イビデン<4062>、2027年3月期1Qは営業利益+52%。AI向け基板と株価5倍近い上昇の背景を探る
Summit Art Creations/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
17:30
イビデン<4062>、2027年3月期1Qは営業利益+52%。AI向け基板と株価5倍近い上昇の背景を探る
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この記事はここがポイント

  • イビデン、2027年3月期1Q営業利益52.4%増。AI基板受注で株価が昨秋から5倍近く高騰。
  • 顧客の生産能力確保の先払いとなる前受金が735億円急増。1Q営業キャッシュフロー958億円へ拡大。
  • 設備投資は2025年3月期ピークから回収局面へ。ROEも2026年3月期に12%台への回復。

決算の数字が良いだけでは、株価がここまで動く説明にはならない。半導体の基板をつくる会社と聞くと、地味な裏方の部品メーカーを思い浮かべる人も多いだろう。だが、生成AIの広がりは、その裏方に光を当てた。イビデン<4062>の株価は、昨秋から様変わりの動きを見せている。何が起きているのかを、決算とキャッシュの流れからたどってみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

株価5倍近い1年と、二桁増収増益で始まった今期

出所:各種資料をもとに筆者作成

イビデンの株価は、2025年9月末におよそ4,500円だった。

それが2026年6月末には2万3,000円台まで水準を上げ、8月時点でも2万1,000円台にある。1年足らずで水準が5倍近くに切り上がった計算だ。

この間に届いた2027年3月期1Q決算は、売上高が1,232億円で前年同期比+26.4%、営業利益は268億円で+52.4%、経常利益は274億円で+57.8%と伸びた。親会社株主に帰属する純利益は179億円(+40.8%)だった。

売上の伸びを利益の伸びが上回っている。固定費を吸収しながら数量が積み上がる局面の、典型的な数字の形といえる。

AI向けICパッケージ基板が押し上げた電子事業

利益を牽引したのは電子事業だ。同事業の売上高は775億円で前年同期比+37.7%、営業利益は213億円で+52.4%と伸びた。

会社の説明によると、生成AI用サーバー向けと汎用サーバー向けの高機能ICパッケージ基板の受注が堅調で、量産を始めた大野事業場の稼働が安定し、円安も追い風になった。自動車の排気系部品を扱うセラミック事業も、売上243億円(+24.3%)、営業利益32億円と増益を確保している。

半導体の部材と聞くと、価格競争の厳しい薄利の世界を思い浮かべがちだ。だが電子事業の営業利益率は27%前後に達し、電気機器の業種中央値である6%台とは水準がまるで異なる。

特定用途で技術的な優位を握る部材は、装置産業でありながら高い利益率を生む。その姿がここに表れている。

前受金という「顧客の先払い」が示すもの

見るべきは、決算の利益よりも、その裏で動いたお金の流れかもしれない。

1Qの営業活動によるキャッシュ・フローは958億円と、前年同期の95億円から大きく膨らんだ。会社の説明によると、増加の主因は前受金だ。前受金は前四半期末から735億円増え、総資産も1兆567億円へと1割ほど増えている。

前受金とは、顧客が基板の生産能力を先に押さえるための先払いにあたる。その急増は、需要の強さと、供給が簡単には追いつかない状況の両方を映していると読み取れる。

設備投資のかさむ装置産業は、現金を先に注ぎ込む商売だと受け止められやすい。しかしいまのイビデンは、顧客の先払いが投資の一部を支える形になっている。

設備投資額は2025年3月期の1,573億円をピークに、2026年3月期は642億円へと落ち着いた。大規模な投資を先行させてきた局面から、それを回収する局面へと移りつつあると読み取れる。

通期営業利益の倍増計画と、投資期に沈んだ資本効率の戻り

会社は2027年3月期の通期予想を引き上げている。売上高5,500億円(+32.1%)、営業利益1,270億円(+104.7%)と、営業利益は前期の2倍を超える計画だ。

見落とせないのは、資本効率の戻りである。ROE(自己資本利益率)は2023年3月期に13%台をつけた後、投資がかさんだ2024年3月期・2025年3月期には7%前後まで低下していた。

それが2026年3月期には12%台へと戻り、電気機器の業種中央値7%台を再び上回った。利益が投資の重さを吸収し始めた局面と受け止められる。

筆者コメント

見逃せないのは、株価の派手な動きと、その足元で進む地に足のついた変化が、同じ会社の中で同時に起きている点だ。

前受金が語るのは、「作る前から買い手がついている」状態である。もっとも先払いは需要の前倒しでもあり、どこかで反動が出る性質を併せ持つ。数量が積み上がる局面がいつまで続くかは、私にも断言できない。

投資を先行させた数年があったからこそ、いまの供給力と回収がある。株価は、その未来の回収を早回しで織り込みにいったのだろう。

AIという言葉に反応して株価が大きく動く局面ほど、受注・能力・キャッシュという地味な数字を並べ直して確かめる姿勢を持っておきたい。派手な物語の裏側にこそ、次の一手のヒントが隠れていることが多い。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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