「ほんだし」の味の素(2802)は今や"半導体関連"としても知られる存在に。決算の増益はヘルスケア等事業から

決算後に切り返した株価と、世界シェア95%超「ABF」の実力に迫る

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
19:00
「ほんだし」の味の素(2802)は今や"半導体関連"としても知られる存在に。決算の増益はヘルスケア等事業から
Ned Snowman/Shutterstock.com

この記事はここがポイント

  • 味の素、事業利益増加分の7割超は電子材料含むヘルスケア等事業が主因
  • 世界シェア95%超の半導体材料「ABF」はAI・サーバー向け販売好調
  • 1Qは過去最高を更新し、通期業績予想も上方修正

2026年8月17日の東京株式市場は、AI・半導体関連株への買いが牽引する形で日経平均株価が前日比506円高となり、5営業日続伸で取引を終えました。

手掛かり材料に乏しいお盆休み明けの相場において、この物色展開の追い風を捉えたのが味の素(2802)です。

同社は足元で「半導体関連」銘柄としても注目度が高まっており、この日は引けにかけて上げ幅を拡大。前日比155円高(+2.78%)の5,721円と大きく反発して取引を終えました。

この株価の底堅さは、8月6日に発表された2027年3月期第1四半期決算をきっかけとした切り返しトレンドの延長線上にあります。今回の決算で増益を力強く牽引したのは、「ほんだし」をはじめとする主力の調味料・食品事業ではなく、半導体パッケージ材料などを手がけるヘルスケア等セグメントでした。食品企業の枠を超えたハイテク素材分野での堅調な伸びが、市場における再評価を後押ししています。

8月6日発表の1Q決算は過去最高

同社が8月6日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算は、売上高が前年同期比13.2%増の4,121億円、事業利益が同27.3%増の601億円、最終利益(親会社の所有者に帰属する四半期利益)が同13.1%増の364億円と、いずれも第1四半期として過去最高を更新しました。為替の影響を除いたベースでも売上高は5%増、事業利益は19%増となっており、円安だけによるかさ上げではないことがうかがえます。

同時に通期の業績予想も上方修正し、売上高を90億円(+0.5%)引き上げて1兆7,320億円、事業利益を50億円(+2.5%)引き上げて2,020億円、最終利益を35億円(+2.9%)引き上げて1,235億円としています。

修正の主因はヘルスケア等セグメントにおける電子材料の販売好調で、為替前提は1ドル=150円に据え置き。通期の修正予想に対する進捗率は、売上高が23.8%、事業利益が29.8%、最終利益が29.5%で、いずれも単純な4分の1ペース(25%)を上回っています。

もっとも、最終利益では減益予想(前期比▲8.3%)となっている点には注意が必要です

事業モデル:「半導体関連」としての顔ももつ

同社は「調味料・食品」「冷凍食品」に加えて「ヘルスケア等」の3つを主力セグメントとする多角経営の企業です。ヘルスケア等には医薬品・食品向けのアミノ酸事業だけでなく、パソコンやサーバーに搭載される半導体の基板材料を手がける電子材料事業も含まれており、一つの事業の波が他の事業でカバーされにくい構造になっています。

「ヘルスケア等」がけん引

今回の決算で目を引くのが、セグメント別の事業利益の増減です。前年同期からの事業利益の増加額を分解すると、調味料・食品が47億円、冷凍食品が6億円の減益、ヘルスケア等が97億円、その他が2億円の減益、全社共通費が6億円のマイナス影響でした。事業利益の増益額(128億円)のうち、ヘルスケア等セグメント単独で97億円、率にして7割超(約76%)を占めた計算になります。

売上高で見ても、調味料・食品の伸びは大きいものの、ヘルスケア等の伸び率はそれを上回っており、収益への貢献度では調味料・食品を上回る結果になりました。冷凍食品は増収ながら減益、その他セグメントも小幅の減益にとどまっています。

