ENEOSホールディングス<5020>、2027年3月期1Q決算の発表を前に。営業利益急増の中身と株価の動きを読み解く
T. Schneider/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
05:20
ENEOSホールディングス<5020>、2027年3月期1Q決算の発表を前に。営業利益急増の中身と株価の動きを読み解く
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この記事はここがポイント

  • ENEOSホールディングスの2026年3月期営業利益が339.8%増の4,666億円と急増した背景には、前期の在庫評価による利益押し下げからの反動があり、変化率自体が実力を測る物差しになりにくい点。
  • 石油元売り事業の利益は原油価格や為替、在庫評価といった外部要因に大きく左右され、過去5期の営業利益は大きく変動しており、安定業種のイメージとは異なる利益構造であること。
  • 今後の株価や業績を評価する際は、在庫影響を除いた実力ベースの利益水準と、原油・為替の前提条件を重視し、まもなく発表される2027年3月期1Q決算で通期予想の前提がどう点検されるか。

石油元売りと聞くと、生活に欠かせない燃料を安定して供給し、手堅く配当を出す会社という姿を思い浮かべる人は多いだろう。だが決算の利益を1期ずつ並べてみると、その印象とはずいぶん違う振れ方をしている。ENEOSホールディングス<5020>の営業利益は、年によって大きく膨らんだり縮んだりする。次の四半期決算の発表を前に、その振れの正体を株価と重ねて考えてみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

営業利益が前期の4倍超。数字の派手さには理由がある

まず直近の通期決算から見ていこう。2026年3月期の売上収益(IFRS)は前期比▲4.5%の11兆7,654億円、営業利益は同+339.8%の4,666億円だった。当期利益(親会社の所有者に帰属)は+14.4%の2,587億円で着地している。

営業利益が前期の4倍を超えたと聞けば、事業が一気に好転したように映る。しかし中身はもう少し込み入っている。会社の説明によると、在庫の評価が売上原価に与える影響(在庫影響)を除いた営業利益相当額は、前期比3,107億円増益の4,744億円だった。前期はこの在庫影響が利益を大きく押し下げており、その反動が今期の増益率を膨らませている。

つまり+339.8%という数字は、実力の改善と、前期の目減りからの揺り戻しが混ざったものだ。原油価格や在庫の評価という外部要因が、見かけの利益を上下に振らせている構図と読み取れる。

5期並べて見える利益の振れ。「安定」のイメージとのズレ

この振れは単年の話ではない。営業利益を過去5期でたどると、2022年3月期は7,859億円と大きかったが、2023年3月期は2,812億円へ縮み、2024年3月期は3,814億円、2025年3月期は1,060億円まで落ち込み、そして今期4,666億円へ戻している。

石油元売りには生活インフラを担う安定業種というイメージがつきまとう。だが利益の実額はこのように大きく上下している。原油相場、為替、在庫評価が重なり、1期ごとの利益がぶれやすいのがこの事業の実像だ。安定的に供給する事業であることと、決算の利益が安定していることは、必ずしも同じではない。

資本効率の面では、今期のROE(自己資本利益率)は8.0%だった。石油・石炭製品の業種中央値がおよそ8.0%なので、水準としては業種の真ん中あたりに位置する。自己資本比率37.1%も業種中央値並みで、財務の体格そのものは業種の標準的な姿に近いと言える。

セグメントの内訳。石油製品が9割、開発と電気の顔ぶれ

事業の中身をセグメントで分けると、構造がよく見える。石油製品の売上収益は10兆3,417億円で連結の約88%を占め、営業利益は2,923億円だった。ここが在庫影響を最も受ける主戦場になる。

規模は小さいが利益率が高いのが石油・天然ガス開発で、売上2,167億円に対し営業利益508億円、利益率はおよそ23%と際立つ。電気事業は売上3,321億円で営業利益219億円、高機能材は売上3,365億円で営業利益110億円だった。石油製品という大きな一枚看板の利益が相場で揺れ、その周囲を開発や電気が支える。それが今のポートフォリオの姿だ。

昨秋以降の株価。940円台から一時1,500円近くへ、そして下押し

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価に目を移そう。2025年9月末はおよそ940円台と、昨秋以降では低い水準にあった。その後は秋から冬にかけて水準を切り上げ、2026年2月末には1,500円近くまで上昇する場面があった。

そこからは緩やかに下押しし、6月末には1,200円を割り込む水準まで下げたのち、7月末は1,300円台へ持ち直している。2026年8月時点でも1,300円台での推移だ。昨秋以降で見れば大きく水準を切り上げた一方、今年の初めにつけた高値の水準からは一段低いところにある。

会社は2027年3月期に営業利益6,100億円(+30.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,150億円(+60.4%)への増益を見込む。増益見通しが株価の下支えとして意識された可能性はあるが、原油相場や為替の前提しだいで振れやすい点は変わらない。次の1Q決算の発表がまもなくという局面でもあり、通期予想の前提がどう点検されるかが目先の焦点になりそうだ。

筆者コメント

一期の増益率の大きさだけを取り出せば、絶好調の合図と受け取りたくなる。だがこの業種では、変化率そのものが実力を測る物差しになりにくい。前期の落ち込みが深いほど、翌期の増益率は自動的に大きく出るからだ。

見るべきは、在庫影響を除いた利益がどの水準で推移しているか、そして原油と為替の前提がどう置かれているかだろう。会社の想定と実勢がずれれば、通期の景色は途中で変わる。石油元売りの決算は、確定した実績よりも「どの前提で立っているか」を確かめる姿勢が要る。

その意味で、まもなく出る四半期決算は、通期予想の前提を点検する最初の関門になる。派手な変化率に引っ張られず、実力ベースの利益と前提条件をセットで追う。安定業種という言葉の内側にある利益の振れを意識して眺めていきたい局面だ。

参考資料

  • ENEOSホールディングス株式会社2027年3月期 第1四半期決算短信

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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