保障は保険、貯蓄は貯蓄で用意する
保険には、保障を用意しつつ貯蓄もできる「貯蓄型」と保障のみを用意する「掛け捨て型」があります。
一見、貯蓄型は保障と貯蓄を両立できて便利そうです。また、掛け捨て型は、保険料が損だと思っている方も多いようです。というのも、掛け捨て型の保険は、保険を途中で解約したときの「解約返戻金」や保険が満期を迎えた時の「満期保険金」はないか、あってもごくわずかだからです。
一方、貯蓄型の保険は、途中で解約した時や満期を迎えた時に、解約返戻金や満期保険金を受け取れます。ここだけ聞けば、貯蓄型の方が良さそうでしょう。
しかし、貯蓄型の保険料は掛け捨て型の保険料よりもかなり割高になります。しかも中途解約で元本が割れますし、満期になっても現在は予定利率が低いのでほとんど増えません。
万が一のお金がすぐに用意できないから保険に加入するのに、高い保険料を支払うのは本末転倒です。保障は掛け捨て型の保険で用意して、貯蓄は預金や投資に回した方がずっと有利です。保険で貯蓄しようとするのはやめましょう。
生命保険の種類はいろいろある
民間の保険には、死亡、病気やケガ、老後、さらには、貯蓄まで、備えたい目的に合わせて様々な商品が用意されています。
以下、代表的な保険です。
【死亡・高度障害に備える保険】
終身保険
死亡保険は、貯蓄型と掛け捨て型に大きく分けることができます。終身保険は、貯蓄型の保険です。
つまり、終身保険は、保障と貯蓄の2つの機能を併せ持った保険といえます。ただし、貯蓄型といっても、払った保険料よりも大きく増えることはありません。
また、貯蓄型ということに加えて、どのタイミングで亡くなっても保険金を受け取れる一生涯タイプの保険なので、保険料は高く設定されています。そのため、多くの保険金を設定すると保険料がかなり高くなってしまうことに。
通常、終身保険で準備する死亡保障の金額は200万円、300万円程度となっており、お葬式代や死後の整理資金として活用するのが一般的です。
定期保険
定期保険は、10年間や65歳までなど、期間を定めて死亡を保障する保険です。定期保険の保険料は、掛け捨て型になっており、割安な保険料で大きな保障を得られることが特徴です。
例えば、子育て世帯が子供の独立までの期間に保障を得る場合などに活用できます。
定期保険の保険料は、長生きになったことを反映して、以前より安くなっています。また、喫煙の有無や血圧、BMIなどの数値など、保険会社が定めた健康基準を満たす方は、さらに保険料が安くなる保険もあります。
収入保障保険
収入保障保険は、被保険者が死亡した時に、毎月一定額の死亡保険金を年金形式で受け取れる保険です。
保険金は月額で設定され、死亡から保険期間が満了するまで受け取れるようになっています。そのため、早く死亡した場合には、保険金の総額が大きくなりますが、保険期間の満了間近に死亡した場合には、保険金の総額が少なくなります。このように、収入保障保険は、保険期間の経過とともに、保険金の受け取り総額が少なくなっていくという特徴があります。
例えば、子供が小さい間は大きな死亡保障が必要ですが、成長に伴って必要な保障額は、減少していくのが一般的です。収入保障保険であれば、期間の経過とともに保障額が少なくなるので、見直す手間が省けて合理的な保険といえます。また、掛け捨て型なので、保険料も割安です。
【病気・ケガに備える保険】
病気・ケガに備える医療保険、がん保険、就業不能保険のほとんどの商品は、掛け捨て型の保険です。
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院した時に、保障する保険です。健康保険や貯蓄ではカバーできない医療費の備えとして活用すると良いでしょう。
入院すると、健康保険の自己負担分、食事代や差額ベッド代、身の回りのものなど多くの費用がかかります。そんな経済的な負担に対して、医療保険で備えることができます。
がん保険
がん保険は、がんと診断された場合やがんでの入院、手術、抗がん剤治療などを受けた場合に保障する保険です。がんと診断された場合に受け取れる診断一時金は、用途が限定されていないことが多いため、当面の生活費をカバーしたり、収入減少に備えたりすることができます。
がんの治療も健康保険が適用される治療を受ける限りは、それほど、高額になることはありません。ただし、先進医療や自由診療を受ける場合には、健康保険を利用することはできず、全額自己負担。ですから、その分の負担が大きくなります。
がんにかかった場合、お金に糸目をつけずに治療の選択をしたいなら、先進医療や自由診療を保障する保険を選んでおくと良いでしょう。
就業不能保険
就業不能保険は、働けなくなった時のリスクに備える保険です。病気やケガで長い間働けなくなった時の生活費をカバーするために加入します。
この保険は、収入を補うという目的ですから、毎月お給料のように保険金を受け取れるようになっています。保険期間は、65歳や70歳までなど、期間が定められ、終身での保障はありません。
病気やケガで働けないということは、生活費に加えて、医療費の負担がかかってきます。健康な時以上にお金がかかるケースが多いでしょう。
医療保険の場合、入院中の入院給付金は支払われますが、自宅療養は給付の対象外になります。就業不能保険は、自宅療養中の保障もカバーできます。
図表 保険の種類
20代、30代シングルが考えたい保険
さまざまな保険があることが理解できたかと思いますが、ライフスタイルや家族構成によってどんな保険が必要になるかは全く違います。
20代、30代のシングルの方が考えたい保険についてお話します。
20代、30代のシングルの方がまず考えたいのが「医療保険」です。もし、病気やケガで働けなくなり収入が減少しても、その間の生活費や医療費は待ったなしでかかります。貯蓄が十分あるなら加入する必要はありませんが、あまり貯蓄がないという場合は、もしもの入院や手術に備えて、最低限の保険があると安心です。
また、会社員の場合には、病気などで会社を休んでも健康保険からお給料の約3分の2が通算1年6カ月にわたってもらえる「傷病手当金」の制度がありますが、国民健康保険に加入している自営業やフリーランスの場合は、傷病手当金の制度がありません。
ですから、会社員が医療保険に加入する場合には、入院日額5000円程度のもので良いかもしれませんが、自営業、フリーランスの場合には、入院日額は7000円〜1万円程度は準備した方が安心です。また、現在は、入院せずに通院しながら治療するケースも多いので、通院保障もついているタイプの医療保険に入っておくと使い勝手が良いでしょう。
さらに自営業、フリーランスの場合は、傷病手当金の制度がないので、就業不能保険への加入も検討しても良いでしょう。
なお、シングルの方の場合、養う家族がいなければ大型の死亡保険は必要ありません。
保険にはさまざまな種類がありますが、保険加入の目的は「滅多におこらないけれど、もし、それがおこった時は、経済的な損失が大きいリスクに備える」こと。家計のリスクは、結婚、出産、子育て、マイホーム購入、子供の独立、定年、老後など、ライフステージにより変わります。自分にとってのリスクを考え、それに合った保険に加入するようにしましょう。