なかでもヘルスケア等の中の「ファンクショナルマテリアルズ」と呼ばれる電子材料は、AI・サーバー・ネットワーク向けの半導体パッケージ材料の販売が好調で、第1四半期の売上高は前年同期比154%、事業利益は同177%まで伸びました。電子材料事業が、従来からの調味料・食品事業と並ぶ収益の柱に育っていることがうかがえます。

そもそも「ABF」とは何か 世界シェア95%超の理由

同社の電子材料事業の中核をなすのが、「味の素ビルドアップフィルム」(ABF)と呼ばれる製品です。1999年に発売された、半導体パッケージ基板に使うフィルム状の絶縁材料としては世界初の製品で、それ以来20年以上にわたり大手半導体メーカーに継続採用されるデファクトスタンダードの地位にあります。ABFはCPUやGPUなど高性能な半導体のパッケージ基板に使われ、顧客ごとにカスタマイズしながら共同開発する形で採用が広がってきました。

同社が2023年6月に開催した事業説明会では、AI向けの高性能コンピューティング(HPC)機器では1台あたりのABF使用量がパソコン向けの10倍以上に達するとの試算や、HPC機器の出荷台数が2023年から2030年にかけて年平均で約22%のペースで伸びるとの見通しが示されていました。今回の決算でヘルスケア等セグメントが大幅増益になったのも、AI・サーバー・ネットワーク向けの高性能基板向けABF販売が好調だったことが主因です。

同社はまた、電子材料・機能材料の開発製造販売を手がける子会社の味の素ファインテクノを2027年4月1日付で吸収合併する準備を始めると6日に発表しました。味の素ファインテクノの売上高は983億円、営業利益は530億円で、電子材料事業を本体に取り込むことで意思決定を迅速化し、競争力の強化を図る狙いとみられます。

バリュエーション評価:急伸後の味の素株はどんな水準にあるのか

8月17日終値(5,721円)ベースの株価指標は、PER(会社予想)が44.2倍、PBR(実績)が7.04倍、配当利回りが0.87%となっています。

同社の年初来高値は7月6日につけた6,340円、年初来安値は1月8日の3,270円で、8月17日終値はこの高値の90%程度の水準まで戻してきました。実際には7月の高値から7月末にかけて4,800円台まで調整する場面があり、そこから決算をはさんで1カ月足らずで急速に値を戻した格好です。半導体関連株全般への物色が続く地合いのなかで買われている面もあり、今回の決算内容だけで説明しきれる上昇かどうかは、今後の値動きも含めて見極める必要があります。

 味の素株の12カ月チャート

出所:各資料より筆者作成
味の素株の12カ月チャート

株主優待は「100株以上」「半年以上の継続保有」で自社製品がもらえる 

同社は毎年3月31日時点の株主名簿に記録された株主を対象に、保有株数と継続保有期間に応じた株主優待を実施しています。100株以上を半年以上継続保有した株主には500円相当、200株以上で2,000円相当、1,000株以上で4,000円相当、2,000株以上を3年以上継続保有した株主には8,000円相当の自社製品などが贈られます。

次回の権利確定日は2027年3月31日です。なお2026年度分の優待品は500円~5,000円相当が2026年7月下旬~8月初旬に、8,000円相当が9月中旬~下旬に発送される予定です。

記者コメント

味の素というと「ほんだし」や「Cook Do」といった調味料のイメージが強いですが、今回の決算を分解してみると、増益の主役はすでに半導体材料事業に移りつつあることがわかります。以前は「味の素」=半導体関連銘柄、というつながりに意外感を持たれていましたが、最近では個人投資家のあいだでも幅広く知られるようになってきています。

足元の株価上昇も、決算内容に加えて半導体関連株全体への物色という地合いの追い風を受けた面がありそうです。AIサーバー向けの旺盛な需要が続く限りこの構図はしばらく続く可能性がありますが、半導体関連需要も相場のセクター物色も変動が大きい分野です。電子材料事業の成長スピードと、食品事業の安定感のバランスが今後どう推移していくか、次回以降の決算にも注目したいところです。

参考

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

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