この記事はここがポイント
- 2027年3月期1Qは増収も営業減益、為替差益で最終増益の決算。
- 株価は昨秋から約半減、見かけの増益決算と逆行する市場動向。
- 過去の巨額赤字から急回復後も、通期予想は営業減益を見込む状況。
増収増益、しかも最終利益は5割増。数字だけ見れば文句のない決算に映る。だが住友ファーマ<4506>の2027年3月期1Qは、そう単純ではない。本業の利益はむしろ減っており、最終利益を押し上げたのは為替という外の要因だった。株価はこの1年でほぼ半分になっている。決算の見栄えと株価の落差を手がかりに、中身を分けて読みたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
昨秋の2,700円台から一転、7月に1,200円台まで下げた株価
住友ファーマの株価は振れが大きい。2025年9月末は1,700円台だったが、11月末には2,700円台まで急騰した。昨秋以降の月末終値では、ここが最も高い。
しかし、そこが山だった。冬から春にかけて水準を切り下げ、初夏にはさらに下落が加速する。2026年7月末は1,200円台と、昨秋以降で最も低い水準まで下げた。8月時点の直近終値も1,200円台後半にとどまる。
昨秋の高値からは、半年あまりでおよそ半分の水準だ。この間、決算は増収増益で着地している。株価と決算がここまで逆を向くのはなぜか。中身を開けると理由が見えてくる。
増収でも本業は減益、当期増益を支えたのは為替
2027年3月期1Qは、売上収益(IFRS)が前年同期比+19.9%の1,294億円となった。会社の説明によると、米国で前立腺がん治療剤オルゴビクスと過活動膀胱治療剤ジェムテサの売上が拡大したことが、増収を牽引した。
ところが営業利益は181億円で、前年同期比▲10.8%の減益だった。会社は、品目構成の変化で売上総利益率が低下したうえ、米国の販売促進費と研究開発費が増えたことを要因に挙げている。増収なのに本業の利益は減る。ここが1Qの読みどころだ。
一方で当期利益は169億円と、前年同期比+51.7%に伸びた。だがこれは本業の改善によるものではない。会社によれば、前年同期に為替差損を計上したのに対し、今回は為替差益を計上したことが大きい。営業段階では減益、最終段階では増益というねじれは、金融損益の振れが生んだものと読み取れる。見出しの最終増益を、そのまま実力の向上と受け取るのは早い。
2024年3月期の巨額赤字、パテントクリフからの急回復
住友ファーマの決算は、数年単位で見ると激しく上下してきた。営業損益は2022年3月期の602億円の黒字から、2023年3月期は▲770億円、2024年3月期は▲3,549億円という巨額の営業赤字に沈んだ。米国の主力薬が特許切れを迎え、売上が一気に細ったパテントクリフの直撃である。
そこからの戻りは急だ。2025年3月期は288億円の営業黒字へ転換し、2026年3月期は1,073億円まで回復した。前期のROE(自己資本利益率)は46.3%と、医薬品の業種中央値3.0%を大きく上回る。もっとも、この高さは赤字で縮んだ自己資本の裏返しでもあり、そのまま収益力の強さとは読めない。
医薬品には景気に左右されにくいディフェンシブな業種というイメージがある。だが住友ファーマの実像は、特許の断崖で利益が数千億円規模で振れる、起伏の激しい会社だ。しかも会社の通期予想は営業利益900億円と、前期比では減益を見込む。回復と反動が同居する、微妙な局面にある。
公募増資で立て直す財務、無配が続く株主還元
巨額赤字は財務も痛めた。自己資本比率は前期末で36.4%と、医薬品の業種中央値である約70%を大きく下回る。米国買収で積み上がったのれんも2,000億円を超えて残る。
立て直しの一手が資本の増強だ。会社によると、1Qに公募増資を実施し、株式の発行で得た資金などにより自己資本比率は48.4%まで改善した。研究開発費も1Qで114億円と前年から4割近く増やし、次の柱づくりに資金を振り向けている。もっとも配当は無配が続く。株主還元よりも、まず財務の再建とパイプライン投資を優先する段階だと読み取れる。
筆者コメント
壊滅的な赤字からの反転点として位置づけられる局面だ。住友ファーマの数期の損益を並べると、そう読める。3,549億円の営業赤字から2期で1,000億円超の黒字へ。振れ幅の大きさそのものが、この会社の性格を物語る。
注意したいのは、いまの利益がどこまで巡航速度なのかだ。1Qは本業が減益で、最終増益は為替が支えた。会社の通期予想も減益を見込む。急回復の勢いは、一巡しつつあるのかもしれない。
株価が昨秋からほぼ半分になったのは、市場がこの反動を先に織り込んでいるためではないだろうか。パテントクリフを抜けた製薬会社を見るときは、目先の増減益よりも、次の主力製品がどれだけ育つかに目を向けたい。急回復が一巡したあとに何が残るか。そこにこの銘柄の本質があると考えている。
参考資料
- 住友ファーマ株式会社 2027年3月期第1四半期決算短信
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
